第25話

 茂みから飛び出して来た為、月明かりに照らされて見えたのは黒い犬だった。吸血鬼の眷属である黒い犬たちは一斉に襲ってくる。


 「フッ!ハッ!シッ!」


 【エナジーブレード】を発動して襲い掛かって来た黒い犬を両断して迎撃していく。


 鋭く一息吐く毎に襲って来る黒い犬たちを斬り殺して行き、最終的に16匹を斬り殺して襲撃は収まった。


 「これで最後みたいだな。」


 「地球に来ていた眷属よりも強さは上がっていますね。」


 「分かるのか?」


 「地球に来た侵略者たちのデータを地球防衛機構は取っていましたから。1.5倍ほど強くなっていますよ。」


 動きが早く感じてたけど、やっぱり強くなっていたのか。これは他の侵略者にも言えるのならアドニソス男爵クラスの侵略者には注意しないとやられかねないぞ。


 それにしても地球で戦った侵略者たちは全員別の世界だから弱体化していたのか?


 「なあ、まさかとは思うけど俺って弱体化してる?」


 「いえ、していませんよ。マスターたち選ばれし者には別世界への耐性がある者が選ばれてますからね。なので、マスターが別の世界の理を受けて弱体化する事は余程の事がない限りは大丈夫です。」


 そんな新しい事をイチから聞いていると、遠くの方から遠吠えが聞こえて来た。


 「遠吠えだな。あれって俺の事を知らせる遠吠えだと思うか?」


 「いえ、どうやら違う様ですよ。次々に遠吠えが起こっていますが、マスターから離れて行っていますから。」


 「それなら他のゲートに来た選ばれし者が狙われてるなかもな。助けが必要になってる状況だと思う?」


 「どうでしょうかね。危険を承知で来ているはずですから自己責任ではありますが、マスターが確かめたいのなら行くのが良いですよ。」


 「様子を見るだけ行ってみるか。」


 先ほどから遠吠えが聞こえている方向を目指して走り出した。道中で遠吠えに惹かれて集まって来ている黒い犬を殺して行き、複数が同じ場所で遠吠えをしていると思われる場所にたどり着く。


 そこには選ばれし者と思われる傷付いて倒れている一団と、その一団を囲んでいる黒い犬の群れだった。


 俺がたどり着くと、黒い犬の群れはここまでの間に殺した同族の血の臭いを嗅ぎ取ったのか、黒い犬の群れから俺の方に10匹ほどが向かって来る。


 向かって来る10匹の黒い犬たちを【エナジーブレード】や【エナジーナックル】を駆使して一撃で殺していく。


 そうしていると黒い犬の群れの意識は囲んでいた選ばれし者の一団ではなく俺の方に向いた。


 黒い犬の群れの大半は1番の脅威である俺に向かって来て、残りは囲んでいた選ばれし者が逃げられない様に襲っている。


 あの程度の数なら8人も選ばれし者が居るのなら問題ないだろう。俺は自身に迫る黒い犬の群れに意識を集中させて殺していく。


 そうして遠吠えで呼ばれた追加の黒い犬も殺して行き、辺りには沢山の黒い犬の死骸が残るなかで、俺は息を荒くしているが生き残った選ばれし者の元へと向かった。


 「お前たち大丈夫か?」


 声を掛けるが、その選ばれし者の一団からは何も発言が返って来ない。それを不思議がっていると、選ばれし者の一団の1人が日本語ではない言葉で話し掛けてくる。


 「イチ、何を言っているのか分かるか?」


 「助けてくれた事へのお礼を言っていますね。その後は自分たちを日本に入れて欲しいと言っています。」


 「コイツらが問題になってる亡命しようとしている選ばれし者なのか。迷惑な一団だな。イチ、日本に入国させる権限は俺にない事と俺はもうここから離れる事を伝えてくれないか?」


 「分かりました。」


 イチが先ほど俺が言った事を通訳していくと、この亡命希望の外国人の選ばれし者たちは肩を落として落ち込んでいるのだった。

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