第13話間宮家東京に行く
東京には、朝早い新幹線で出発する。
「里穂の美容院には、何時に行けばいいんだっけ?」
「三時に予約してある。果穂1人で行けるか?なんならお兄ちゃんがついて行こうか?」
過保護な兄がまた顔を出す。
「やめて、恥ずかしいから。
1人で大丈夫だよ。お父さんと先に会場で待っててくれていいから。」
式は夕方5時からで、その後立食パーティーもある為、夕飯も軽く食べられるらしい。
8時くらいには、翔さんに会いに行けるといいけど、と頭で考える。
「お兄ちゃん達は何時に帰るの?
明日、早いしそんなに遅くは居ないよね?」
「8時終わったらそのまま帰らないと。」
父が言う。
「果穂、もしかしてアイツに会うつもりじゃないだろうな。」
兄が疑ってかかる。
「翔さんはお仕事が忙しいし、そんな遅くに出歩かないよ。着物も着てるから里穂のアパートにタクシーで帰るつもりだよ。」
「なら、いいけど。」
「亮太、過保護過ぎるのもそろそろ辞めろよ。果穂に嫌われるぞ。」
父がなんとなく嗜めてくれる。
「果穂が結婚なんて考えられん。」
本気で落ち込み出す兄を横目に、お目当ての釜飯を見つけ、みんな分のお弁当を買って、新幹線に乗り込む。
東京駅から電車とタクシーを乗り継いで、里穂のアパートに到着したのは1時前。
里穂は学校に行っている為、今は居ない。
とりあえず荷物を置いて、近所を3人で散策しながら里穂お勧めの洋食屋さんでお昼を食べる。
そこから分かれて私は1人タクシーで、里穂がバイトをしている東京の中心地へ行く。
着物一式は予め宅配してある為とても身軽だ。
わぁー、これがスカイタワーかぁ!
タクシーの車窓から東京観光をする。
ちょっと興奮気味にキョロキョロしてしまう。
そろそろ美容院かな?と美容院を探す。
すると、翔さんのカフェを見つける。
運転手にここで降りると告げる。
外にはテラスがあり雑誌で観たよりももっとお洒落で素敵なお店だった。
入ってみたいけどもう時間が無い。
前を通り過ぎながら中を覗く。
レジ前に人が集まって見える。お昼過ぎてもこんなに人が並んでるんだ。
凄いな……。
足を止めそうになり、慌てて気持ちを切り替えて美容院に急ぐ。
「こんにちは。間宮と申します。」
「いらっしゃいませ。
里穂ちゃんのお姉さんね。お待ちしていました。」
和かな感じのお姉さんが応対してくれる。
さすがプロと言う感じに、あっという間に着付けされ髪も今風でオシャレな感じにセットしてくれた。
美容院を出て時計を見るともう4時だった。
タクシーを頼んで貰えば良かったなぁ…。
着物姿はちょっと目立って恥ずかしい。道ゆく人に見られている気がしてソワソワする。
スマホでタクシー会社を検索しながら歩く。
「……果穂⁉︎。」
不意に誰かに名前を呼ばれて振り返る。
えっ……?
えっ…翔さん⁉︎
振り返るとそこにスーツ姿の翔さんがいて、
足速に私に近付いてくる。
あれ?
今日はお店に居るのはお昼までだったんじゃ無かったの…?と瞬間思いながらじっと翔さんを見ていた。
「何で、果穂が東京に?……何で着物⁉︎」
翔さんも不思議そうな顔をしてじっとこちらを見つめてくる。
恥ずかしくなって目を逸らすと、パッと手を握られる。
「果穂?」
「えっ…と、凄い偶然でびっくりしちゃって…。
あの、実はサプライズで後で電話して会えたらなって思ってたんですけど……。」
「ちょっと待って、ちゃんと話しがしたい。」
そう言って翔さんは何処かに電話をかける。
すぐに黒塗りの高級車が近くに停まって、
翔さんに引っ張られるまま車に乗せられる。
「ごめん、少し話がしたくて咄嗟に車しか思いつかなかった。」
「武井さん、ちょっと席外して欲しい。」
運転手さんに向かってそう言う、彼は正真正銘社長さんなんだ。
「承知しました。」と、運転手さんは頭を下げて外に出て行く。
「あの……翔さん。びっくりさせちゃってすいません。」
なんだか大変な事になったと焦りながら頭を下げる。
「いや、会えて嬉しいんだけど……何で?
着物なんて着て何処へ行く?」
翔さんに真剣な表情で見つめられてちょっと怖気付く。
「えっ…と、実は、うちのみかんが…。」
「みかん⁉︎……。」
怪訝な顔で見てくるので緊張してしまう。
「はい…、うちのみかんが…賞を取って、
文部大臣賞では無かったんですけど、
その次の優秀賞で…で、この後ホテルで授与式があるんです。」
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