俺様社長は純情な田舎娘を溺愛する

@yumemiruringo

第1話 みかん畑から

どこまでも続く青い空。

雲ひとつ無い秋晴れに清々しい風が優しく吹く。


緑の木々にオレンジに色づく蜜柑がとても綺麗に輝いている。


私はこの景色がとても好きだ。


私の暮らす田舎はみかん産地で実家は代々続くみかん農家だ。

兄、亮太(リョウタ)は父を手伝いゆくゆくは五代目を継ぐ事になるだろう。


妹、里穂(リホ)は『田舎なんて大嫌い』と、美容師になるべく東京の専門学校へ今年から通っている。


私、間宮果穂は2年前に地元の農業大学を卒業し、実家のお手伝いをしている。


母は私が小さい時に病気で亡くなった。


母譲りの白い肌とくりくりの目、一度も染めた事の無い黒髪は肩下まで伸びた。歳より下に見られがちですっぴんだったら高校生に間違えられてしまう程だ。


身長は155センチで、妹に背を抜かれた時は悔しくて毎日牛乳を飲んだのに伸びず…


過保護な兄は、小さい方が可愛いと慰めてくれるが、私にとっては1番のコンプレックスだ。


週末には移動式cafeを開き、マルシェやイベントへ出店してみかんのPRをして回るのが、日々の楽しみになっている。


cafeでは実家で採れたみかんやレモンを使ったジャム、フレッシュジュースや地元で採れる果物を使ったパフェ、カップケーキなどを提供している。


インスタを中心に広まって、今ではちょっとした有名店らしい。


でも、私としてはcafeで生計を立てる気はなく、実家で採れたみかんや果物を美味しいと食べてくれるお客様の、直の声を聞きたいと思い始めたに過ぎない。


「今日も良い天気。」


私の家では11月中旬から早生みかんの収穫が始まり、12月中旬から片山みかん1月からは青島みかんを収穫する。

その他にも柿やレモンも育てている。


みかん農家にとって一年を通して秋から春にかけてが1番忙しい時期になる。


「果穂ちゃん、おはよう。

今日も相変わらずのべっぴんさんだねー。」


「おはようございます。松さん今年もよろしくお願いします。」


収穫時期になると、何人か収穫の助っ人として人を雇う。

松さん事、松田さんはその中でも1番の古株で今年で10年目なる。


「果穂ちゃんがうちの孫の嫁になってくれりゃ、わしも引退出来るけん。

純とはどうね?会ったりしないのか?」


松さんの孫は私の幼馴染で、松田純と言う。地元の農協に勤めていて我が家にも顔を出す。子供の頃は意地悪ばかりされ、いつも泣かされた記憶しかない。 


「先日も肥料持って来てくれたんよ。純くん

力持ちやけん、とっても助かったよ。」


「そりゃ良かった。純と一緒になってくれたらわしももう思い残す事ないでね。」


「そんなこと言わないで。松さんが居ないとうちの収穫は回らないから、元気で長生きしてね。」


「嬉しい事言ってくれるわ。」


松さんと他に収穫を手伝ってくれる人はもうお年寄りばかりで、腰が痛かったり膝が痛かったり…なんだか申し訳ないくらい。


それでも毎年彼らに支えられてうちは成り立っている。

「果穂、脚立を人数分用意してくれ。」


「はーい。お父さん!」


後から来た兄も合流して収穫作業は始まった。


「今年はよく晴れたし、雨もほどほど降ったから美味しいみかんが採れるぞ。」

そう言って父は他の畑の消毒へ出かけて行った。


私と兄は、お年寄りと共に一緒に収穫作業に入る。


こんなふうに、毎日は平和でのんびりとした時間の中で過ぎて行く。

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