過去を探して 教国
第18話
教国。それは僕ら魔族にとって忌々しい敵対国家。この国の指針で何度人間と魔族の戦いが起こったか。人間が魔族魔獣を倒し、魔族が人間を亡き者にする。その歴史は繰り返されていった。その原因の1つになった国に僕らは入国した。
「アル。ここは魔族が忌み嫌っているだろ? 早く通り抜けてもいいと思うんだが?」
「うーん。過去に戻る方法がここにあるかもしれないし、それに古代文字の書物もここでならわかるかもしれない」
「そうか」
「ふぉふぉふぉ。兄者、わらわに任せるのじゃ!」
そう言ってタンヤオは紙を取り出し、僕らに見せた。
【1】大吉
【2】凶
【3】凶
【4】凶
【5】凶
【6】大凶
(おみくじ? だいぶ凄いな。それと大凶って初めて見たんだけど)
「ほい」
タンヤオがサイコロを投げて出た目は――、
【1】
「ふぉふぉふぉ。兄者、ここでも帰る方法を探すのじゃ!!」
「タンちゃん。ありがとな。アル、ちょっと寄り道って言うか、だいぶ遠回りしたいんだが……」
「遠回りってどうしたの?」
「知り合いがいるんだ。お菓子屋さんやっているんだけど、どうなっているか気になってな。様子を見たいんだ」
「主! 主! 早く行くのじゃ!」
「いいと思うよ。ロン」
僕らは国境沿いを進むことにした。シャラム帝国の国境からビスビオ王国の国境まで、かなり遠い道のりだ。
「あれ?」
「どうしたの?」
「あそこにいるの、オレの部下じゃないか?」
「ん?」
ロンが
「おーい。フェニちゃーん!」
ロンの呼びかけに対し、フェニックスが振り向いた。僕らはフェニックスのもとに行く。
「フェニちゃん。ここで何しているのよ?」
「ここか? いやな、この国に漫画喫茶って言うのがあると聞いたから寄り道したのだ」
(いいのか? フェニックス。部下が漫画喫茶に立ち寄るなんて。まるで仕事するのが面倒みたいな)
「フェニちゃん。シャラムのヤツら追ってくるかもしれないじゃん。何しているんだよ」
「人間ごときに恐れを抱く、我ではない」
「その人間に勝負で負けたの誰だっけ?」
「ふぉふぉふぉ。わらわは主に椅子取りゲームで負けたのじゃ!」
(椅子取りゲーム? 2人でやったの?)
「タンちゃん。椅子取りゲームじゃなくて、石取りゲームだぞ」
「はて? そうじゃったのかのう」
「まあ、いいや。フェニちゃん。
「わかった。
(いつも思うんだけど、ロンって何者? フェニックスが言うこと聞くなんて前代未聞だよ)
フェニックスは元の姿に戻り、空へ飛び立つ。周りの人達は驚いていたが、気にせず旅を続けた。
◆
1週間後
「あそこの店が知り合いのいる店だ」
目的の場所に着いたみたいだ。ロンの後に僕らはついていく。そこにあったのは真新しい、立派な建物の中にあるお菓子屋さんだ。
「この建物、イイ感じだね」
「そうだろ。今、工房を作っているノビノビラ達が立てたんだよ」
「へぇー。そうなんだ」
「いらっしゃいませ。あっ! ロンさんじゃないですか! それにライムさんも」
(タンヤオは? タンヤオも関わっているって聞いていたんだけど)
「ハナ、久しぶり。親父さんは元気にしているか?」
「はい。おかげさまで、怪我をする前の普通の生活に戻れています」
「そうか。良かった」
「ロンさん。今、1日限定5個のお菓子があるんですけど」
「そんなものあるんだ」
「主、主。買うのじゃ。みんなで食べるのじゃ!」
「そうだな。ハナ、その限定お菓子を5つくれ」
「はい」
ハナと言われていた少女はショーケースにあるお菓子を取り出す。
(ん?)
「ロン。僕にロン、タンヤオ、ライム、テス、パルでしょ。みんなで食べるには1つ足りないよね」
「あっ! そうか」
「ふぉふぉふぉ。わらわにいい考えがあるのじゃ! サイコロの目が出た人が諦めるのじゃ!」
そう言ってタンヤオは紙に何かを書いていく。
「できたぞよ」
【1】わらわ
【2】主
【3】兄者
【4】スライム
【5】娘猫
【6】ドワーフ
(いいのか? こんなんで決めて)
「ほい」
タンヤオがサイコロを投げて出た目は――、
【1】
「! 主! 今のは練習なのじゃ! もう1度振るのじゃ!」
タンヤオはサイコロに念力を送っている。
「じゃあ、行くぞよ。ほい」
【1】
(確率36分の1)
「! 主! 今のはリハーサルなのじゃ! もう1度振るのじゃ! ほい」
【1】
(確率216分の1。っていうかイカサマサイコロじゃん。大吉も【1】だったし)
「タンヤオさぁ。僕は食べないから、みんなで食べてよ」
「兄貴! 兄貴が食べにゃいにゃら、うちの分を兄貴にあげるにゃ!」
「おいら、みんなの旅に連れていってもらっているから大丈夫ですよ」
話し合いの結果、ライムが食べないことになった。ライムが店の床にある汚れたもの体に吸収するからと言ったからだ。
(王様ありがとう。僕の旅に同行せよとライムに命令してくれて。彼は謙虚でまともだ)
「みなさん、ここで食べていきます? 中で食べていけば税金が安くてすみますよ」
(へぇー。そんな税金の取り方なんだ)
みんな席に座り、限定お菓子を食べる。
(美味しい)
「ふぉふぉふぉ。わらわは足りんのじゃ! ここにあるお菓子を全部食べるのじゃ!」
タンヤオが何かを言っているが、ハナとは違う少女がやってきて、僕らにお茶をくれた。
「どうぞ」
「おう。わりぃ、マユ元気だったか?」
「はい。元気です!」
「そうか。オレの分はいいよ」
「マッチョ。要らないのにゃ? 要らないならうちが貰うにゃ」
そう言って、テスがロンの分のお茶をぶんどった。
「いいニオイだにゃぁ」
(そうか? そうは思わないんだけど)
「アルロスさん」
「ライムどうしたの?」
「このお茶はハツカネズミとトカゲの
(なるほど。どうりテスが食いつくわけだ)
それを聞いていたパルもテスにお茶をあげている。残りのみんなは普通にお茶を飲んでいた。
「ごちそうさま。アル、そろそろ行くか?」
「そうだね」
「あっ、お帰りですかロンさん?」
「また近くにきたら寄るよ」
「はい、是非来てください。待っています」
「あいよ」
タンヤオがお店にもっと居たいと言っていたが、ロンと僕はタンヤオを連行して外へ。
「兄者! まだチョコレートマフィンを食べていないのじゃ! 食べるのじゃぁぁ!!」
(無視)
「はあ」
「大変だね。ロン」
「もう1つあるぞ。ほら、見てみ」
ロンが顎で
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