第5話
男が高笑いを始めると、俺を囲む様に包囲していた黒い犬たちが一斉に襲い掛かってきた。
仲間の黒い犬が一撃の元で殺されても気にも留めない黒い犬たちの猛攻に晒され、かなりの数の黒い犬の頭部や背骨を砕いて殺しているが、黒い犬の数が減った気がしない。
それほどまでの数に襲われて武装の全身鎧はどんどん傷付いて行き、若干だが行なっていた全身鎧の再生も間に合わない。
それでも俺が黒い犬の群れと戦えているのは、特殊技能進化のチカラのお陰だ。戦闘を開始してからずっと進化エネルギーは湧き出している。
しかも、その進化エネルギーが湧き出す量は少しずつ増えて行き、今の俺から発生している進化エネルギーの量は、戦闘前と比べると3倍は違う。
それだけ違うと身体能力にもかなりの差が出ており、黒い犬を倒す速度や黒い犬から受ける攻撃の数が減っていく。
けれども、黒い犬の数が多過ぎる為、根本的に俺の体力の方がこのままだと持たない。
どうにかして超強化再生へ進化エネルギーを注ぎ込める様になれば、まだまだ居る黒い犬たちを全て倒す事も出来るし、あの黒い犬を眷属と呼ぶ男とも戦えるだろう。
ただ湧き出るだけで操作する事が出来ない進化エネルギーを操作しようと頑張っているが、やはり黒い犬の数が多かったせいで、集団に連続で襲われた結果押し倒されてしまい、俺の四肢一つに三匹ほどの黒い犬に噛み付かれてしまった。
一つの四肢に噛み付いて引っ張る黒い犬のせいで、俺は引っ張られる痛みを味わいながら、俺の上に乗っかり首を狙って噛み付こうとしている黒い犬に、負けないとこんな所で殺されないと四肢を引っ張られる痛みに耐えながら黒い犬たちに闘志を向ける。
仰向けの体勢な為、黒い犬が口を開けて首に噛み付こうとする姿が見える中で、この危機的状況が肉体や精神に進化エネルギーに依る影響を与えていく。
肉体の内で収まっていた進化エネルギーが身体の外まで溢れ出し、噛み付いていた黒い犬と身体の上に乗っていた黒い犬を進化エネルギーの奔流が吹き飛ばす。
それだけで無く、溢れた進化エネルギーが身体の再生を行ない、更には武装の全身鎧の再生まで行なった。
進化エネルギーを消費して行なわれたこの再生は、今までの超強化再生の効果で強化された物よりも強力で、全身に活力が漲ってくる。
「これなら負ける気がしない!!行くぞ!犬共ぉおお!!!!」
離れた距離から警戒している黒い犬の群れに向かって駆け寄って行く。これまでよりも強化された身体能力の影響は凄く、まるで羽の様に軽く身体が感じるが、黒い犬を殴った感覚は鋼鉄を超えた硬さだ。
装備技能の硬化も進化エネルギーで強化して行ない、殴った黒い犬の頭部だけが砕け散ってばら撒かれる。
そうして太陽光が照らす中で俺は黒い犬たちを一方的に殺して行った。
そして、全ての黒い犬を殺した俺は、侵略者が現れる門から来た者で最後の一人である男の方へと身体を向ける。
「くっくく、私の眷属を全て屠ったか。だが、それだけ強くとも私には及ばない!!さぁ!来るが良い!!お前を殺すのは、この私吸血鬼アドニソス男爵だ!!!!!」
そして初めての侵略者との最後の決戦がこれから始まった。
大物感を出しているが、吸血鬼アドニソス男爵は太陽光の元には来ずに、太陽光の当たらない場所から動く事はしない。
挑発をしても動くかは分からず、動かなかった場合に怒りで油断が消える可能性がある為、ここは俺からアドニソス男爵の元へと向かって行く。
「うぉおおおおおお!!!!!!!!!」
精神が昂り、俺は叫びながらアドニソス男爵へと駆け寄って行き、右拳を振りかぶってアドニソス男爵の嘲笑が絶えない顔面へと拳を振るうのだった。
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