第27話 女性初の大臣、商隊部門大臣ラディリアと、アツシ様からの寄贈の品。
「良くぞ来たな、ラフィリアの妹」
「ラフィリアが妹、ラディリアです。シュライ様に致しましてもご機嫌麗しく」
「挨拶は良い。君に頼みたいことがある」
「なんなりと」
「君を商隊部門大臣に任命したい。出来るか?」
「え!?」
思いも寄らなかったのだろう。
しかも年はまだ15になって成人の儀を終えたばかりだと聞いている。
だが、彼女の知識は相当なモノがあるとラシュリオは語っていたのだ。
「ラシュリオより君の話を聞いた。他国の品々に詳しいと」
「それは……趣味で色々と調べはしましたが」
「知識のない者にさせるよりは、ある程度知識のあるものにさせたかったのだ。無論女性としては国内初の女性大臣となる」
「は、はい!」
「女性らしい事で困った事、嫌な事があった場合は直ぐに俺には言いにくいだろうが、リゼルには話しやすかろう。何かあったらリゼルに呼ばれていると言って伝えてくれ。そこから俺に話が来るはずだ」
「あ、ありがとう御座います。ですが私は婚約破棄されたばかりです。傷物なのに宜しいので?」
「ラシュリオが言うには、相手の一方的な婚約破棄と聞いている。しかも相手は浮気をしていたそうだな?」
「……はい」
「いい復讐にはなるだろう? 大臣になる程の出来る女性ではなく、脳みその足りない女を選んだ馬鹿者として世間でも親からも言われるだろう」
「――ありがとう御座います!!」
「どうせ真実の愛がどうのとか言ったんだろうが、どこまでその愛が貫けるか見てやれ」
「はい!」
こうして力強い商隊部門の大臣が誕生した。
無論女性初の大臣で若干15歳と言う若さもあり、直ぐに貴族や国民たちに話は回る事になった。
無論、ラディリアの元婚約者の貴族の家にもその情報は入り、「大臣に任命される程の知識も技量もある娘をやすやす手放した」とラディリアの家にもう一度婚約をして欲しいと頭を下げたらしいが、それを両親とラディリアが拒否、ラディリアの元婚約者も頭を下げたらしいがどの面下げてと言う事になったそうだが、貴族の立場的にはラディリアの家の方が低い為、普通ならば押せるはずだった。
しかし――。
『今回の事で上の貴族連中が何か言って来たら、俺が承諾しないのなら婚約も結婚もなしだ。まずは仕事をして貰う。どうしても承諾が欲しいなら俺に言ってこい』
と、盾になった事で上の貴族たちは手出しが出来なくなり、ラディリアは仕事に邁進する事となる。
無論結婚するなとは言わない。
恋する相手が出来て、相思相愛になれば結婚は了承すると伝えている。
それでも、産休や育児休暇は取っていいが、ラディリアに頑張って貰いたいと伝えると泣いて喜ばれた。
「育児休暇を取ってもいいが、その間任せられるだけの人材育成にも取り組め。それをしてこそ大臣にした意味がある」
「畏まりました!」
こうして心強い仲間である商隊部門大臣ラディリアが新たに加わった。
彼女の手腕は後日素晴らしいモノだと分るのは――婚姻式から帰ってきてからとなる。
翌日、アツシ様がシュノベザール王国にお越しになった。
本当は拠点に何度も来ていらっしゃるが、そこはそれ。
拠点の外に出ていないのだからセーフだ。
この日、ラディリアの前でアイテムボックスから【冷蔵馬車】【冷凍馬車】【普通の馬車】と、5つずつ寄贈があった。
「なんでも商隊部門大臣と言うのが出来たそうだな。これはほんの祝いだ。是非その大臣殿に頑張って頂きたい!」
「お心遣い、ありがとう御座います」
「あ、ありがとう御座います! 商隊部門大臣ラディリアと申します!」
「ほう、若きエースか! 期待してるぞ!」
「はい!!」
「では、次に移動して果樹園にガラスハウスを宜しいでしょうか?」
「ああ、構わない」
こうして馬車の扱いには気を付けるように伝え、暫く城の中にある馬車置き場に置いておくように伝えると俺達は歩いてオアシスへと歩いて行く。
大分緑化も進み、それでもまだまだ時間は掛かっているが、王都周辺は緑化が進んでいるのは間違いない。
緑の手の持ち主もそれなりにいた事も大きかった。
特に孤児院の子供達に多く、即雇い入れたのはいう迄も無い。
「随分と緑化が進んだな」
「俺のスキルと、緑の手の持ち主のお陰ですね。後は魔道具に緑化の魔道具があります」
「なるほど……どれか一つでも欠ければ発揮しない訳だな」
「ええ」
「ドライフルーツは俺も興味があるから、出来上がったらくれないか?」
「勿論です」
「ドライ野菜チップスもあるよな」
「ええ、カボチャとか人参とかありますね。そっちも作って行きたいです」
そう会話をしていると宰相のサファールが驚いた様子だったので、まだ案があったのかと思っているのだろうと予想できる。
こういうのは幾らでも案があった方がいい。
ドンドン案を出して国を豊かにするのが俺の務めでもある。
民の上に胡坐をかいていた両親世代とは違うのだ。
「今でこそ国民の肉付きは良くなりましたが、俺が国王になった時は骨と皮だけの者たちも多かったんです」
「……そうか」
「路上で物乞いしていたお年寄りたちは、今は老人ホームに入居しています。子供達は孤児院へ」
「そこまで政策を行うのは大変だったろう」
「最初は急務だったので掘っ立て小屋の様なモノからスタートですよ。それでも屋根がある場所での生活は随分と違う。この国では夜になると冷えるので、箱庭で炭を作り暖を取るように寄付もしましたね」
「その二つの施設は国営か?」
「ええ、国営です。テリサバース教会は何もしませんからね」
「ふむ」
「今も何をしているやら。あそこですテリサバース教会は」
そう言って俺が手を伸ばすとそこには掘っ立て小屋の様な協会が建っていて、住宅よりも貧相だ。
風が吹けば壊れそうな掘っ立て小屋だが、中に神父たちは居ない。
「場所だけ取ってる感じですね。中に神父たちは居ません」
「派遣って感じか?」
「そうですね、数年に一度派遣されてくるでしょうか? 俺が国王になってから派遣されてないのでわかりかねます」
「だが、神々の島には来たぞ?」
「ここを素通りしていったんでしょう」
「礼儀の無い宗教だなぁ」
「神々の島から神父様が来られるなら作り替えますけどね。信仰心が弱いのは認めますが」
「何もしてないなら信仰心が弱いのは仕方ないだろう」
そう苦笑いしながら歩き、オアシスに到着すると多くの果樹園の中を避けながら、でも外から見学はしながら歩き終えると、作って欲しい場所にたどり着いた。
「こちらにガラスハウスと作業小屋をお願いします」
「6棟だったな。結構場所取るぞ?」
「構いません」
「んじゃやるかー」
こうしてアツシ様のスキルを久々に見ることになるのだが、それは圧巻の一言だった――。
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