過去を探して ブレッサンド王国

第8話

 僕らは北へ進む。そして国境を越えて、ブレッサンド王国に入国し、2日かけて伯爵がいる町まで行った。


「ロン、これからどうする?」

「そうだなぁ。民にここがどんなところか、聞いてみるか」

「そっか」

「まぁ、伯爵がどんなヤツなのかも聞くけどな」


 それから僕ら(タンヤオを除く)は手分けをして民に聞き、伯爵に関する情報を集めた。


「評判が悪いね」

「食べる物が少ししかにゃいって言ってたにゃ」


「そうだね、ライムの方はそうだった?」

「ボク、人に聞くのが苦手なんです。アルロスさん、ごめんなさい」


「気にすんな、ライ。もっと役に立たないヤツがいるから」

(わかる)


 人々に聞いてわかったことは、税が重く、生活が厳しいそうだ。僕はその民の為に僕らはどう行動したらよいのかを考えていた。


「ロン」

「何だ?」

「やっぱり伯爵が民の目線になって、今までのやり方を変えていかないと、ダメだと思うんだ」

「だな」

「うん。直接会って話をしてみたい」

「はぁ。アル、いいか。どんなに言ったって、人は変わらない、変えられるのは自分だけだ」


 その後もロンと話をしたが、結局のところ、伯爵を亡き者にしようという方針に至った。


「小娘。仕事だ」

「小娘じゃないにゃ! マッチョいい加減にするにゃ!」

「あのな。伯爵邸に潜って、囲われている女子供がどこにいるのかを調べて欲しいんだ」

「嫌にゃ!」


「テス、僕からも頼むよ」

「OK。任せるにゃ!」


 ◆


 数刻後。伯爵邸に潜ったテスが帰ってきて、わかったことを僕らに伝えてくれた。


「子供達は庭にあるボロイ建物の中にいるにゃ」

「女性達は?」

「逃げられないよう、3階にみんな閉じ込められているにゃ」

「そうなの? 女性達は逃げられないけど、子供達は逃げられるじゃん」


「アル。子供は外に出ても、お金がないだろ。自分で稼げないし、運が良くない限りは、街で野垂れ死になる」

「そういうことか」


「外に出るためには、ここの通路にいる人を何とかしないといけないにゃ」

「わかった」


 テスから得た情報をもとに、ロンと作戦会議をする。


「先ずは、逃がすことだな」

「そうだね」

「門と玄関は任せた、子供達を頼む。3階はオレがやる。テスとライムが誘導だな」

「タンヤオは?」

「逃がしてからだな。それまで待機」

「わかった。あと子供達はどこへ逃がせばいい?」

「この噴水広場が一番広いな。一時的にそこに集めよう」

「この場所ね。テス、ライム、聞いていた?」


「大丈夫にゃ」

「聞いていました」


 ◆


 僕らは伯爵邸に来た。作戦通り、僕が門番を無力化し、その間にロン達が伯爵邸の中に入っていく。

(テスが心配だけど、ライムもいるし、どうにかなるだろう)


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「おりゃぁ!」

「うわ」

「ふっ!」

「ぐふっ」


「まったくー。2人もいるのに、使えねぇな。って言っても、のびてるか」


 ◆


「おう、お前ら助けにきたぜ。カッコイイだろ。このロン様がお前らの為に行動しているんだ。ありがたく思え」

「まあ♡ロン様ったら♡アタシの為に行動してくださったのね♡」

「げっ!」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「みんなこっちにゃ!」

「ここの階段を下りて、そのまま玄関まで行ってください」


「ん? マッチョ、何してるにゃ!」

「足止めを頼む!」


「ロンさまぁ♡待てーい! 逃げんじゃねえぞ、コラァ!!」


 ◆


(みんな出てきたな)


「こっちから出て、噴水広場まで行ってください! あとは僕らが何とかしますから、急いで逃げて――ん?」


 女子供達が逃げている中を、ロンがこちらに向かって走ってくる。


「ロン!」

「わりぃ! 足止めを頼む!」


 僕の脇をロンが通り過ぎる。ロンだけでなく見たことある女も走っていった。

(ロン。ご愁傷様しゅうしょうさまです)


「ふぉふぉふぉ。兄者、わらわも何かしたいぞよ」

「この人たちを逃がしたら、伯爵の所まで行こう」

「わかったぞよ」


 ロンが戦線離脱。僕とタンヤオは伯爵邸の中に入り、テス達と合流。伯爵様の所へと向かった。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「何事だ!」

「ご報告いたします。賊が入り、女達が逃げています」

「何をしているんだ! お前ら、女達を逃すんじゃない! 賊を捕まえろ!」

「はい!」


「僕らを捕まえるんですか? 無理ですよ」

「はっ。お前達は誰だ!」


「通りすがりの正義の味方です」

「ふぉふぉふぉ。兄者、あいつでよいのじゃな」

「うん」

「任せるのじゃ」


 タンヤオは伯爵に近づき、伯爵をミイラにした。それを見ていた者達は、叫びながらどこかへと逃げていった。


「兄者、他にすることはないか?」

「特にないね。あっ! ロンがアンコーに追われているんだ」

「ほう、主が」

「えっ、行かないの?」

「たまにはサボっても良いではないか」

「おやつ無くなるよ」

「兄者、主の所に行ってくるぞよ」


 そう言って、タンヤオは魔法陣の中に入っていった。


 ◆


 僕はテス達と伯爵邸を出る。噴水広場に行き、故郷に帰る為の路銀を渡した。その後、僕はここにいればロンが来るのではないかと思い、テス達に言ってロンを待った。


「兄貴~。いつになったら来るのにゃ」

「もう少しで来るよ」

「そのセリフ、何回目だにゃ」


 テスは待ちくたびれている。ライムは噴水の中に足を入れて、くつろいでいた。

(あと、どのくらいで来るだろう)


「兄者」

「おっ。おかえり」

「主は捕まって、縄で縛られている」

「ん? アンコーを止められなかったの?」

「あの女はわらわにチョコレートをくれたのじゃ。だから協力したのじゃ」

(ロン。ご愁傷様しゅうしょうさまです)

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