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「感想は?」
「油断したかな。——」
俺の周りには隠れていた四人が勢揃いする。向こうのギルドの人間たちは何が起こったわからない様子で襲撃者を見ていた……しかし、その姿は判然としない。
剣を持っているが、高レベルな隠蔽スキルのせいではっきり姿を捉えられない。静かな声も聞き取り辛い——しかし、何だこの余裕は? 既に察して向こうのギルドも包囲に動き、なす術はないのに。
「……ん。じゃあ——」
——え?
「なっ⁉︎」
「——君。ああ、これは時間が止まってるんだよ。わかるかな。誰も私に追いつけないんだ」
靄が俺の背後に滑った。
「君、名前は? 顔が見えないから気になって」
何事だ……? 頭が真っ白になった。追い詰めたはずが一瞬で形成は逆転した。
こんな、嘘だ。強過ぎる……ッ。目にしたことが信じられず思考が働かなくなる。
「白良彗星……だがやめてくれ、俺は⁉︎」
「いいよ」
急に俺は解放された。周囲にいた他の全員が、その時何が起こったかもわからない様子で——俺を見もしなかった。元の場所に戻った靄の塊(※正体不明の襲撃者)を、ずっとそこにいたかのように見ている。……⁉︎
「白良彗星くん。悪いことしたかな? 今度からは、何もしないよ——」
ふっ、と濃霧を出す中心がその場から立ち消えた。何が起こったかわからない……。いや……。
「どうしたんだい——?」
「どうもこうもない! ……ッ、そうだろ⁉︎ 俺たちが思ってたのはっ、現れるとは」
本部へ戻ると、墨華が声をかけてきた。——。
「誰かわからない奴が、ダンジョン攻略の最前線にいる奴を狙って殺してるッ。次々と! それで俺たちが疑われてた。でも俺たちも他の連中も、自分がいつどこにいるかなんて誰かに教えたりしない」
「一種のセレブだしね」
「……広大なダンジョンの中で会おうとするのは、もっと現実的じゃないッ。だから今日、あいつは出てくるかもしれなかった。狙ってるやつが揃っている所に来て、誰にするか決めて。次を! でも、あんなの——信じられるかッ⁉︎ それにっ」
「それに、君を知ってた。名前をね」
俺は、目を見開いた。
そうじゃない——。
「それはっ、ッ⁉︎ ——‼︎‼︎⁉︎」
言いかけると、いきなり顔を近づけられて墨華にキスされた。密着し……床に手をつきながら退いて急ブレーキすると、ピンと立てた指を舌の真ん中で舐めながら墨華がクスクス笑った。
「そんなに驚かなくてもいいじゃないかっ……——♪ 僕には君の能力が効いてるんだし、子供のころはもっとひどいことしてたんだから。けど——」
「違うッ、俺たちは断じてそういう幼なじみじゃなかった‼︎ つか今思い返すとさ! 苦手って知らなくて和ホラー映画見る会したとき、泣きながら紙おむつ履いてきたのがおまえとの最大限にロマンチックな記憶なのな⁉︎ 自分自身に驚いたッ! 誤解を招くような表現はやめていただけますかね⁉︎ ——ッ⁉︎」
そう、だから能力を解除しない限り——だが。今日の、あの襲撃者は墨華が言うには、レベルは五〇〇を超えていたらしい。
————
——
打ちひしがれた気分だった……負の記憶でさえ使えるものはすべて使わないと、俺は前には進めない(※実際、うまくいったらうまくいってた今度の件はほぼ墨華のおかげ)。しかし俺が本部を出たその時だった。
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