第11話 やる事は山のようにあるのに、粛清中のバランドス王国から姫君が二人もやってくる①

作物の方は、年3回ネバリ王国のザーバン商会から食べ物の苗や種を購入し、箱庭でも増やせる野菜は増やしていったが、どうしても無理な物もある為補填と言う形で仕入れ、市場にも野菜を流す事で食べる物も増えて行き、国民の腹はある程度満たせるようになってきた。

ここで一つ問題になってくるものがある。


そう――香辛料だ。


塩だけではやはり物足りない。

ここらで一つ新しい物が欲しいが、香辛料は何処の国でも高かった。

これは追々の自分への試練だと思う事で今は塩で賄い食べている。

神々の住むと言われる島国は今日も天候は安定している。あそこから香辛料でも降ってこないだろうかと悩みながらも、気が付けば一年が経っていた。



「怒涛の一年だったな……」

「そうですね。大分改革は進んだと思いますが」

「だが、国民全員が満足するだけの食べ物はまだ安定供給はされていない。まずは安定供給を目指したい所だな」

「そうですね……」

「緑化魔道具もいい感じに効果を上げているようで、砂漠の緑化も少しずつ進んでいるようですよ」

「ああ、オアシスが更に出来たと言う連絡も受けている。国が運営する魚屋相手に商売を持ちかける商店も出来たらしいな」

「目ざとい方はするでしょうねぇ。一夜干しや干物を商隊を組んでオアシスを回るだけで金が入りますし」

「それは良い事なんだがな」

「海沿いの村でも木材の家を建てて欲しいと言う要望も来ています」

「ああ、建築師とアイテムボックス持ちを派遣すると言う事で合意している。そう長くは掛からんだろうが、こっちのシュノベザール王国の家もまだ途中までしか進んでいない。建築師には頑張って貰っているがな」

「炭師の炭のお陰で夜の寒さと火の魔石を買えない世帯は助かっていると言う情報も」

「何より雇用のお陰で国民の持つお金が増えているのもいい事です」



――今日俺が国王になって一年の祝いの日。

その日だが、当たり前に仕事をし、この一年どうであったかを確認するべく話し合いが行われた。



「次の一年は食料の安定供給に加えて、少しずつ貯めて来た綿花や絹糸といった物の加工にも着手したいな」

「そうですね、裁縫ギルドを呼び寄せましょうか」

「ああ、それがいいな。裁縫ギルドに卸して服を作って貰うと言うのも一つの手だろう。質のいい綿花や繭はあるのだから糸にして販売しても、生地の状態で販売しても、服などで販売してもいい。ザーバン商会に売り外貨を稼ぐ事も出来る。後は気になるのが一つ」

「なんでしょう?」

「鉱山の箱庭だ。ラシュリオの報告書では銅、鉄、銀、金が発掘されていると聞く。後は宝石となる鉱石もかなり出ているらしい。これらを加工する彫金師を国でまた雇いたい」

「アクセサリーですか……それは良いですね」

「女性が華やかになるのもいいですが、国王ならば兄上こそが華やかにならねば。着るものもそうですが身に着けるものをもう少しランクを上げて欲しいです」

「むう……裁縫ギルドを呼ぶだけではなく、裁縫師も召し上げるか」

「となると、彫金師に裁縫師を国で雇うと言う事ですね」

「ああ、個人でしたい者は裁縫ギルドから購入と言う形にすればいいだろう」

「なるほど」

「国のお抱え裁縫師が作った服はそれなりにあるが、もっと増やしてもいいな」

「そうですね! その内兄上にも結婚相手が!!」



そうなのだ。

一年もすれば国をここまで改革させた俺に対して貴族たちから娘をと言う声が多く上がり始めた。

正直今もまだそんな気分でもないし、国が昔よりは富んでいるとはいえまだまだだ。

そんな中で妻を得ようと言う気にはなれなかった。

元は俺を馬鹿にしていた貴族たちの娘など論外だ。


取り敢えず裁縫ギルドを呼び寄せる書簡を用意し、ついでに商業ギルドのデッドリーに彫金師と裁縫師を雇いたい旨を書類に書いて出して来て貰った訳だが――。



「娘……といえば、バランドス王国はどうなっている? 一年は日照りを続けてやったが」

「飢えに苦しむ国民と飲み水を奪い合う国民が多数。バランドス王家を恨む国民で溢れているとの事です」

「そうか」

「そろそろ音を上げてくる頃合いでしょう。友好関係の印に自分の娘をシュライ様に送ってくる可能性もあります」

「あの国は娘しか生まれていない筈だ。二人いたな?」

「はい、リゼル・バランドスと、ファルナ・バランドスですね」

「種馬となる婚約者くらいはいるだろう」

「どうなんでしょうねぇ。その辺の情報は入って来ませんから。ただ国民たちからはバランドス王家を恨む声が大きく、それを抑えるのも……そろそろ限界かと」



その言葉を聞き、ちょっかいさえ出さなければ良かったものをと改めて溜息を吐いたが、それから数日後――バランドス王家より謝罪の書状が届いた。

その際、今後の友好関係の為に自分の娘を差しだす事が書かれてあり、その相手は次女のファルナ・バランドスかと思いきや、二人同時に送り出すと言うものだった。

その上で、本当の意味での謝罪が終わったら、どちらかの娘を国に帰して欲しいと言う内容で、近々その二人の王女がここ、シュノベザール王国に来ることになっているらしく、既に出発もしているそうだ。



「余りにも一方的だな」

「兄上、寧ろ娘二人を国から逃したかのように見えますよ」

「シュリウスもそう感じたか?」

「敵国にいたほうが安全と思われるほど、バランドス王国は危険なんでしょうか?」

「……どうだろうな。仮にそうだとしてもバランドス王家が招いた事だ。直ぐに謝罪すれば良かったものを」

「プライドの高い方々ですからね。バランドス王家の今の国王陛下と王妃様は」



そう苦笑いをしたのはサファール宰相だった。

なんでも何度かこの国に来ては嘲笑って帰って行ったらしい。

俺はその場にいなかったが、俺が10歳になったあの日のスキル鑑定の結果を見て戦々恐々としていたのはバランドス王家だという。

その結果が今なのだが。



「後三日ほどでバランドス王家の姫君たちは到着だそうです」

「は~~……部屋の用意を」

「畏まりました」

「何かあっては後が面倒だ。王家の住むエリアの空き部屋があるだろう? そこに頼む」

「畏まりました」

「城に働く者たちに御触れを出せ。バランドス王家の姫君を一時的に預かると」



そう指示を出すと俺は頭を抱えつつ「女の扱いなんぞ知らんぞ」と独り言ち、シュリウスも「俺もですよ」と遠い目をしていた。

俺達兄弟は揃って学園に通っていない。

そして仕事上女と過ごす事もない。

ここにきて女性と言うものがどんな扱いをすればいいのか分からないと言う弊害が起きた。



「まぁ、妻にする訳でもなんでもない。ただ預かるだけだ。いつも通りで良いだろう」

「それもそうですね」

「スキル次第では働いて貰う事になるが」

「それもそうですね」

「「でも面倒くさいな」」



そう兄弟で同じ言葉が最後に出た事でサファール宰相とテリオットは苦笑いしていたが、その間に国お抱えの裁縫師に女性用の服を数着作って貰う事にし、三日後――本当にバランドス王家から姫君が到着し、直ぐに部屋へ案内されて行ったのは言う迄も無く、一息入れたら謁見の間にて挨拶が行われる事となった――。


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