第15話

 熊本県に転移した俺は周囲を確認すると、この場所は駅のホームだった為、開いたゲートの場所は駅前かも知れない。ゲートが開く場所は人が多く居る場所に開くのかも知れない。


 転移した場所の周りには選ばれし者と思われる死体はあるが、侵略者の死体は見つからない。この場所の侵略者はどんな奴なんだと辺りを警戒しながらゲートがあるだろうと思われる駅前に向かう。


 そして、改札を出たタイミングで血色の悪く目が血走っている200年くらい昔の服を着た外国人を発見する。


 「うがぁあああ!!!!!!」


 いきなり叫ぶと俺へと涎を撒き散らしながら突撃して来る。


 「ふっ!!!」


 手刀の構えから【エナジーブレード】を発動した俺は、【エネルギーブレード】の刃の長さを【エネルギー操作】で伸ばし、1メートルのサイズまで刀身を伸ばすと、鋭く一息吐いて横薙ぎ腕を振るい、襲ってきた外国人の首を刎ねる。


 「弱いな。ゴブリンよりは強いんだろうけど。まあ、あっちは集団で厄介なタイプの敵なんだろうけど。」


 そのまま改札口から移動して行くと、俺は先ほどと同じ様に涎を垂らし目が血走っている外国人の一団から襲われた。その全ての外国人の首を刎ねて駅前を目指して進んで行く。


 「あれは異世界の人間なのかもな。可笑しくなってたけど。で、そこのお前は吸血鬼か?」


 独り言を言いながら改札口から駅前の階段を降りていると、駅前にたどり着く前に怪しい何かが隠れているのを感じ取る。


 その気配はアドニソス男爵に似ていた為、隠れている存在に目を向けて確認の為に鎌をかける


 「そうだよ。それで、あれは僕の失敗作なんだ。吸血鬼にならずにグールになるなんてね。全く使えない奴らだよ。」


 そして隠れていた場所から出て来たのは子供の吸血鬼だった。だが、その気配と強さはアドニソス男爵と変わりない。


 だが、ランクが1の時に戦ったアドニソス男爵から感じたプレッシャーよりも弱く感じるのは、俺がランクアップを果たして強くなったからだろう。


 そして、ランクアップしてから一番危機的に感じたのは、鳥取県のボスロボットの胸部から放たれた光弾だ。


 この吸血鬼からは光弾以上の危機感を抱かない。だから、今の俺に取ってはそこまで強くは感じない存在なのだと思う。


 「なあ、聞いていいか?」


 「何か?下等な動物である人間からの話でも、僕は優しいから質問に答えて上げるよ。」


 口角をニヤニヤと上げながら嘲笑して来るが、脅威にも感じないどうでも良い存在からされても何も感じない。それよりも今は聞かないといけない事がある。


 「あまりにも人の死体がない。これはなんでだ?」


 そう、駅のホームからここまでの道のりにあった人の死体は20人くらいだった。これまでの侵略者が襲ってきていた場所の死体は数え切れないほどあったと言うのにだ。


 殺されずに逃げ切れたか、殺されて死体が一ヶ所に集められているのか、他にも色々な可能性を考えた。


 その中で拉致された可能性も考えている。そして、攫われたと言うのが当たっているのかを確認したい。


 まあ、仮に拉致されていたとしても助けられはしないのだけど。それでも侵略者の動向は知っていて損はないだろう。


 「それは殺すのは禁止させたからね。死んでいるのは激しく抵抗した者だけさ。アイツらは強かったから持って帰ろうと思ってたんだけどね。グールじゃ勝てないから殺しちゃった!!」


 笑顔で嗤う子供の吸血鬼に眉毛を顰めるが、アドニソス男爵も人の事を見下していたし、吸血鬼は人に対してそんなものなのだろうと思い直す。


 「やる気だね!この僕、ケストラ男爵に勝てるとは思わないでね、人間が!!」


 いつでも攻撃可能な様にしていた俺に向かってケストラ男爵は襲い掛かってきた。

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