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十分後、準備を済ませて普段の格好になった俺は面接室に入っていった。現在——俺のギルドでは広告で募集を行なっているのだが、面接にきた今日の女の子は(※基本、女の子しか来ない)というと?
「職業は暗殺者です。レベルは六七。人を殺すのが好きで得意です。PKのみでレベルを上げて、人員募集の広告を見て来ました——是非、私をギルドに入れてください」
目にハイライトが全くなく常に小声で何かを延々と囁いており、しかも部屋の入り口から彼女の座っている椅子まで点々と血痕が。極めつけには、面接を俺がはじめると……とてもはきはきとコミュ力全開の笑顔で喋りはじめた。
「わかっています。攻略ギルドっていうのは嘘なんでしょう? 最強の暗殺者ギルド——〈彗星の騎士団〉の任務は私にうってつけだと思います!」
——俺のロールが暗殺者なのは、顔を隠して気配を消せば能力の効きを軽減できるからでもあるのだが、正体不明でいた結果……無事、殺人ギルドの汚名を襲名。
そして、攻略の最前線にいる俺はそこそこ有名になってしまっている……人員募集に来る攻略者というのは。
「
「それも女子のね。デレデレが反転、独占欲から殺意になってあなたがバラバラにされる未来が手にとれるようだわ。死んだら、左目は澪にちょうだい」
「暗殺者、暗殺者、探偵、狂戦士、人形使いに暗殺者を何人加えたとしても戦術の幅が広がらないだろ⁉︎ 緋花よりレベルが高い奴なんているわけがっ——今、凄い怖いこといわなかったか⁉︎‼︎」
——目。
「勘違いしないで? お人形の部品にするの。左目がついてないから」
「あ、ああ〜。へぇー、そうね。そう……」
金髪巨乳でダウナー系ロリの人形使い、わがままそうな属性ばかり詰まっているのに今日も朝食を用意してくれた澪は、豹柄の猫耳に頭巾をつけ、割烹着を着て、両手で抱いたお盆で胸を支えている。
※耳も尻尾も魔法でつけているだけだ。澪は料理が趣味とのことで、二人の時は食事を作ってくれる。皆がいると、『人数増えるとめんどくさい』と言う。
人形使いは、倒した敵や味方の屍骸を駆使する特殊職(※派生元はネクロマンサー)。
「……どっちにしろもっと怖えよ⁉︎‼︎ というか……効いてないんだよな⁉︎ 澪にはっ、俺の能力は。思ったんだがあれ? いつから豹耳だったっけ⁉︎ そんな肉食のえっちな——いや何でもないッ」
落ち着け。俺は深呼吸した。だが、冷静になった途端に……俺の中で時間が少し巻き戻った。
「——『よく眠れたわね』って何だ⁉︎ 言い方おかしくないか……?」
「何しても起きなかったから。ホラー映画、隣でずっと見てたのに」
「だからか‼︎」
……元々、チートの効かない澪と俺が出会ったのは怖い動画が撮れると話題だったダンジョンの一角でのことだった。
で、俺が顔を隠すために普段欠かさずつけている仮面というかマスクというかを今——豹尻尾が弄んでいた。
「……返せよ。調子に乗って、変なキャラをつくってダンジョン攻略者やってたのがよかったッ。雛蜂に顔バレしたら俺は死ぬだろうッ。多分」
「今日。これから打ち上げなんだけど暑いから海に決まったの。皆で水着でリゾートビーチ」
「ああ。ん? ……んっ⁉︎」
俺の目的は完全攻略して祝福を選び直すことだが(※聖剣にする)、ダンジョン攻略というのは、先の層へ進む程に報酬が貰えるようになっている。
各層のボスモンスターを倒して、新たな階を解放した時が特に歩合が良く……というかそうしないと割に合わないのでトップギルド以外は動画配信とかで稼いだりしているのだが、この前二体の山羊頭を倒し、第七十九層を解放した俺達は中々な額が得られた。
で、俺を除いて——暗殺者、探偵、狂戦士、屍骸使いという死を感じる組み合わせにも関わらず、うちのメンバーはとても仲が良い。
「ッ——⁉︎ 待っ⁉︎‼︎」
「だから、優しい優しいこの澪様が、一度きりのチャンスをあげる。見たいでしょ? 水・着」
打ち上げのようなことも、頻繁に行なわれているが俺は参加したことがない——焦って直線的に低空ダッシュした俺を烏羽の刃人形が弾き、俺は直接、人形は机を支点に一回転して壁へ叩きつけられる間に、豹柄の尻尾がドアを閉めた……。
最後にとても嗜虐的な表情を浮かべ、澪は俺の仮面を被りながら。
「最前列で見せてあげるわ。終わったら、ありがたく跪きなさい? これ、現地で返すわ——」
「違うッ‼︎ そういうことがしたいんじゃない、俺は⁉︎」
——追いかけないと!
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