第8話

 それに身体に纏う進化エネルギー以外の三つのエネルギーが身体の内にある。これは、あの暗闇に包まれ揺蕩っていた時に発見した俺が本来持っていたエネルギーだ。


 この三つのエネルギーを動かそうと意識すれば、進化エネルギーよりも簡単に動かす事が出来た。


 それは本来持ち得ていた物なのだからか、それとも進化エネルギーの操作を行なえる様になった結果なのかは分からなかった。


 手を開いて閉じてを繰り返してから、壊れているショーケースに手を掛けて立ち上がる。


 「身体は動く。それに、これは……一度大きく身体が壊れたから、か?」


 立ち上がった俺が感じたのは今までよりも活力が満ちているだけじゃなく、全身の細胞単位で肉体は生まれ変わる様に強化されていた。


 これは進化エネルギーだけじゃなく、三つのエネルギーを消費して超強化再生を使い、身体の再生を行なったからなのではないだろうか?


 「身体の再生は終わったみたいだけど、武装の方はまだか。」


 今も壊れている武装の全身鎧の再生を行なう為に、俺は新しく得た三つのエネルギーも進化エネルギーと一緒に消費して全身鎧の再生を行なっていく事にした。


 意識して身体の奥底にある三つのエネルギーを操作し、超強化再生を武装の全身鎧に発動する。


 すると、残っていた全身鎧の部分から武装は強化して再生していく。


 大半が破損していた武装の全身鎧の再生が終わり、これで戦える状態になった事を確認してからようやくここが何処なのかに意識が向いた。


 「ここは、アクセサリーショップなのか?…………そうだ!ここなら吸血鬼の弱点の銀があるんじゃないか?!」


 吸血鬼の弱点とされる銀製品のアクセサリーを探すと、純銀製の十字架のネックレスを発見する。


 「これなら……でも、異世界の吸血鬼に、これは効くのか?太陽光を浴びても即死しなかった様に、これもそこまで効かない可能性も……。」


 手に持った純銀のロザリオを見て悩んでしまう。それでも少しでも可能性があるならと、手に取った純銀のロザリオを手に握り込む。


 盗みになる事に罪悪感があるが、そんな事を気にしている場合じゃないからと、俺はアクセサリーショップを出る。


 そして外の景色を見た時、俺は唖然とした。大勢の自衛隊員たちが手足や頭の欠損、人間の身体の形をしていないグチャグチャのナニカ。それに嫌悪を覚えながらもアドニソス男爵を探す。


 「見つけた!!!!」


 アドニソス男爵を発見して思わず声に出してしまうと、血に染まったアドニソス男爵が振り向いた。


 「フン、まだ生きていたのか……害虫の様にしぶとい奴だ。頭を潰し、四肢を奪い、心の臓腑を抉り出さないといけないのか?まあ良い。今は飲んでからだ。」


 大量の血溜まりが動き出し血はアドニソス男爵へと集まる。そして、アドニソス男爵が口を開くと、血は開いたアドニソス男爵の口の中へと消えて行った。


 「くはは、力が漲る!!!だが、まだ足りない。私本来の力の半分にも満たない!!だから、まずはお前を血祭りに上げるぞ!!」


 一歩、歩みを踏んでダン!!と大きな音を立てたアドニソス男爵は一気に俺との距離を詰めて行く。


 アドニソス男爵が振りかぶった腕が視界に入ると、拳が真っ直ぐに俺の顔面を狙って振り抜かれた。


 「……見える。」


 ポツリと呟く。何故血を吸って本来の力を半分以下でも取り戻したアドニソス男爵の動きが見れているのか。それは扱える様になった三つのエネルギーが身体を巡っているからだ。


 進化エネルギーよりも身体強化に適している三つのエネルギーが身体の体内を巡り、増大させた身体能力を生かしてアドニソス男爵の攻撃を躱す。


 「なにっ!グハッ!?」


 躱したと同時にカウンターで俺の左拳がアドニソス男爵の顔面を直撃し、アドニソス男爵は仰け反った。

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