第15話

「セーラさん。ロンさん達遅いですね」

「大丈夫よ、シャルちゃん。馬鹿は丈夫だから心配しなくていいわ」


 僕達はホテルのロビーでロンとタンヤオが戻ってくるのを待っていた。だいぶ時間が経ち、もうそろそろ部屋に戻ろうとしたときにタンヤオが姿を現した。


「ふぉふぉふぉ、王よ。あと30分29秒13で主が戻ってくるぞよ」

(あのね、タンヤオ。そういうときは30分でいいんだよ)


「そうじゃ。スライムも連れてくるのじゃ」

「えっ? スライムって?」

「そうじゃ。ち〇ち〇体操で汚れたところも綺麗にする。面白いヤツじゃ」

(なに? ち〇ち〇体操って?)


 タンヤオと訳の分からない会話をし、30分後にはロンと少年が姿を現した。


「おう、ジン」

「ロン、おつかれ。どうだった?」

「このオレの手にかかれば朝飯前よ」

「この子は?」

「娼館で働いていたスライムだ」


 ロンがスライムと紹介していた少年の表情は戸惑っているように見えた。なので、彼と打ち解けたいと思い、皆に自己紹介をしてもらうようお願いする。


「じゃあ、僕からいくね。僕はジン、一応王様をやっている」

「私はシャルロットです。ジン様の妃です」

「セーラよ。精霊術が得意なの」


「ふぉふぉふぉ。わらわはタンヤオ。この前上位魔族の試験に落ちて、補習が2時間前に終わったぞよ」

(補習不参加ってこと? 上位魔族じゃなくなるの?)


「オレはジンだ。爺さんの孫だ」

(お前は僕じゃない! それに爺さんの孫は兄弟か従兄弟いとこだろ!)



「えーっと、あのー、そのー」

「どうしたの?」

「ボクはスライムです」

「そうなんだね。名前なんて言うの?」

「名前は無いです」


 僕はビックリしてしまった。魔族のタンヤオでさえ名前があるのに、この子には名前が無い。


「ジン、名前決めの会議だな」

「そうだね」


 ロンとタンヤオが何を言いだすか不安だったが皆の意見を聞くことにした。


「オレはナカソネがいいと思うぞ」

(レーガン元アメリカ大統領と中曽根元総理か……確かにレーガン大統領の愛称はロンだったしな)


「わらわはち〇ち〇体操いいぞよ」

(よっぽど、ち〇ち〇体操が気に入ったんだね)


「サラマンダーはスライムの天敵よねぇ。曼荼羅まんだらってどう?」

(この世界には神の他にも仏がいるんだね)


「ジン様、スライムですよね。ライムなんてどうでしょうか?」

(決まり)


「僕もライムがいいな」


 少年の名前が決まったところで、普段使っていない特技が何かを言い合うことになった。


「オレは竹やりが使えるぜ。竹やりには自分のだってわかるように名前を彫ってある」

(たぶん名前彫らなくていいと思うよ。ロンしか竹やり使わないだろうから)


「ふぉふぉふぉ。わらわは万能じゃ。普段使っていない特技など無いのじゃ」

(ありとあらゆるボケができるもんね。万能だし)


「そうねぇ。あたいは暴力を振るわないことかしら」

(うーん。ロンにやっていることは、どうなんだろ?)


「ジン様のために、ゆで卵を作ることです」

(シャル、料理は僕がやるよ)


「僕は年号を順番に言うことかな」

(年号って、みんなわかるかな?)


「ふぉふぉふぉ。わらわは知っているぞ。エンコウなのじゃ」

(僕は絶対に援助交際はしません)


「えーっと、ボクは、ヒールとキュアが使えます」

(すごっ、回復魔法使えるなんて! ライムをよく連れてこれたな)


 ライムと打ち解けることができたので、僕は部屋に戻ることにした。


「ジン、オレは何〇何号室だ」

「あっ! 言っていなかった!」


 僕はロンとタンヤオに泊まる部屋が無いことを伝える。


「ふぉふぉふぉ。そうか、そういうことか。主よ、娼館に泊まるぞよ」

「おっ! いいねぇ! そうしようぜ。ライム行くぞ!!」

(えーっと、娼館から帰ってきて娼館に戻るのか……まぁ、その方が助かるけど)


「ダメよ。こんなカワイイ子、あたいの部屋に泊めるわ」

(セーラってショタコンなの?)


「ジン様♡そろそろ部屋にいきましょ♡」

(上目遣いでそれは破壊力強すぎでしょ)


「そうだ。みんな明日8時にここに集合ね。それから港町ジュドーに行くよ」


 僕はロン達が午後8時に来るんじゃないかと心配したが、そのときは置き去りにしようと考えた。

(船の出港時間も考えるとね。多少の犠牲は仕方がない)

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