第55話

 吸血鬼の1人を【聖銀の宝玉】の力で倒すだけじゃなく、ウーリル子爵と残りの吸血鬼へも影響を与えて行き、俺の身体に突き刺さっている血の武器はその強度を落として行った。


 【聖銀の宝玉】の力を銀のオーラとして放出する事でウーリル子爵や取り巻きの吸血鬼にダメージを与えたせいか、ウーリル子爵や吸血鬼は俺から距離を取ろうとする。


 だが、銀のオーラを受けてウーリル子爵よりも耐性がないのか動きが鈍くなった吸血鬼に、俺は身体に血の武器が刺さったまま攻撃を仕掛けていく。


 「【エナジーブレード】ッ!!!」


 先ほど灰に変わった吸血鬼を切り裂いた際にエネルギーを消費して消えてしまった【エナジーブレード】を再度発動すると、俺は鈍い動きで離れようとする吸血鬼をエネルギーの刃で切り裂いた。


 「グギャアァァァアアアアアアアアアァァァ!!!!!!!!!」


 断末魔の叫びを口から吐き出す吸血鬼は【聖銀の宝玉】の聖なる銀のエネルギーも混じった【エナジーブレード】で切り裂かれたせいか、その身体を一気に灰に変えていく。


 これでこの辺りの俺に取って脅威となる存在はウーリル子爵だけになる。


 「な、なんだ!!なんなんだ!!その力はあああ!!!!」


 聖なる銀のオーラを纏う俺のことを指差してウーリル子爵は叫ぶ。


 その顔は吸血鬼だからか血の気のない顔だったが、更に血の気が引いて真っ白になっている様に街灯の光で見える。


 「何だって良いだろう。とりあえずお前を倒す力だとでも言えば良いのか?」


 「ふ、ふざけるな!!!この我が人間なぞに恐怖しなければならぬのだ!!!!」


 身体を震わせて叫ぶウーリル子爵が何をして来ても良い様に観察しながら、俺は自身の身体に未だに突き刺さっている血の槍と血のレイピアを引き抜いた。


 突き刺さっている時も激痛が起こっていたが、引き抜く際もかなり痛みが走り、兜の下では表情が歪んでしまう。


 そして、俺の身体に突き刺さっていた血の武器が抜き終わると、聖なる銀のエネルギーも含めた5つのエネルギーを【超強化再生】に使用して、身体に出来た傷と武装の全身鎧に出来た傷を強化しながら再生させて行った。


 これで精神的な疲労以外は、ウーリル子爵たちとの戦闘前と比べて、強靭な身体になった以外は変わらない状態になる。


 ここまでの戦闘の高揚で溢れ出る進化エネルギーのお陰で、精神的な疲労を気にしなければ、まだまだ戦闘する事が出来そうだ。


 そんな俺の状態を見て震えながら後退りをしているウーリル子爵へと、俺は足を動かしていく。


 「どうした?このまま逃げるのか?」


 「ふざけるなよ!!お前たち!!コイツを殺せぇええ!!!!!」


 ウーリル子爵は眷属や使い魔であるグール、眷属犬、吸血犬、吸血蝙蝠たちに命令を下すと、ウーリル子爵の身体から大量の血液が放出されて一カ所に血液が集まり出した。


 起死回生の一撃を放つつもりかと俺はウーリル子爵の行動の妨害をしようと、両手の手のひらに聖なる銀のエネルギーと進化エネルギーを混ぜ合わせた銀に光る緑色のエネルギーを集めていく。


 「【エナジー波】ッ!!!」


 四方八方から襲ってくるグール、眷属犬、吸血犬、吸血蝙蝠たちを無視して、俺は手のひらに集めたエネルギーをウーリル子爵へと放った。


 【エナジー波】を放った瞬間に俺の周りに居たグール、眷属犬、吸血犬、吸血蝙蝠たちは【エナジー波】の余波で吹き飛んで死ぬ。


 そしてウーリル子爵へと放った【エナジー波】は真っ直ぐにウーリル子爵へと向かう。


 だが、ウーリル子爵が準備をしていた大量の血液が形を変えて【エナジー波】へと向かって行った。


 ドリルの様に回転する巨大な血の槍が【エナジー波】と衝突すると、俺の放った【エナジー波】を削りながら進んでいく。

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