第3話

 馴れ馴れしい上に厚かましくて図々しいこの高校生男子は、自分が何を言っているのか理解しているのだろうか?


 コイツは見ず知らずの他人の為に命を張れと言っているのだ。何で俺がそんな事をしないと駄目だと思うのだろう。


 「断る。何で俺がお前を守らないといけないんだ。」


 「チッ!何だよ、お前!俺が仲間にしてやるって言ってるのによ!!ふんっ!!」


 断ったら、怒鳴り散らして高校生男子は去って行った。正直このまま粘着されるかと思っていたから、それはありがたかったが、その代わり俺は周りから協調性のない厄介な人物だと思われた可能性がある。


 周りから若干距離を取られたが、はっきり言って協力して戦える気がしない為、これはこれで良かったと思おう。


 そんな事を思っていると、また何処からか声が聞こえてきた。


 『多数の世界の侵略者が作り上げだ道が10秒後に開通します。選ばれた皆さん。戦闘準備を行なってください。』


 残り10秒か。周りの連中との連携は取れそうにないし。最初は様子見で行動しよう。相手がどんな存在なのかも分からないしな。


 そして10秒経ち、駅前のタクシーロータリーの中央に大きな門が出現した。


 周りから騒めきが聞こえる中で、門が開いていくのを見ていると、開いた門の中から貴族が着る様なスーツを着た若い男が門から最初に出て来る。


 あれが侵略者なのかと見ていると、男は騒ぎ出す。


 「熱い!!忌々しい太陽がッ!!!眷属たちよ早く出て来い!!!周りの人間共を片付けろ!!!」


 太陽光に照らされた男の身体から煙が起こり、痛みを感じているのか喚きながら門の向こうに叫んだ。


 そうすると、門の中から大量の黒い犬が駆け寄り出し、門から一番近い距離の選ばれた者へと襲い掛かって来る。


 「あぁああああああああ!!!!!!!」


 最前線に居た選ばれし者は油断をしていたのだろうか、黒い犬に襲われて絶叫を上げていた。


 殺されたのかと思うが、それよりも黒い犬や侵略者の男が向けて来る感情に対して、俺の闘争本能が騒ぎ立て始める。


 どんどんと前方に居た選ばれし者が襲われて行き、そのせいで俺の周りに居た選ばれし者たちは怖気付いて及び腰になる。


 それに野次馬たちの多くも逃げているが、それでもまだ逃げずに襲われている選ばれし者を撮影している不謹慎な者が残っていた。


 そう言った者が視界に入り鬱陶しく思う気持ちもあるが、それよりもどんどんと門から出現して数を増していく黒い犬へと意識を向けて行く。


 一歩一歩俺が前進する中、俺よりも前に移動していた俺に盾の代わりになれと言っていた高校生男子が「うぁあああ!!!!」と叫び声を出して黒い犬に背を向けて逃げ出そうとした。


 その声に釣られて俺の周りの選ばれし者たちも逃げ出していく。


 だが、高校生男子は黒い犬に背を向けて叫び声を出したせいで狙われて、その背中に黒い犬が飛び乗り押さえ付けて首に噛み付いた。


 断末魔の叫び声を上げている高校生男子の背中の上に乗っている。獲物を仕留めて警戒の意識が緩んでいる黒い犬に狙いを付けて俺は走り出す。


 無言で声も出さずに走り接近した俺は、完全にトドメを刺す為に顎の力を入れている黒い犬の腹に向かって足を振り抜いた。


 鎧越しの足に黒い犬を蹴った感触を感じながら足を振り抜くと、黒い犬は結構な距離を吹き飛び転がって行く。


 あそこまで蹴り飛ばせるとは思っていなかった為、思考を止めてしまうが、俺の身体は動きを止めずに転がって行く黒い犬を無視して動き出す。


 そんな俺の事を反撃を行なった危険な敵だと認識した黒い犬たちは、逃げ出した者を追う群れと危険な敵の排除に向かう群れと別れて、群れの一部は敵対してきた俺やそれ以外の選ばれし者に集団で襲い掛かってきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る