第17話 神々の島から【ボルドーナ商会】が訪れ驚く事になる。

さて、ノベルシカ王国の問題が片付いたところで、我がシュノベザールの民族衣装が他国の貴族女性たちの間で人気が高い事をザーバン商会から聞く事になった。



「暑い日差しの国の貴族や姫君たちはシュノベザール王国の民族衣装が華やかで涼しいと評判でして。もう少し数を増やして輸出は出来ませんかね?」

「ふむ……確かに民族衣装は華やかなモノから一般的な国民の物とあるが、貴族や王族が欲しいのは華やかな民族衣装の方だろう?」

「ええ、是非に欲しいと言う声がかなり上がっておりまして」

「大分他国と比べると露出があると思うのだが……」

「そこはほら、アレですよ」

「アレと言うと?」

「夫婦の閨事で使うと言う方が多いんです」

「……なるほど。理解はしたが余り嬉しくはないな」

「ははは! 貴族や王族の中ではシュライ国王は婚約者殿の刺激的な姿を見ても我慢のできる男性だと有名ですよ!」

「ははは」



俺としては前世の水着やそういう物の方が露出が多いので、民族衣装くらいの露出では何ともないのだが……。



「まぁ確かに我が婚約者殿が着飾っている姿は素晴らしいと思うがな」

「婚姻式も近いのだとか。是非ザーバン商会から祝いの品を送りたいですな!」

「それは有難いな。期待していこう」



そう言って今回も野菜の苗と種を買い、その他輸出用に用意した物も買い取って貰い持って行って貰う事が多い。

ザーバン商会とは長い付き合いだ。



「そう言えば砂漠の緑化が大分進んだように感じます。それもスキルのお陰でしょうか?」

「どうだろうなぁ。スキルが関係しているのは間違いないが」

「他国では今年は天候不良が多いのだそうです。泣きつかれているのでは?」

「それはあるな」



そう、今年は天候不良が続いている国が多く、安定した気候をお願いしたいと言う依頼が沢山来ている。

【俺からして遠すぎなければ】何とかなるが、近い国は大金を払ってでも安定した気候を手に入れて既に長い。

弟シュリウスがいるバランドス王国は特に安定した気候を手に入れ、今では農耕がとても盛んに行われるようになった。


そこで、野菜などを輸出できるように魔道具大臣に急務として頼んだのが、馬車に冷蔵機能を付ける為の依頼だ。

図にして分かりやすく説明すると「画期的ですぞ!」と言われたが、「これを応用すれば生魚も食べられるようになる」と伝えると俄然やる気を出して頑張っているが、一年経った今でもちゃんとした冷蔵の物は出来ていない。

中々に歯がゆいものだ。


香辛料問題も解決していない。

外貨を稼ぎ、国も安定してきたと言うのにまだまだ先は長いのだ。

塩味しか食べれないと言うのは正直辛い……前世では病院食が長かった俺でも結構堪える。

何とかしてやりたいが……と溜息を吐きつつ安定した気候のままの神々の島を見つめる。

そんなある日の事――。



何時も通り執務に励んでいると、慌てた様子で執務室のドアを叩いて一人の兵士が入ってきた。

なんでも【神々の島】から謎の船に乗った人々が降りて来たのだと言う。

海辺では大混乱が起きているそうで、彼等が言うには「王都を訪れても良いだろうか?」と言うお伺いを聞かれたのだと言うではないか!



「是非王都に来て頂こう。俺も神々の国の人々には会いたいとずっと思っていたのだ」

「ですが、人間だけではなく……その……獣の耳が生えたような者達も居て」

「ははは! 神々の国らしいな! それは獣人と呼ばれていないか?」

「そ、そうです! 獣人族だとか連絡にはありました。シュライ様はとても博識なのですね!」

「さて、どうかな? 直ぐにこちらに移動して貰って結構だと連絡をしてくれ。おもてなしをしよう」

「畏まりました!」



おもてなしと言っても、この国で出来る事は限られている。

それでも出来る限りの満足はして貰いたいとは思うが――神々の島ではどのようなものがあるのかは未知数だ。

それから三日後、神々の島の方々を乗せた馬車が到着し、謁見の間にてご挨拶となる。

正直神々の島だぞ? 俺の方が挨拶するべきじゃないか? なんて思ったが、此処は「郷に入れば郷に従え」だ。

扉が開き、獣人の男性二人に護衛されるように入ってきたのは、商人風の年齢のいったご老人だった。



「初めてお目にかかる。シュノベザール王国の国王、シュライだ。神々の島から来られるとは、俺は何と運のいい」

「ははは、こちらでは神々の島と呼ばれているのですね?」

「ああ、四季のある島とも聞き及んでいる」

「四季.アツシ様が仰っていた春、夏、秋、冬の事ですね? ほっほう。貴方は異世界から来た我がジュノリス大国の現国王、アツシ・ジュノリス陛下と同じことを仰る」

「異世界……」



まさか俺の様な転生ではなく、転移……と言う事だろうか?

心臓が早鐘をうったが、深呼吸して落ち着き「異世界から来た男性が大国の王となったのか?」と聞くと、「色々ありましてね」と落ち着いたように笑った。



「申し遅れました。私はボルドーナ商会の会長をしているボルドと申します。アツシ様からもし友好国であれば、是非今後共やり取りがしたいと言う依頼を受け馳せ参じました」

「それは有難い。俺としても是非神々の国の者たちとは仲良くしたいと思っている。まだまだ我が国は発展途上で、神々の国にしてみれば赤子の様な状態だろうが」

「色々と話をしたい所ですが、まずは友好の証としてアツシ様から渡して欲しいと頼まれたものが御座います。厨房に空き部屋がありましたら是非にと思うのですが」

「案内しよう」



そういうとボルド殿を連れて城の調理場へと向かい、空き部屋の一室を開けると獣人二人がアイテムボックスから段ボールを取り出した。



「段ボール……」

「ほほう。貴方様は段ボールもご存じと」

「ここだけの話、俺も異世界から来ているのです」

「なんと!?」

「ただ、この様な力は持っておりません。俺が使える力は【天候を操れる程度の能力】です。この力を大手を振って使えるようになった15歳の時から神々の島の周辺海域を穏やかな気候に変えました。何れ誰か来てくれるのではないだろうかと」

「ほおお……実はアツシ様の他に、妃であるカナエ様も異世界から来られていて、後3人程他にも異世界から来た方々が」

「それは、異世界転移だろうか?」

「ええ、勇者召喚でこちらに来たと聞いております」

「なるほど。俺は異世界で一度死んで、こちらに魂が転生してきた方なんだ」

「それはまた、初めて聞きました」

「後でアツシ様に手紙を送りたい。大丈夫、俺とアツシ様達の国での共通文字は忘れていない。他人に読まれても理解出来ないだろうが、伝わる筈だ」

「ふむ、貴方に嘘を言う理由もない。良いでしょう。後で手紙をしたためて下さったら必ずアツシ様にお渡ししましょう」

「助かります。所で中身はなんだろうか?」

「ええ、アツシ様のご意向でまずは軽い挨拶にと、調味料一式と調味料を使う料理の本などが入っております」

「まさか!! 砂糖や塩にコショウか!!」



思わず声が上ずって喜んでしまったが、これだけの量の砂糖や塩コショウとなると、とんでもない量だ!!

是非友好国となって輸入したい!!

随分と国内の食糧事情が変わるぞ!!

とは言っても、とてもお高いだろうが……。



「危険があるようなら直ぐ帰ってきてよいと言われてきたのですが、シュライ様でしたら問題なさそうですな」

「と言うと?」

「是非、アツシ様の拠点をこの国に作らせて頂きたい」



この時、一体この人は何を言っているのだろうか……と思ったのは、内緒にしたい。



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