第27話

 2匹の吸血犬を【エナジーブレード】で両断した俺は、両断された吸血犬が灰へと変わるのを視界に捉えながら、俺へと迫って来る眷属犬に向かって攻撃を加えていく。


 眷属犬は吸血犬よりも防御力が低く再生もしない為、俺は一撃で眷属犬を屠って行った。


 「これで最後ッ!!」


 振るわれた拳が眷属犬の頭部に命中して眷属犬の頭部を破壊すると、追加で襲って来た侵略者たちを全て倒し終わる。


 「ふぅ、それにしてもやっぱり【聖銀の宝玉】の力は凄い。これで吸血犬も余裕で倒せるな、イチ。」


 「ええ、吸血犬だけでなく、吸血鬼も余裕に倒せますよ。」


 倒し終えた俺はイチと話しながら油断せずに周囲へと意識を向けて進んで行く。


 それから幾度かの吸血犬が率いている眷属犬の群れを倒して進んだ先の森の切れ目の先にゲートを発見した。


 ゲートは侵略者たちが地球に現れた時のゲートと変わっていない。


 「これが吸血鬼世界に繋がるゲートだな。地球の方と変わらないみたいだ。」


 「作りは変わりませんよ。それよりもゲートを守る侵略者は居ない様ですね。」


 「隠れていたりは?」


 ゲートの周りに侵略者が居るのではないかと思い周りを見回しながら言うが、俺の感覚では見つけられない。


 「それはないと思いますよ。態々そう言う事をする必要がありませんし。」


 「そうなんだ。まあ、次のゲートに行こうか。」


 「そうですね。次に行きましょう。」


 そうして次に俺たちが向かうのは岩手県のゴブリンが現れたゲートだ。表示されたウインドウを操作して転移をすると、そこは洞窟の中だった。


 「洞窟か、狭いな。」


 「岩の陰に隠れて居る可能性や罠がある可能性もあるので気を付けて進んでください。」


 「そうする。」


 俺が両腕を広げただけで、それだけで洞窟の壁にぶつかりそうなほど狭い通路を俺は進んで行く。


 こっちに向かって歩いて来る何かの音を聞いて警戒すると、暗い洞窟内の向こうからゴブリンが3匹向かって来ていた。


 「ゴブリンか……。」


 余裕に倒せる雑魚が来たと、俺はゆっくりとした歩みでゴブリンたちへと足を進める。


 そんな俺に気が付いたのか、ゴブリンたちは「グギャギャ!」と鳴き声を上げて俺の方へと武器を持って駆け寄って来た。


 「ふっ!はっ!おら!」


 拳を振るい、蹴りを繰り出し、掌を突き出した。それだけでゴブリンは殺されていく。


 辺りには血溜まりを作るゴブリンたちの亡骸が転がるなかを、俺は更に奥に進む為に歩いて行った。


 そうして辺りを警戒しながら進む俺の前にまたゴブリンが現れる。


 ボコッと出っ張った岩の手前に槍を持って待ち構えていたゴブリンは、俺に向かって槍の穂先を向けながら鳴き声を上げる。


 だが、その鳴き声は先ほどの3匹の鳴き声とは違う響きな様な気がして辺りを警戒するが、辺りにはやっぱり槍を持っているゴブリンしかいない。


 洞窟の奥から仲間を呼ぶ為の鳴き声の可能性もあるからと、俺は速攻で槍持ちゴブリンを倒す事にした。


 足に進化エネルギーを集中させて移動スピードを加速させると、俺の接近に反応したゴブリンが突き出して来た槍の穂先を弾いて進み、ゴブリンの顔面に向かって拳を振るう。


 ゴブリンの頭が弾け飛び、槍持ちゴブリンが寄り掛かっていた大きな岩に破壊された頭部の内容物がビチャビチャと付着する。


 そうして戦闘が終わり仲間を呼ばれたのなら足音が聞こえて来るだろうと思い耳をすませるが、洞窟の奥からこちらへと向かって来る足音は聞こえない。


 「仲間を呼ぶ鳴き声じゃなかったみたいだな。それなら先に進もう。」


 高めた警戒力を下げながら大岩の脇を通り過ぎ様とした時、大岩の陰に隠れていたゴブリンが槍を突き出して来た。


 「ッ!!?」


 警戒は解いていないつもりだった俺に突き出された槍は命中する。


 だが、俺に命中した槍の穂先は進化エネルギーを消費して【硬化】している武装の全身鎧の装甲を突破する事はなかった。

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