第17話 薬草採取と話し合い
冒険者登録をしてお金を稼ぐ手段を得て、授業も本格的に始まってきた。
授業では火とか水とかの授業の他に、強化魔法についても教えてもらった。
強化には二種類あって身体強化と、持っている武具を強化できる魔法に分けられるということを教えてもらって演習してみるという流れ。
フリートさんが得意な魔法だ。
俺もしてみたが難しかった。
今までと感覚が違い、悪戦苦闘したが一応できるようにはなった。
実戦で使えるかは微妙だけど。
個人練習の成果として「風玉」と詠唱でも心唱でも唱えるだけで魔法は発動するようになった。
チームでの授業もあったが、相変わらずフリートさんとは上手くコミュニケーションを取れている気はしない。
好感度もまだマイナスだし。
授業に自主練に慌ただしい日々が過ぎて、遂に休日がやってきた。
いつも放課後には魔法の練習をしていたが今日は違う。
ギルドの依頼を受けてお金を稼ぎに行く。
緊張と興奮が混ざった気持ちでギルドまで行くと、またフリートさんを見かけた。
ただ今回は驚かない、そもそも彼女も冒険者になったしいずれ依頼を受けるだろう。休みの日である今日ギルドにいるのは不思議じゃない。
決して俺が追っかけているわけでもない、たまたまだ。
依頼書を見に行く。
「こんにちは」
一応挨拶する。
「……こんにちは」
返事が返ってきたことに少しほっとしながら、依頼書に目をやる。
Dランクで受けられる中で一番いいのは、薬草採取かもしれない。
定番の依頼らしく依頼書に詳細な情報も書いてある。
やってみるか。
この依頼はわざわざ依頼書を受付に持っていく必要はないのでそのままギルドを出ようとしたら、フリートさんがいなくなっていた。
もう行ったらしい、相変わらず速い。
俺もギルドを出て少し準備して、指定された場所まで向かった。
一応は町から出たが、周囲に魔物は見えない。
そして足元が見えないほど草は生えまくっている。
所々に木も生えている。前世ではあまり見なかった風景。
草原というやつだろうか、ちょっとテンション上がるな。
ここで薬草が採取できると依頼書に書いてあった。
俺は準備した袋を持って地面を見る。
ここに生えている草が薬草らしい。
魔物が出ることはほぼないらしく出ても弱いと依頼書に書いてあった。
だが油断はできない。
地面に集中しながら周囲にも意識を向けて薬草を取っていった。
結構な時間薬草を取り続けた。
「くぅぅ」
背伸びをする。後半は薬草採取というより雑草を抜き取っている感じだった。
でもこれなら休日でなくてもできる。
授業がある日でも放課後になったらやろう。
そんなことを思いながら薬草でいっぱいになった袋を持って町に帰った。
ちなみに薬草採取で得られるお金は二束三文並だ。厳しいね。
そんな薬草採取を授業と自主練習の合間と休日にできる限りやっていると、フリートさんと会う機会が多くなった。
彼女も同じく薬草を取っていた。
「こんにちは」
俺はなるべく合ったら挨拶をしている。
「……こんにちは」
顔をそらされながら返事がきた。
果たしてこの挨拶にどれだけの意味があるのか。
嫌っている相手からの挨拶、場合によってはマイナスになりそうだけど、彼女の好感度を見たら未だマイナスではあるが下がってない。
この挨拶自体は嫌がってないはず、ただプラスかと言えばよく分からないから解釈は難しいところ。
ただ交流がなければ仲良くはなれない、前世と違い受け身で終わるつもりはない。
かといってぐいぐい行き過ぎないよう気をつける。
というようなことを考え、会ったら挨拶はするようにしている。
一応チームメイトだしそこまでおかしくはないと信じて。
そして何度目かの薬草採取。
いつもの草原に着いて、いつも通り屈みながら薬草を採取する。
「「あっ」」
すると今日はたまたま彼女が近くにいた。
気づかなかった。いつもならお互い離れている。
露骨に去るのは気が引けるな。
「……」
「……」
お互いに黙々と薬草採取をする。
袋の中身が半分ほど薬草で埋まり少し休憩。
いい青空だ、周りの草を揺らす風も気持ちがいい。
「おっと」
袋に入れた薬草が風で飛ばされかけた。
しっかりと手で押さえる。
いっぱい取ったな。
最初はこんなにいっぱい取って大丈夫なのかと思ったが、ここにあるのは低品質の薬草らしく生える量も多いと受付の人に説明してもらった。
それと薬を作るとき薬草が低品質だと大量に必要だとも。
これだけ取っても大した額じゃないのはあれだけど。
目的はお金だけじゃない、ランク上げでもある。
薬草なら一定量取れば一つの依頼達成扱いになるから、いっぱい取れば薬草採取だけで複数依頼達成になる。
DからCに上がるにはDランクの依頼だけを受けていればいい。
よし休憩終わり。地面を見て薬草採取を再開する。
「フリートさん。相談なんだけど」
せっかく近くにいるということで話しかける。
「っ、なに」
話しかけられるとは思わなかったのか、声が上ずっている。
「授業のことなんだけど、別に無理に仲良くなれとは言わない。だけどせめて授業ではしっかり協力して欲しい。お互いの成績のために」
「うっ」
少しバツが悪そうな彼女。
うん、自分としては結構はっきり言った。
前世だったら曖昧に笑っていたかもしれないけど今は違う。
積極的に言うべきことは言う、嫌われるかもしれないとか恐れない。
……チラッと好感度を見る。
減ってない。よし!
そう簡単に自分は変わらない。
言っただけ一歩ということで。
数時間経ち俺と彼女の袋が薬草で一杯になり、袋を担ぎ2人でギルドまで戻った。
依頼を達成して、少ないながらも大事なお金を受け取る。
彼女も受け取りすぐにギルドを出ようとしている。
「ばいばい」
手を振ってみる。
「……じゃ」
彼女は片手を挙げた。
よし! 返事してくれた。
嬉しく思いながら、俺も学園に帰ろうとして気づいた。
勢い余ってバイバイしたけど、帰り道一緒だったと。
行ってすれ違ったら気まずそうということでしばらくギルドに残ってから帰った。
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