第21話
ビスビオ王国王城を僕達が出ようとすると、背後からミネルバの声が聞こえてきた。
「シャル姉さん!!」
ミネルバは僕達を呼び止め、走ってくる。シャルの前に来ると、膝に手を付けて息を
「ミネルバ、どうしたの?」
「はぁ、はぁ、最後にお礼が言いたくて」
「大丈夫ですよ。気にしなくてもいいのに」
「いえ、一時は
「ふふふ、ミネルバ良かったね」
「はい。それとシャル姉さんとお友達になりたいです」
「あっ! それ私も思っていた! シャロー王国の私の家の場所教えてあげるね」
「ありがとうございます。私はここにいると思うので、何かあれば連絡ください」
(よかった。これでビスビオ王国と友好国になれるかもしれないな)
シャルが連絡先をミネルバに教え、王城をあとにした。そして僕達は目的地の一つである古代建造物のある町へと旅を続ける。
「遠回りしちゃったね」
「ジン様。ミネルバとお友達になれたことの方が貴重ですよ」
「そうだね。シャルの言う通りだ。この人脈は大きいよ」
「ジン。そろそろ馬車の乗り換えだ。準備しろ」
「ありがとう、ロン。シャル、荷物持とうか?」
馬車を乗り継ぎ、町から町へと。ようやく目的の町に
馬車から降りて、郊外へ行く。1時間ほど歩くと、僕達の目の前にピラミッドが現れた。
(うわあ。資料集で見た、チチェンイッツァのククルカンのピラミッドみたいだ!)
「ジン。このピラミッドは凄いぞ。階段が1千飛んで82段ある」
(ダウト! どうみても1000段なんて無いだろ。ロン大丈夫か? やっぱり薬がヤバいヤツだったのか?)
「あっ、そうだ、ジン。ピラミッドの中に入ろうぜ。修行場がどんなのか見てみたいから」
「ここ入れるのかな?」
「こっそりいけば大丈夫だって」
(いいのか? 観光地だろ? ピラミッドの中で
「ふぉふぉふぉ。あそこが入り口のようじゃ。人払いするぞよ」
(なんかイヤな予感がする)
ピラミッドに向け、タンヤオが
「はぁ、助かったよセーラ。ピラミッドなんか壊した日には、国が傾くくらい
辺りは蒸気で包まれ、僕が
「じゃ、行くか」
(鉄の心臓だな)
僕達はピラミッドの内部へと入る。驚いたことに、暗いだろうなと思っていた通路は明るく、廊下の幅も広い。
「すごいわね。まるでダンジョンみたい」
「そうなのセーラ」
「そう。ダンジョンに入ったことは一度も無いけれどね」
(どうツッコんでいいのやら……)
ピラミッドの中を突き進むと、大きな空間があった。そこには男がいて、炎の前で何かしているようだった。
「ん! 何ヤツ! ほほう、女もいるのか」
男が振り返り僕達を睨み、話を続ける。
「飛んで火にいる夏の虫か。丁度良い」
「どういうことだ」
「ははは、ここは悪魔崇拝の聖地だ。五天王タンヤオ様のために
「ん? わらわがどうしたというのじゃ?」
「「「「――」」」」
僕達はみんな驚きタンヤオを見る。すると男はタンヤオを指さし、
「そこの
「ほほう。わらわが行けばいいのじゃな」
タンヤオは男に近づく。男は台座の上に仰向けになるようタンヤオに指示した。
「我が神タンヤオ様。この
(えーっと、タンヤオに捧げる生贄がタンヤオ)
「あのー」
「なんだ? 儀式の邪魔をするな」
「そいつタンヤオなんだけど」
「ハッハッハッ。奇遇だな。タンヤオ様に捧げる生贄の名前がタンヤオか、面白い」
(僕はこのシュールな感じが面白い)
「お主、わらわが五天王のタンヤオだぞ」
「なにを言っている」
「わらわは魔王の手下。ロンの眷属。五天王のタンヤオだと申しておる」
「はっ? 魔王の手下って本当なのか?」
(僕は知らないけど、ロンの眷属なのは知っている)
「そうじゃ。お主を生贄として魂を貰うぞよ」
「あ、あ、あ、それは止めてください! 自分は『タンヤオ大好きの会』会員番号23番です」
(タンヤオにファンクラブがあるのね)
「ほほう」
「タンヤオ様、喜んでください。会員数が100人を超えました!」
「ほう、何人じゃ?」
「はい。1224人です」
(それね。100人じゃなく、1000人を超えたって言うのよ? タンヤオと同じでバカなんだね)
「おう、そこのバカ。オレはタンヤオを眷属にしている
「な、な、なんでしょうか?」
「このピラミッドの中を案内してくれ」
◆
「この部屋は2000年前にこの国を治めていたという王の
(優秀なツアーコンダクターだな。この旅一番の)
◆
「今日はどうもご覧いただきありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」
「面白かったな、ジン」
「あぁ、そうだね」
(内部の構造も面白かったけれど、一番はタンヤオだね)
こうして、ピラミッドを
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