第6話
「なっ!」
「遅過ぎる……フンッ!!」
「グハッ!!」
振るった拳はアドニソス男爵に振るった拳は躱され、俺の懐の内側に入り込んだアドニソス男爵の拳が逆に俺の顔面へと叩き込まれる。
ギリギリで顔面の中央から額の位置へとアドニソス男爵の拳が命中する位置を顔面の中で固い位置に変えたが、それでもフルフェイスの兜の額部分は破壊され、その下の額に拳が直撃して俺は吹き飛ばされてしまう。
「人間にしては頑丈だな。あの一撃で頭を眷属たちと同じ様に砕いてやろうとしたのだがな。」
吹き飛ばされて転がっている俺の耳にアドニソス男爵の声が聞こえる。態々それで狙ったのかと思うが、あの一撃が腹などの柔らかい部位に直撃すれば貫通していても可笑しくなかった一撃だと、俺の本能と言える部分が告げる。
そんな闘争本能や生存本能と言える物が殺されると言う瞬間に活発になり、自身の身体の調子も大体何故か分かる状態の俺はひび割れた頭蓋骨をより強く再生していく。
それが終わればフルフェイスの兜もより強く再生させ、太陽光の元に出ていたお陰で追撃から免れた俺は立ち上がる。
そして、立ち上がった俺はまたアドニソス男爵へと突撃する。今度は武装の破壊をされない為に武装技能の硬化を進化エネルギーを消費し、先ほどよりも武装を強化する。
黒い犬の群れとの戦いで初歩の武術知識しかなかった俺だが、最初に比べて洗練された連撃をアドニソス男爵に振るっていく。
右、左、右、右、右、左、左と拳だけじゃなく蹴りも混ぜて繰り出していくが、アドニソス男爵に掠りもしない。
それだけ俺とアドニソス男爵との間には存在としてのランクが違うのだろうと、本能が感じ取ってしまう。
だが、それでも何故か勝てないとは思わない。それが不思議でもあり、今も正面からアドニソス男爵に攻撃を仕掛けられている理由でもある。
でもこうも攻撃が一切当たらない事に苛立ちも感じ始めた頃に、アドニソス男爵が動き出した。
俺の殴り掛かった腕を掴むと、アドニソス男爵は蹴りを繰り出してきた。
「イギッ!!」
腰に命中した蹴りの威力に武装の全身鎧が砕ける音とミシミシと腰と背骨の骨が軋む音がする。
腰から下の下半身の力がフッと抜けて崩れ落ち様とするが、アドニソス男爵に掴まれている腕が倒れ込むのを防ぐ結果になった。
武装と先ほどの蹴りに依って生じたダメージの再生を進化エネルギーを使って一気に終わらせると、お返しだとアドニソス男爵に向かって蹴りを繰り出す。
アドニソス男爵は蹴りを行なった足を片手で掴み、俺は片腕と片足をアドニソス男爵に拘束されてしまった。
「その回復力。本当に人間なのか疑わしいな。だが、まあ良い。お前が勝つ可能性は万に一つもない。早く諦めてさっさと死ね!」
何か言葉を返す前にアドニソス男爵は腕を掴んでいた手を離して、足を掴む手が武装を砕いて俺の足の地肌を掴む。
すると、アドニソス男爵は足を掴む腕を振り上げて、俺をアスファルトの地面へと思い切り叩き付ける。
「ウグッ!!ガハッ!!アガッ!!イギッ!!」
何度も何度も癇癪を起こした子供が人形を床に叩き付ける様に俺の事を叩き付けて来る。
アスファルトの地面は一度の叩き付けでひび割れを起こさせ、二度三度と繰り返すほどにアスファルトはボロボロに変わった。
けれど、武装の全身鎧の方がアスファルトよりも強度が高く、武装のダメージはアスファルトよりも少ない。
それでも叩き付けられるだけで俺には衝撃が発生し、かなりのダメージを受けて再生がギリギリ間に合う感じだ。
それからどれだけの時間を叩き付けられていたのか、最低でも10分は経っていると思うが、事態は動き出した。
「ん?私を倒しに来たのか?かなりの数の人間がこちらに向かっているな。それならもう要らないな。お前は死ね!!!」
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