7話:どんな願いも一つだけ叶うそうです 1
◇
「君さっ——何でそんな祝福を選んだんだい? 誰でもデレデレ、好感度MAX。必要なものは、女の子に貢がせながらハーレム生活みたいなっ。そういうための能力だろう? それって」
意地の悪い笑いを目に浮かべながら、バスローブ姿の
ちょっと今日も家に帰れないのでっ。
とは言え、状況は格段に好転していた。今は雛蜂も戻ってきた——発端となったあの時、あの場にいた他のギルドから俺たちは良く思われていないだろうが、一方あの場にいなかった第三者やあの時の動画を見たリスナーからすれば……俺たちは、『法外な要求をされ、圧倒的に不利な戦いを強いられて勝ったトップギルド』。
時間が経てば経つほど大勢は俺たちに必ず味方する。
それに今、攻略の最前線は瓦解している。攻略を急ぐ必要はない。だが——
「わからないッ……! 今となっては、俺自身にも。何でこんな能力を選んでしまったのかッ」
「ふぅーん。……——」
墨華は何事か考えるようにくっと顎を引くと、背中を肘掛け椅子に密着させ、無造作に足を組んだ。その椅子の背の高い造形といい、紅茶のカップやソーサーの質といい、そもそも今午後六時半——『夕食は八時だからね?』と運んできてくれた、山のようなケーキとサンドイッチのアフタヌーンティー。
……。墨華とは幼なじみで、子供の頃からよく遊んだが、『そういえばこうでしたね……⁉︎』と家にお邪魔させてもらう度に思った。豪華な椅子に座っていると、ネグリジェを着た墨華自身も外国のお姫様のようだ。
「!」
やっと俺は……墨華がニヤニヤと笑いながら、何か品定めするような目で俺を見ているのに気付いた。
「どうしてだい? ——っ」
「笑うなよッ。いや……何だよ、どうしてって」
自分の椅子の肘掛けを押して立ち上がった墨華がネグリジェをひらひらさせ、湯気の立つ紅茶のカップとソーサーを手に歩いてくると、音を立てずに一口啜った。
「——誰でも君を大好きなのに、何がそんなに嫌なのかな?」
「……ッ⁉︎」
薄っすらと半透明なネグリジェの胸元に、ほんのり影のつくほどの胸が透けてちらつき、手の中でカップとソーサーが鳴ると……こくんっ、と初めてその喉を紅茶が通る音を聞いた。
「まぁ君は僕の唯一の友人だからね。君がいなければ僕は、友達の家に遊びに行ったり、喧嘩して仲直りしたり、一緒にお風呂に入ってドキドキしたりできなかったからっ……だから君が望むなら、君の踏まれる塵みたいな人生を少しだけマシにしてあげるよ」
「……?」
「実は最近、気になる噂話があってねっ。彗星くんその能力だけど——もしかしたら、なくせるかもしれないよ?」
——え?
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