第16話 案内と相談

フリートさんと別れた後、ギルドの依頼を受けようか迷ったが時間も時間なので止めて外に出た。


まだ寮に戻るのも早いかなと感じ、町を見て回ることにした。

これから長く暮らすかもしれない場所だ、地理を知っておいたほうがいいだろう。

ということで歩き回ってみた。


町の風景を一言で表すなら雑多だった。

ただ雑多なわけではない、活気がある雑多だ。

近くに学園があるからだろうか。


町の入り口付近は様々な馬車が停まっている。

商品でも運んでいるのかもしれない。

出店みたいなのもある。

売っているのはアクセサリーとか食事とか。


町の出入り口からちょっと先にギルドはあって、周りには武器屋とか防具屋とか。


そのさらに奥に学園や住宅街、あと教会もあったな。

アスレアさんは確かそこにいるはず。

フリートさんとのことについて相談でもしようか。

いやでも、こんなことで相談するのもどうなんだ。



町の喧騒をBGMに思案しながら、あてもなくふらふらと歩く。

徐々に人もいなくなり、裏路地みたいなところに来た。


もし誰かに追われたら、ここらへんで人を巻けるかもしれないと思いながら周りを見る。


そんな状況きてほしくはないが、主人公に追われる可能性は十分にある。

この町の構造はよく知っておかないと。


「えっ」

人がいた。俺と同い年ぐらいの子だ。

周りをキョロキョロと見ている。


ちょっと怖いな。

このまま去ったほうがいいか。

Uターンしようとしたとき、その子は振り向いた。


「あっ、イージスさん」

アスレアさんだった。


「どうしてここに?」

彼女に近づき聞いてみる。


「教会に戻ろうとしたんですけど、道に迷ってしまって」

よく迷う子だ。

というか彼女、ここには俺より長く住んでいるはずでは?


「イージスさんも迷って?」

「いえ、散歩していたらここに来ただけで」

「道、分かりますか?」

「俺もまだ来たばかりなのでなんとも」

「そうですか」

彼女は周りをキョロキョロしている。

進むべき道を見定めているのだろうか。


「一緒に行きましょうか? 一応、町のことは地図で見たことはあるので。教会のほうに行ったことはないので役に立つか分かりませんが」

「お願いします」

頭の中に地図を浮かべながら俺はアスレアさんと歩くことになった。



一緒に行くといっても俺もここがどこだか分からないので人がいる場所までさまよいながら歩いた。


そしてなんとか大通りまで来れば、なんとなく分かってきた。


町を上から見下ろす、いわゆるなんちゃらマップみたいな映像を頭に浮かばせる。

前世だったら即スマホだ。


えーと、この町は学園がほぼ中心にあって、町の入り口に入ってすぐに出店やギルド、町の右側には確か工房とかがあったんだっけか、それで左側に教会があったはず。

だったら俺たちがいる場所は……意外と教会から近いのか?

うん、たぶん近い。


「この道を真っすぐ行って曲がれば行ける、かも」

「なるほど、行きましょう」

ということで彼女と並んで歩く。


「道に迷ったのは分かりますけど、なんであんな場所にいたんですか?」

暗い場所だった。目的もなく入る場所とは思えない。


「近道になるかなと思い進んだら、いつの間にか迷っていました」

「……普通の道でいいと思います」

「気をつけます」

急がば回れ、良くいった言葉だ。


町を歩く。

周りの風景的に自分の頭の地図はそんなに誤差がないと思う。

この調子なら教会にも着くはず。


というか相談するなら今なのでは?

クラスメイトについての相談。

どうなんだろうか。

フリートさんと年齢が近いだろうし分かることもあるだろう。


でも、なんで私に相談すんだよとか思われないだろうか。

いやこんな考えだから駄目なのか、ええいままよ!


「あの、相談があるんですけど」

「はい、なんでしょうか?」

「学園生活についてなんですけど」


学園でチームを組んでいる。

だけど組んでいる子との仲はあまり良くない。

なんでかは分からないが俺のことを嫌っている。

そんなことをかいつまみながら話した。


「なぜ、その人はリージスさんのことを嫌っているんでしょうか?」

「それは、分かりません」

そう分からないのだ。


十中八九、転生前リージスが何かやった結果だろうとは思っているが。

それが直接的か間接的かは分からない。


転生前リージスの記憶は思い出してきているが彼女に会った記憶はない。もしかしたら完全に思い出してないだけという可能性はある。


もしくは直接的に何かやったわけではないが、悪評を聞いていて不信感があるから好感度もマイナスというのも可能性として十分ある。


「原因を知れば、どうすればいいのか分かるかもしれません」

「確かに」

「それと、共通の目的を持ったら協力できるかもしれません」

なるほど共通の目的、成績とかだろうか?

まあ、そこらへんは追々考えよう。


「私も人付き合いが得意というわけではないので、これぐらいしか言えないですけど」

「いえ、相談に乗ってくれてありがとうございます」

「こちらこそ、リージスさんのおかげで教会に着きましたから」

悩んでいる間に教会に着いたらしい。

目の前にでかい建物があった。

これが教会か。


さすがに学園ほどではないが、それとは別種の迫力がある。


学園が、でかい! 目立つ! 強そう! として。

教会は、荘厳な佇まい日の光を反射し目が眩むような大きさ、的な感じだ。


「案内、助かりました」

「こちらこそ」

別れの挨拶をして、彼女は教会に行った。

俺も学園に向かって歩いた。

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