ダンジョン攻略者をしていますが、『全ての女の子が俺にデレデレ』という最悪のチートスキルのせいで難易度がHELLモードな件
2話:知らなかった? メインヒロインはツインテって決まってるんだよ? ※なお 1
2話:知らなかった? メインヒロインはツインテって決まってるんだよ? ※なお 1
◇
水底のような暗いドーム状の空間……天井すれすれにある、蛇群を描いたステンドグラスの無数の目を通してだけ真夏の太陽が点々と差し込むが、届くのは凍るような石積みの壁の中程まで。湿った地面は溜まった血と水の区別さえつかない。
ここは——〈彗星の騎士団〉。ギルド本部。
「もう一度祝福を手にいれる、ね? ふぅん——? 僕の個人的な意見はさしひかえるけど、統計では、この規模のダンジョンの最終ボスを倒すのにいる合計レベルは一五〇〇。これは理想的なメンバーをそろえて上手に連携した場合で僕たちは、暗殺者、暗殺者、狂戦士、ネクロマンサーから派生の人形使い、探偵」
この建物が誰よりも似合う
配信を見ていた俺が顔を上げると、満足したようにニヤリとした——背中の半分ほどまである微妙な色合いの黒髪から湯気が立っていて、濡れているせいではっきりと今だけは墨染に見える。
「——確かにな! 俺たちに連携は不可能。だが、その代わり俺たちだけに、
しかし。墨華には、ホラー映画のパッケージでさえ見れないほどに幽霊やそっち系のものが苦手(※ネクロマンサーの澪とはじめて会った時、発狂し……思い出すのはよそう)——という弱点がある。
「連携不要の単騎最強、世界中見渡してもそう事例のないひとりでのボス撃破を成し遂げ、ダンジョンでの獲得報酬ランキングにも名を刻む全一の狂戦士。俺たちには、雛蜂という切り札がある‼︎ そこへ半端な催眠がかかって……制御不能になってるからな⁉︎ ——〜〜ああああああッ‼︎‼︎」
だが言っていることは正しく、ダンジョン攻略者のレベルとは、攻略システム側から与えられた権限(職業もそうだ)。
ダンジョンごとに攻略者全員の合計レベルは決まっていて、俺が一人で二億までレベル上げすることはできない。なるべく強力な仲間がほしいが、
「この本部で、闇の魔法使いと暗殺者以外が面接にくると本気で思っているのかい? いくら立地が小学校のプールの真下だからって、住みたいほど好きかな? ちいさい子が——」
——チクチク言葉が刺さる。知りたくもなかった事実を墨華が補足した……即、引っ越しをしたいところだが、この本部にはギルド効果で敏捷性と隠蔽倍率にバフがかかる。
「で、何の用事だ⁉︎」
「好きだから引き寄せてるんだろうね」
——
「無意識に向かっていってるんだよ。ロリの方へ。意識の外だから、自分では止められていないんだ。まぁ君の場合、そうなったのには幼少期の失恋に原因があるから、同情の余地はあるけどねっ」
でも、それ
※俺も心が折れそうだ。
「選び直してリセット、新しい祝福で生まれ直し。本当にそれが君の望みなのかな。前の層で——大きめなギルドの構成員が何人かやられたのを覚えてるかい?」
何だ、そのことか! 俺は思い出した。前層で山羊頭を倒した俺たちは——思い立って確認すると、日本円に換算して二体で九六〇〇万と端数が数百円の討伐報酬を得ているわけだが、あの敵の討伐を狙っていたのは俺たちだけじゃなかった。
ボス討伐報酬は八〇層以降億越えもざらな一方、その辺の雑魚モンスターは倒しても数十円にしかならないので、どこのダンジョンでもそうだが、最前線の攻略は複数のギルドが競い合うようにして行われる。
そして。五人しかいない連携ゼロの俺たちが層攻略に成功したのは、他のギルドの有力な構成員が最近何人か脱落し、もたついたところを出し抜いたからだ。
だが、まさか……?
「……何かやったと思われてるんじゃないだろうな⁉︎ うちが」
「どうやらその通りだよ彗星くん。ついさっきのことなんだけど、無礼な屑がこの建物に来たかと思うと僕の前で、僕に許可なく口を開いて何と喋ったものだから……刃が滑って何人か殺してしまったよ。喋るんだね? ゴミって。嘔吐でもするのかと思ったから、ついつい」
「嘘だろッ⁉︎」
——※墨華は、これでデレている。能力が全開で効いていて、この状態。
墨華は俺の一つ年下の幼なじみだ(※なので使用前後の変化がわかる)。ともかく、俺が最終層を攻略するには、合計一五〇〇レベルを得るため、最終盤までにどこかのギルドを引き込まないと計算が合わない。
なのに俺の能力のせいで——暗殺教団だと思われているせいで、今の段階から危険因子と見做されれば、終盤の攻略戦線から締め出されかねない。だがその時、俺が声に詰まったのはいきなりドアが開いて誰かが入ってきたからだった。
「⁉︎ あっ……ぁぁぁー——お取り込み中……ですねっ。面接に来ましたっ。
……ドアのところにパステルの星や動物や、たくさんの髪飾りをつけたダーク系のピンク髪の、キツイ目つきをしているわりに目を合わせて来ないがとんでもない巨乳の女の子がいた。
巨乳なのに巨乳なのを遠慮しているような、形容し難い陰の気を漂わせていたが、まず——面接は昨日終わった。
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