第15話 ギルドでの遭遇

その日の授業は終わり、前世でいうところの放課後になった。


俺は心機一転、とりあえずすべきことをしようと席を立つ。

このまま頭を悩ましても素晴らしい解決策は浮かびそうにない。


そもそもフリートさんは今、教室にいない。

どこに行ったから分からないなら、明日改めて話し合おう。


教室を出て、学園を出て、俺は町に繰り出した。目的の場所は冒険者ギルド。




町は活気に満ちていた、屋台には何かしらの串焼き、綺麗なアクセサリーなんかが売ってある。


わいわいと話す声が聞こえそっちを向くと、俺と同じかそれより年上っぽい年齢の子もいる。

たぶん同じ学園の生徒だと思う。見た感じ友達と一緒の子が多い。


羨ましい、友達もそうだし、何か買っているのも。

と、そんなことよりギルドギルド。

周りを確認して自然と足早になりながら、俺は目的の場所に着いた。


着いたんだけど、結構人多いな。


木造の恐らく1階建ての建物。

入り口は並ぶとまではいかなくとも人の出入りがそこそこある。

その流れに乗るように俺も中に入る。


両開きの扉を開くと、中は予想通り1階建てだった。

といっても立ち止まってゆっくりは見られない、歩きながら見渡してカウンターを探す。

大きい木造の丸いテーブル、丸い椅子、カウンター、あった!

カウンターに並ぶ列に入る。


「ふぅ」

少し落ちつくことができた。

改めて周りを見る、ギルドも俺と同い年ぐらいの子が多い気がする。

物珍しさに見ていたら俺の番がきた。


「あの、冒険者登録? をしたいんですけど」

「はい、冒険者登録ですね。学生手帳はお持ちですか?」

「はい」

俺は入学時にもらった学生手帳を渡す。

手のひらよりちょっと大きい程度の手帳、やたらと現代チックな代物だ。


それから水晶に触ったり、最終確認の注意事項を受けたりして終わった。

案外あっさりだった。

そして冒険者の証であるプレートをもらった。

晴れて俺もDランク冒険者。


せっかくだし依頼でも見に行こうと掲示板みたいところを探した。

あったと思い近寄ると、そこにはフリートさんがいた。


二度あることは三度あるとはこのこと。

ばったり会った回数だけならたぶん4回目。

そして彼女も俺の存在に気づいて、ちょっと驚いていた。


「何で」

「どうも」

さすがに無視できないので挨拶する。最初から無視するつもりもないけど


「どうも」

彼女も返してくれた。

さてこっからどうしようか。


いやでもせっかく会ったんだ話し合いでもと、思ったが彼女はふいと俺から視線をそらした。

彼女は目の前の掲示板を見ている。

俺も釣られて見る。


「どうしてここに?」

彼女のほうから話題を振ってくれた。

まじか。


「冒険者になるために。フリートさんはどうしてここに?」

「……同じ理由。何でわざわざ冒険者になんてなろうと?」

「強くなるために、それとお金を稼ぎたいから」

もっと正確に言うなら死の回避と、借金返済だけどそこまでは別にいいだろう。


「稼ぐ? 強くなる?」

「そんな珍しいかな?」

思ったより不思議そうにされた。


「少なくとも貴族クラスが冒険者になるのは珍しい。ここにいるほとんどが平民クラス」

「あ、そうなんだ」

「貴族は基本的に学園か、ギルドとは違うところで実戦を積む」

なるほどね。


「ならフリートさんは何で冒険者に?」

「同じ理由」

「ふーん」

これはあまり踏み込みべきではないかな。

冷静にいこう。


改めて掲示板を見る。

ボードに乱雑に貼られた紙の依頼書。

袋や小さい魔物の絵が書かれている。

袋は荷物の運搬、小さい魔物は書いてある内容からすればペットらしく捜索だと思われる。


俺はDランクだから確か受けることができる依頼はDランクの依頼。

町の人助けや町のペット探しが多い。あとは薬草採取もあるな。

もっと上のランクなら魔物退治や、遠出して調査なんかもある。


「色々あるな」

「……」

無言。

チラッと横を見る。集中して見ている。

彼女の目線を追ってみると1枚の依頼書があった。


なんだろう。近づいて見てみると、翼があり鱗がある爬虫類のような姿をした絵があった。

依頼ランクはA。

なるほどロマンだな。


「ドラゴン討伐に興味が?」

何気なく口にしてみた。これに食いついて話を。


「なっ、別に見てない」

食いつきはした、リアクションは想像したのと違ったけど。


彼女はそのまま依頼書から背を向けて、去っていってしまった。


あまり進展した感じはなかった。

なんなら最後に後退したまである。


いやでも途中までは話できていたし、一歩進んだか?

年頃の相手、難しい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る