第40話 アツシとシュライの『義兄弟』と言う設定で貴族と他国を牽制する。

アツシ様の拠点でお披露目会の話をしていると、「センスを問われるよなぁ」と悩みながら会話となった。

その間ポテチを食べつつ至福の時も過ごすのだが、ポテチはリゼルも大好物になっている。

舌が肥えてしまいそうだが、それはそれで致し方ない。

ポテチくらいは自分でも作れるので欲しがったら作ってあげようと思う。



「それ、神々の島との親密さを思い切りアップにして出してみないか?」

「と言うと?」

「まず会場の飾りつけだが……」



そう言うとノートを取り出し会場の予想図を書きながら、シュノベザール王国の色である赤を基調に、ジュノリス大国の色である金を使った布地を使い、会場を彩る。

金と赤なら間違いなく派手ではあるが、落ち付いた重厚ある金らしいので大丈夫だろう。

テーブルクロスも赤のテーブルクロスの上に金のテーブルクロスを敷いてお洒落に演出し、ジュノリス大国からの祝いの品の【一部】を料理として出す。

クッキーにケーキ、軽く摘まめるスナック菓子にチーズ、それに一応成人しているので酒は飲めるが、祝いの席で異世界と言うとワインが主流の為、飲み口のいいワインも【祝いの品の一部】として出す。



「これだけの品を【一部】だが出せる程、神々の島とシュライが特別な関係である。と言うのはかなりデカいと思う。貴族連中も流石に文句は言えない。そこにカナエからの贈り物、つまりジュノリス王妃から、リゼルさんへの贈り物でグランドピアノとピアノ椅子を贈る」

「トドメですねそれ」

「嫌でも他国の王もシュライに一目置くだろう?」

「でも、そうなると自分達も神々の島のアツシ様と繋がりを持とうと言う輩は出てきますよ?」

「そこはスルリと避けつつだな。『貴国とわが国では親交が無いが?』と言えば大体は引き下がるだろう」

「これから親交を深めましょう。なんて言われたらどうするんです」

「我が神々の島の人間は人を見る目をとても養っている。貴殿は……。で言葉を濁す」

「うわぁ」

「他国と仲良くするのもアリと言えばアリだが、どうにも俺の勘がな」

「勘?」

「まぁ、悪い事が起きなければいいなと思いつつ過ごさせて貰うさ。何よりシュライと親密であると言うのをバーンと出すのが狙いだしな!」

「ありがとう御座います!」

「これで貴族連中は嫌でも黙るだろう。国王より自分たちが上だと言う考えは改めて貰わないとな?」

「そうですね……学園に通えなかった分、どうしても下に見られがちで」

「そりゃ親が悪い。シュライは悪くないしそれ以上の下地があるからな」

「そうですね」



気のいい兄を持ったような感覚に頭を撫でて貰うと、リゼルが嬉しそうに微笑んで口を開く。



「まるで義兄弟の様ですわね」

「義兄弟か、それいいな! 使おう!!」

「え!?」

「【年の離れた弟のように可愛がっている】と言うのが分かれば阿保も出ないだろう」

「あははは! アツシ兄上になるんですか?」

「アツシ兄上だな!」

「では、お披露目会では是非『アツシ兄上』と呼びながら過ごしましょう」

「おう、今後その呼び名で行こう。テリサバース教会の二人も祝福に来るだろう?」

「ええ」

「アバサとアンヌの夫婦は仲がいいからな。子孫繁栄を祝福して貰うといい」

「「はい」」



こうして義兄弟と言うのを全面にアップする事にしたアツシ様は更に子供用のジュース等も用意してくれることになり、一気に「兄が可愛い弟の為に、贈り物をした」と言う事で進めていく事となった。

有難い反面少々怖いが、それもこの世界で生きていく為には必要な事だろう。


――今は命を狙われてはいない。

だが、何時命を狙われるか分からない。


そういう危険とは必ずついて回るのだ。

幾ら『賢王』と呼ばれていようとも――大臣や貴族にしてみれば『愚王』の方が扱いやすい。

つまり、【利用価値があるからこそ生かされている】とも取れるのだ。

それが、シュノベザール王国の国王と貴族の暗黙の了解。

その暗黙の了解を……ぶち壊す。


――このシュノベザール王国にシュライ国王あってこそ。


それを植え付ける必要がある。

だからこそアツシ様の言葉はこの上ないチャンスなのだ。

リゼルを守る為にも、バランドス王国にいるシュリウスの為にも。

そう思っていると、頭をポンポンと叩かれニカッとした笑みをアツシ様から貰う。



「国内事情はどうあれ、貴族問題は頭をお互い抱えるな!」

「顔に出ていましたか?」

「シュライも俺も守るべきものが大きい。一国と言う国の王だ。背負うものが貴族とは違うというのを理解していない貴族が兎に角多い」

「そうですね」

「だが、今シュノベザール王国は変化の時だ。胸を張れ、お前の後ろ盾は神々の島だ」

「はい!!」



こうして背中をパンと叩かれ俺もやっと笑顔に戻ると、今後のお披露目会は神々の島から助っ人が来てくれる事となった。

何でもカナエ様の護衛兼メイド長らしく、とんでもない人を寄こしてくれたなぁと驚きつつも、指示は的確で素早い。



「メルディールのお陰であっという間に会場が終わりそうだ」

「いえいえ、この程度ではありませんよ? 贈り物やお祝いの品が山のようにあるのですから」

「ははは! それはとても楽しみだ! アツシ兄上にも是非感謝を伝えたい」

「国王陛下もさぞかしお喜びになるでしょう」



この頃から俺が「アツシ様」から「アツシ兄上」に変わった事で、城では一部緊張が走った。

だがそれは些末な事で、俺をよく知る大臣たちは皆受け入れるのが早かった。



「神々の島のジュノリス大国の王、アツシ陛下とシュライ陛下はとても仲が宜しいのですか?」

「ああ、年の離れた弟のように可愛がっていると言われたな」

「ほおお……」

「お披露目会ではアツシ兄上が祝いの品のほんの一部だが、会場に出してよいと言われている。その辺りはメルディールに任せる予定だ。立食式でもあるし、わが国で出せる食べ物は少ないが、アツシ兄上達や貴族たちに是非楽しんで頂きたい」



そう値踏みをしている城の者に伝えると、流石に値踏みをしている段ではないと理解したようで、これでまた一つ先に進む。

――こうして、お披露目会三日前になると、驚くべき事にアツシ様からサプライズが待っていた。それはと言うと……。



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