第7話 熱意ある若者二人に国の基礎となる大臣をさせ、今から狸爺共とやり合う。

「顔を上げよ」



そう俺が口にすると二人は恭しく顔を上げた。

1人は箱庭師を調べているテリオットの友人でもあるラシュリオ。

もう一人は他国の農業に詳しいと言うテリオットの友人であるモザーラ。

二人は顔を上げ「言葉を発する事を許可する」と言うと、ラシュリオの方から上の物への挨拶をしてから言葉を繋げていく。



「私はエリオットの友人のラシュリオと申します。箱庭師について独自に調べをしていたものです。箱庭師は数は多いのに余り日の目を見ませんでした。シュライ国王陛下がこの度箱庭師と植物師を国で管理すると聞き、はせ参じました。スキルは箱庭師です」

「ふむ。君も名があったかもしれんな。確かに俺の考えた通り、箱庭師は素晴らしい力を秘めた者たちであった」

「やはり!!」

「農業、林業と言ったものから鉱山、漁業といったものまであったな」

「是非、是非その箱庭師を纏める仕事をさせて頂きたい! 無論私ごときが出来る仕事ではないのは十分存じておりますが、箱庭師の可能性をずっと追い求めてきたのです! 家族に変人と言われようともやめられませんでした……どうか、どうか!」

「国の大事な基礎となる公共事業となるのだ。生半可な覚悟では務まらんぞ」

「この命に変えましても! あらゆる可能性から更に発展させていきます!」



熱意ある男性のようだ。

それならば――と、ラシュリオを【箱庭師大臣】に任命した。

すなわち、若干15、16歳の少年とも青年ともつかない者が、一つの大臣となったのだ。

昨日貰ったデータは現在シュリウスが新たに清書しなおしている。

あと2時間もあれば写し終わるだろう。



「商業ギルドマスターであるデッドリーが商業ギルドに登録している箱庭師のデータを事細かに持って来てくれている。その写しがそろそろ出来上がるだろう。その際そのデータを手渡すが、決して人に見せてはならない、持ちだしてはならない。いいな」

「はい!」

「また、自分の部下は信用できる部下を連れてこい。城仕えともなれば喜んでくるだろう」

「ありがとう御座います。一つの可能性につき一人誘いたいのですが、農業、林業、漁業、鉱山、後一つは何でしょうか?」

「蚕だ」

「蚕!! 蚕が飼えるのですか!?」



蚕とは絹を作る際に必要なもので、わが国でも少ないが養蚕しているものでもあった。

蚕を増やすところから始めねばならないが、俺は静かに頷き、「家があるのでな」と答えると目を輝かせて「5人集めて参ります」と口にした。

さて、残るは――他国の農業にも詳しいと言う彼だが。



「その方は名を何という」

「モザーラと申します。自国の農業だけに留まらず、他国の農業にも興味があり独自に調べていた者です」

「確かに外にある図書館には寄贈した本が幾つかあったな。そこから得た情報か?」

「はい。本は高いのでそこから得た知識となりますが、ラシュリオから箱庭の中は色々な作物が育つのではないかと聞き、独自に調べを進めていました。スキルは植物師となります」

「ほう……と言う事は国に所属している名にあったかもしれんな。他国の作物で長期間持つ野菜などにも詳しいのか?」

「植物師ならば大抵は詳しいと思いますが、他国の作物となると別です。俺と同等の知識を持っている植物師は居ないでしょう。是非、他国の苗や種を育てるというのであれば力になれるかと思います!」

「良いだろう。その熱意を無駄にせぬように。モザーラを【箱庭農業大臣】に任命する。その代わり自分の信用できる者たちを集め、来週ネバリ王国から来る作物の苗や種を見てどのような作物になるのか、またどのような土地に植えればいいのか判断せよ」

「畏まりました!」



こうして二人は若干15,6でありながら大臣職となり、直ぐに行動に移るよう指示を出したが――それにストップをかけたのはサファール宰相だ。

なんでも元闘技場にて箱庭師達が集まり、箱庭への扉を作っているのだと言う。

これにはラシュリオが目を輝かせ「是非中を一つずつ拝見したい!」と言い出した為、任せることにした。

新しい風を吹かせてくれそうな二人には期待も半分だが、どうにか頑張って貰いたい。

もし足を引っ張る老害がいれば即刻クビにする事を心に決めた。



「それと、新たな大臣の為に専用の服を作ってくれ。大臣だと分かりやすいようにな」

「直ぐに手配いたします」



大臣職はターバンと腰に巻く布地の色が全て統一されている。

「二人が城から帰る前に手渡せるようにせよ」と命令するとエリオットが直ぐに手配に動いた。


大臣職ならば緑。

補佐官ならば水色。

その他の仕事をしている者たちは茶色等、職業に応じて違うのだ。

無論宰相の色は黒と決まっており、王族は赤、もしくは青と決まっている。

直ぐに二人のターバンと腰に巻く布地は用意できるだろう。



「補佐官のターバン等も用意は進めておいてくれ」

「今日直ぐには集まらないと思いますからね」

「ああ。二人が満足したら用意したものを手渡してくれ。ラシュリオ達に専用の執務室を案内させてくれ。それとラシュリオには渡したい物があるから、俺の執務室からシュリウスから箱庭師に関する写しを貰うように伝えておいてくれ」

「畏まりました。午後は大臣たちを集めての件の」

「ああ、定年退職の話だな」

「揉めそうですねぇ」

「ズブズブに利権だの裏金があるのなら即刻クビにする。この日の為に国の影を使って調べ上げた訳だからな」



そう、シュリウスが手配してくれていたのだが、大臣職の者たちの裏金や利権に関する調べ物をして貰っていたのだ。

頭の回る10歳児だと思いながらも頼りにしているし、そう育てたのは俺でもある訳だが、お陰で色々と裏が取れた。

これで半数は辞めて貰えるだろう。

その上でめぼしい大臣になる者達は見繕っている。

後で俺からの書簡が届くだろう。



「この際に脱税を行っていた大臣たちは平民に落とす。見せしめだな」

「それが宜しいかと」

「まだ子供の国王だから言いなりに出来ると奮闘している大臣たちもいるが、これで流石に子供相手とは思えなくなるだろう」

「シュライ様は15歳には到底思えぬ判断力と決断力がありますからな」

「ははは」



それもそうだろう。

前世も含めれば45歳にもなる中年だ。

そのお陰もあり同じ15歳よりは落ち着いて見えるだろう。



「我が息子であるテリオットがまだ子供に思えてきます」

「実際まだ15歳だ、親から見れば子供だろう。彼には期待している」

「ありがとう御座います」



――さて、質素な昼を食べた後はタヌキジジイ達とのバトルと行こうか。

俺はシュリウスが集めた書類を貰い、弟を誉めちぎってから大臣たちが集まる会議室へと向かったのだった。






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