望んでいない珍道中 教国
第22話
僕達の旅は続く。途中、気になった乗り物が見えたのでロンに聞いてみた。
「ロン。あの乗り物って何?」
「あぁ、最新式の乗合馬車だ。ノンステップと書いてあるのが目印だ」
「わらわは初めて聞いたぞ。ノンストップとは何ぞや?」
(ノンステップね、段差がないヤツ。ノンストップならどうやって乗るの?)
「ジン様、あれに乗って教国へ行きたいです」
「そうだね、せっかくの新婚旅行だし。乗車券ってどこで買えばいいんだろ?」
「ジン、乗車券は乗るときにチケットを引っ張ってとるんだ」
(まるでバスだな)
僕達5人は乗合馬車に乗る。ちなみにライムは弓に
僕は修学旅行を思い出し、中学の時の社会の先生、高校の世界史の先生、気づけば≪
「あお~げば~とう~とし♪わが~しの~おん♪」
そしてタンヤオも僕につられて歌う。
「
(酒を
『ご乗車ありがとうございます。次はレフト、レフト。お降りの際はブザーでお知らせください』
「ほう。主、何と言っているのじゃ?」
「タンちゃん。降りるときに、近くにあるボタンを押すんだ。『ビーー』って音が鳴る」
タンヤオは首を振り、ボタンを探しているようだ。見つけたらすぐにボタンを押していた。
『ビーー』
「なんと! 主、これは凄いのじゃ!」
馬車が止まりお客さんが降りる。
『ご乗車ありがとうございます。次はラ『ビーー』、イト。お降りの際はブザーでお知らせください』
◆
『ビーー』
『ビーー』
『ビーー』
『ビーー』
(タンヤオ、他のお客さんに迷惑だ。お願いだからやめてくれ)
◆
『ご乗車ありがとうございます。次はショ『ビーー』、ト。お降りの際はブザーでお知らせください』
「ジン。次が教国検問所の最寄りの
「わかった。みんな、降りる準備をして」
僕達は馬車から降り、検問所へ向かう。検問所に着くと、ものすごい数の人達が並んでいた。
「すごいね」
「ジン。お前、国王だから特別にあそこの検問所使えるぞ」
ロンが指示した検問所へと向かう。検問所にはたくさんの騎士達がいて僕達を
「すみませーん」
僕が受付で係りの人を呼ぶと、やる気を感じないおじさんが来た。
「どこから来たの?」
「シャロー王国です」
「聞いたことないな。場所はどのへんだ?」
「ネマール帝国の東にあります」
「太陽の方角か――そこに住所氏名年齢、好きな食べ物を書いてくれ」
(太陽が動くと方角変わるでしょ? それに好きな食べ物って、この用紙は自己紹介カードかな)
「ロン、書いてくれないか?」
「いいぜ。オレが書く」
ロンが記入し、受付のおじさんに渡すと、おじさんは目を見開き僕に言ってきた。
「国王!! 国王様でしたか! どうぞどうぞお通りください。アンケートには満足度★3つでお願いいたします」
(あぁ、なるほど。成績悪くなると、
受付のおじさんに銀貨3枚のお布施を払って、僕達は教国に入国した。
「ジン良かったな。巡礼のシーズンになると、人、人、人で
「へぇー、じゃあラッキーだね」
「ジン様、なんだか素敵な町ですね」
「そうだね、シャル」
「シャルちゃん。夜は気をつけてね。この国、娼館などがないから、男に捕まったら大変よ」
「そうなんですね、セーラさん。気をつけます」
食べ物を積んだ馬車が走る。砂が舞い上がり立ち止まると、1人の少年が僕達のところにやってきた。
「お兄さん達。今夜の宿決まっている? 安いところ知っているから、案内したらお金くれるかな?」
「ん? 何?」
「安い宿、教えるからお金
「ロン、どう思う?」
「なんでもいいと思うぞ」
「じゃあ――」
「見つけたぞ、このガキ!!」
怒っている男達が急に現れ、少年に言い寄る。少年の表情は優れなかった。
「あんな、ボッタくりのところに泊めやがって、ちょっと来い!!」
「ヤダ!!」
少年は逃げようとするが、男に服を
「おっ、いいねぇ。俺ら遊んでやるからな。なぁ、お前達」
「やめ――」
逃げられない少女を助けるために、僕が止めようとすると、ロンが腕で僕を制した。
「ロン!」
「行かなくていい」
僕にはロンが言っている意味がわからなかった。
「アイツは人を
ロンの突き放した言い方に、セーラは怒った。
「ふざけてる場合じゃない!!」
セーラは少女に駆け寄ろうとするが、ロンに止められた。
「怖い思いをした方がいい。ここで助けたら、繰り返し人を騙すぞ。被害者が増える」
「だからと言って、女の子を見捨てるの!」
「見捨てていない、その方がアイツの人生のためになる」
「奴隷を助けたときは見直したけど、あんた最低ね!!」
ロンとセーラが激しく言い争う。その間にも女の子は男達に攫われていき、その姿は小さくなった。
「そろそろだな。ババア行くぞ」
「はっ? 何を言ってるの?」
「アイツ、充分に怖い思いをしたから、もう騙すようなことはしない。タンちゃんは手を出すな!」
ロンは彼女にお
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「嫌だ、この野郎、離せ!」
あぁ、このままボクは連れ攫われて、どこかで酷い目に
「ウンディーネ!!」
女の人の声に驚いてボクが顔を上げると、エルフの女性が物凄い顔でこちらを見ていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「痛っ! なにすんだこのアマ」
「その子を離しなさい」
「誰が――ぐふっ!」
いつの間にかロンが男の
「ババアはアイツを、オレは残りをやる!」
「いちいちウルサイ!」
セーラは少女を捕まえている男にウンディーネの高圧洗浄機みたいなのをぶっ放し追い払う。
ロンは残りの男達に圧倒的な力を見せつけ、男達が逃げていくのを見ていた。
少女は
「主よ。魂を貰いにいってもよかったじゃろ」
「タンちゃん。ここは教国だ。タンちゃんの正体がバレるとヤバいんだよ」
「ほう、なるほど。ここは魔族を馬鹿にする国じゃったな」
「流石だ、タンちゃん。賢いぞ」
「ふぉふぉふぉ。わらわが知らないことは無いのじゃ!」
ロンとタンヤオの漫才は放っておき、僕は少女に声をかけた。
「大変だったね」
安心した様子の少女の涙は止まらない。シャルは優しく抱きしめ、少女を
「もう大丈夫」
辺りは
「いったい何があったんだ?」
「この子が攫われていたので助けたんです」
「わかった。そこの男とエルフ。俺らに同行してもらうぞ」
やれやれとロンは首をすくめ両腕をあげる。セーラは不機嫌だった。
「おう、お前ら勘違いしているぞ。水ぶっかけたの、エルフじゃなくてこいつだ」
ロンをタンヤオを指でさし、警邏に言う。タンヤオは完全に
「ジン、ちょっと行ってくる。宿を取っておいといてくれ」
きっとロンはセーラを行かせないことが最善だと判断したのだろう。セーラが怒っていたらロンも止められないし、
「君、宿を探すの協力してくれる? 僕達この町詳しくないからさ、頼むよ」
――――――――――――――――
〈おまけ〉
「これ甘くて
「これ取り調べの――まあいいか」
「主、これ全部食べたいのじゃが」
「いいんじゃない。あっ、すみません、お菓子足りないんで倍貰ってもいいですか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます