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三十人程いるだろうか。中心は、余裕を含んだ立ち方で堂の中心に立つ黒髪の美少女だった……どことなく陰気な子猫のような雰囲気があるが、頭にはうさ耳のカチューシャで配信映えを狙っている(※現代のダンジョン攻略者としては、スタンダードなスタイルだ)。
「——〈彗星の騎士団〉。ようやく来たにゃ。遅刻にゃ遅刻——ふふーんっ、何でこんなに遅れて来たのにゃあ……? まるで一組だけ違う集合時間を教えられてたみたいにゃ。あ、そのままでいいにゃ。席とかないにゃ」
ふぅーんっと嘆息で笑って、美少女は言った。講堂の中心には彼女と側近らしき部下が七人。それに——講台に半分隠れるようにして、ホワイトブロンドの内気そうな美少女がいた。この子は姉妹なのか雰囲気が似ている。
周りを見ると、大体一ギルドにつき二人か三人位で集合しているので、比較すれば一番の大所帯だった。場の主導権を取っていて、また話しだした。
「——今日の会合のテーマは『疑わしい人物』にゃっ」
「……ちょっとッ大丈夫なの」
俺は、緋花に背中を小突かれて言われ少し驚いた(※心配そうな顔をしてくれたのが意外過ぎた)。
……話は前層でのこと。攻略の最前線を走る巨大なギルドが主力を失い、俺たちは層ボスを撃破した——討伐報酬九六〇〇万に加え、動画の広告料や関連する利益は数多。しかし、必然的に疑いをかけられた俺は、それを晴らす会合の場で……。
どうにかなるはずだった。勝てばよかったし、俺には切り札の雛蜂がいた。予想を現実が超えていたのだ。手をつけられない程にッ。
「……向こうの話はもう終わってるッ」
ここからどうなるかと言えば——
「手短に結論にゃ。つーまーり——〈彗星の騎士団〉は出禁にゃ。最前線に入って来られると危険にゃ! ダンジョンは天災にゃ……なるべく速攻でクリアするためには『みんなで仲良く』、『協力が一番』にゃから、不穏な分子を排除するにゃは妥当で当然の措置にゃ!」
——
「でもずっとではないにゃ、これから前線が三層進むまでの間、あらゆる活動を禁止するにゃ。その間何にも起こらなくて、やっぱり大丈夫ってなったら、その時はまた協力しようにゃ」
——チッ、と澪が何度も舌打ちし、荒ぶって地面を蹴る。同族嫌悪か。似たようなものだろう、豹耳ッ。
「彗星くん、表向きには——あの人の言い分は非の打ち所がないよ。でも彼らからすれば、本当の問題はレベル差だね。正体不明の誰かなんて出会わなければ無害だし、会っても逃げちゃえばいいんだからっ」
墨華が俺に何事か促した。暗い微笑。そう。対処方法がわかっているなら(※対処できないとわかっているなら)、問題は問題じゃない。
問題未満が問題になるのは、きっかけを与えてしまったということ——俺たちは現在、正真正銘のトップギルドだが攻略が三層進む間には、俺たちが得ているレベル的有利……最前線で戦ってきた経験値差は覆る。人数の不利だけが残り、実質的には退場。
「でもにゃ、疑惑がすっかりはっきりと晴れるなら話は別にゃ?」
……なにッ?
「白良彗星、おまえは一体誰なのかにゃ——?」
俺が?
「! つまり、向こうには心当たりがあるってこと? あの時の奴が何者だったのか実はわかってて、本当はさっき言ってたみたいにするつもりだったけどできない。あたしたちが白確だから」
「——白良彗星が白良彗星であるならセーフ。この件には関係ないのにゃ、でも本当にそうにゃか? 素顔を見せて証明するにゃ。そうしたらお友達にゃ? これからは一緒に協力しようにゃ! 具体的には、うちの傘下に入ってもらうにゃ」
「一時的に、にゃ。この問題が解決するまでの間だけ。これは皆を守るためにゃ。皆にはそっちも入ってるにゃ——あの偉ーく強いのとまたかちあった時、もう一度見逃してもらえる保証でもあるのかにゃ⁇ そんなの変にゃ。動画見たにゃ。そっちの五人じゃ、あいつの相手にならないにゃが?」
——
————
「おまえの周りはッ、やれって言ったら皆その通りにしてくれるのか……ほう?」
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