——2
——
「でも結構ですっ‼︎ お邪魔しゃましゅしたっ——あうっ⁉︎ あ、あわわわっ! 〜〜っ」
「待て⁉︎ おまえがどうこうじゃなく面接は昨日の日程だが!」
シャワーを使った直後の裸にバスタオルだけ——ほかほかの湯気を全身から立ち上らせながら、やや小さい胸は入念に隠し、お臍から下が見えている墨華を見て女の子は噛みながらローブの裾を踏んで転び、半回転しつつ部屋を脱していった……。
何と思われたか想像したくないが……見ると墨華は驚いた顔をしていた。
「二〇〇だ……」
「え?」
聞き返した。
すると、
「今の彼女は、レベルが二〇〇を超えていたよ。ちょっと信じられないな。でも……」
ダンジョン攻略はシステムに制御されている——そのシステム上、自分以外の攻略者のレベルや各種情報は確認できないようになっている。
墨華は探偵なのでスペシャルだが。
「ちょっと留守番してろ‼︎⁉︎ ——」
レベル二〇〇の攻略者が、うちのギルドへ入りに来た……⁉︎
絶対に逃せない。
——俺は走り出した。
「……いや、でも役割が逆だろ⁉︎ もう遅いが、捕まえるために追いかけるのは探偵の方なのに——」
小さな劇場を思わせる入口から、地上へ出ると後ろ姿を目で探すが、いない。だが——。暗殺者の追跡スキルを発動、痕跡を追おうとした、その時だった。
え……?
「——⁉︎」
——何かが、起こった。その瞬間。冷たい感触が首の後ろ辺りを過っていった。よろめいて、口を開けたまま硬直。
この感覚は⁉︎
スマホで確認すると、攻撃を受けたことが記録されていた。どこからかも、誰からかもわからない。
「……(考えてみれば、さっきの話⁉︎ トップギルドの主力メンバーが退場し、俺が疑われるってことは。犯人がわかっていない上、手口は暗殺ってことじゃないかッ——言わなくてもわかると思ってるのか、ドSか⁉︎ 墨華は! いや、でも今の場合、そうだとしても)」
路上には一般人が多く、一人で突然立ち止まった俺を怪訝そうにしていた。
……何で俺だとわかったんだ。
ダンジョンと本部以外で俺は仮面をつけない。今も出るときに捨てた。理由は単純に目立つからだが。
「……(最前線にいるダンジョン攻略者を狙って排除しようとしている奴がいる? でも今の場合、俺がそうだとわかるはずが)、ぅお⁉︎ っと。ごめん!」
立ち尽くしていた俺は、後ろから柔らかい衝撃を食らった……。先の攻撃は、俺でなければ一撃で死んでいた程のダメージが出ていた。追撃かと思って飛び退くと、俺のその感じに驚いたみたいに、綺麗な女の子が道路へ尻餅をついた。
「わぁ⁉︎ ——あっ」
「あ……」
反射的に手を伸ばし、そのまま俺が固まっていると——目を上げた女の子が、おずおずと俺の手を取った。
手を繋ぐと、体温が高くてびっくりする。
立ち上がると、身長が低いわけではなく平均くらいあるのに何だか幼く見える。薄い水色の髪を煌びやかなツインテにして、人懐っこく可愛らしい顔立ちなのに、ちょっと困った表情が凄く綺麗だと思った。
「ごめんなさい。私——ぼうっとしてたのかな……あれ⁉︎」
路上には、女の子が飲んでいたラテと氷が零れ、蓋の空いたカップが転がっていたが。まずいことに……この感じは、効いている! ——
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます