第13話 入学と兄からの贈り物
宿を出て学園までの道を歩く。
町の雰囲気はいつもより賑やかな気がする。
いつもの町の雰囲気というものをあまり知らないから単に錯覚かもしれないが。
いやだけど喧騒の感じからして賑やかだな。
ただ俺と同じような年の子が盛り上がっているというより、周りの店やら大人のほうが盛り上がっている。
道歩く子どもたちは、ぎこちない動き、周りをしきりに見る、平然と歩くなど三者三様だった。
前世の小中の入学もこんなんだった気がする。
違いとしては、親がいないのと、桜がないのと、ランドセルがない、改めて違う世界だと実感させられる。
さすがに慣れてはきたけど。
なんて考えていたら学園に着いた。
この町のシンボルにして、町の奥に位置する施設。
でかい、土地もそうだし建物も。
さすがゲームの舞台。
似たようなことを前にも思った気がするが、そう思ったんだから仕方ない。
入り口近くにいた案内人の指示に従って移動、向かう先は教室。
さてどんなクラスに入るんだろうか、気が合う人がいればいいが。
そういえばこの学園って貴族と平民でクラス分かれていたよな。
ということは貴族のクラスか、話が噛み合うか心配だな。
うだうだ考えながら建物に入り案内された教室の前につき、ドアを開ける。数人の視線が向くが、すぐに外される。
分かる、入ってきた人って不思議と目向くよね。
教室内を見渡す。
木の長机と椅子がある。
思ったより室内は狭い、でかい講義室みたいなのをイメージしていたが20人弱入って授業をする程度の大きさだ。
まばらに人も座っている。
一応、好感度も見てみる。
さっきと逆に彼ら彼女らに視線を向ける。
目が合った人の中には全員ではないにしろマイナスになった人もいる。転生前のリージスが色々した影響はここにもあるらしい。
でも全員ではない、館と大きく違う点だ。
足を踏み入れて……どこに座ればいいんだこれ? 席順表みたいなのはない。
とりあえず端っこに座るか。
座って待っていたら続々と人が入ってきた、品があるなと感じるのは貴族の子どもという肩書ゆえそう見えるのか。なんというか場違い感がすごいな。
あっ、フリートさんもここのクラスなのか。彼女は俺とは離れた席に座った。
徐々に席が埋まってくる。
ちなみに俺の隣には誰も座らないという、プチ悲劇が起こった。
プチである、これから変えていけば良い、そうに決まっている。
心が成人してなかったら泣いていた。
そして最後に俺たちより歳上だろう男性が入ってきた。
教卓の後ろに立ち俺たちを見る。
先生だろうか。
男性は簡単な自己紹介をした後、授業や校則についての説明、最後に教室を出て寮の案内があった。
寮自体は普通だった、いやもちろん外観は大きい建物ではあったが中は普通だと思う。
男女別で、部屋は個室で広さはベッドがあり椅子と机があって物を収納できる程度。
前世で寮生活はしたことないが、十分に暮らせる。
とりあえず個室に入り色々と準備をする。
個室には俺が持ってきた荷物がある。さっき学園の入り口で荷物は部屋に運んでおくと言われ預けることになったやつだ。
俺はさっそく荷物を開けて中を確認する。
うん、大丈夫。例の本も奥底にある。
これが見つかったら色々と面倒くさいだろうからちょっと預けるとき焦った。ひとまずの安堵と共に荷物を片付ける。
片付けといっても荷物の確認と置き場所を決めるだけなんだけど。
服は本を隠すカモフラージュになるからしばらく放置。
次は机に置いてあった手紙を確認する。
入ったときにはすでにあった、差出人はスモールディア。
何が書いてあるんだろうか、封を開けて折られた紙を広げる。
……なるほど。
内容を要約すると、旅費、宿代、学園の支援金を代わりに払った振り込め先はこちらからと書かれていた。
さらに要約しよう、借金ができた。
……どうしようか。
俺はその1日どうやって金を稼ごうかと頭を悩ますことになった。
ふと、そう言えばゲームのリージスって他生徒からお金巻き上げていたよな。なんてことを思い出した。
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