第2話 大都会から(翔と言う男)

その頃、大都会東京、

pertica cafe (ペルシュ カフェ)の本社では問題が発生していた。


コツコツと足音を響かせ、三巴の高そうなスーツに身を包む男が、会議室に向かって足速に歩いて来る。


仕事をしていた事務員も、電話対応をしていた営業マンも、つい手を止めて振り返る。


引き締まった薄い唇、すっと通った鼻筋に鋭く光る瞳はアーモンド型、モデルの様なルックスでどこにいても注目を集めてしまう。


男女問わず誰もが羨望の眼差しで彼を見つめる。

そんな完璧な男の目下の野望はこのpertica cafe を全国展開しその先には海外までも視野に入れ、果てしない夢を抱いている。


こんな所で足踏みしてる場合では無いと、思い悩むその男、

pertica cafe 代表取締役社長 


堀井翔(ホリイ カケル)29歳。


「遅くなってすまない。会議を始めよう。」

よく通るバリトンボイスで会議室に入って行った。


「社長が来ないからもう帰ろうかと思ったよー。」

ちょっと明るめの茶髪、笑顔がかわいいと評判の癒し系男子は、

副社長の高橋雅也(タカハシ マサヤ)


怖いもの知れずで、社長に向かってなかなかの言いようだ。


その前には銀縁メガネの、いつも穏やかな商品開発部部長、

向田優斗(ムコウダ ユウト)


が座っている。


彼らは大学時代からの仲間で翔の誘いを受け、一緒にこの会社を起業した。


そして、

今年7年目に入りついに売り上げが伸び悩む…


「もう、流行りを追うのは限界があるんじゃ無いかなぁ。」

副社長の雅也は翔にそう言い放つ。

「ご当地パフェなんてどうだろうか?」

少しの沈黙の後、翔が静かに言う。


「その土地で採れた果物をふんだんに使ったパフェか!確かに東京には地方出身者が多いし、ここに来たら懐かしい地元の果物が食べられるって嬉しいかもね。」


優斗は地方出身で、大学進学を機に東京に来た人間だ。その気持ちは良く分かる。


「でも、翔は生まれも育ちも東京なのに、良く思い付くよな。」

雅也が尋ねる。


「俺には地元を懐かしむって感覚が無いから、田舎があるって事に羨ましいと思ったりする。」


「俺から見たら東京生まれ東京育ちの方がカッコいいし羨ましいけどね。」


そんな雑談をしながらも、話はまとまり次の段階に入っていく。

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