第27話 side ロン

 オレはエル坊を叩き起こし、タンヤオ、ライムと共に孤児院へ急いだ。


「主、どこへ向かっているのじゃ」

「孤児院だ。エル坊遅れんなよ」

「わらわはお腹がすいたのじゃ。甘いものをよこすのじゃ」

「タンちゃん。向こうに行けば甘いのがあると思うぞ」

「主、早くそれを言うんじゃ! もっと早く走るのじゃ!!」


 10分ほどで孤児院と思われる建物を見つけ、オレは扉を叩いた。


ドンドンドン

「すまぬ、開けてくれ」

ドンドンドン

「ここがヤバイんだ。開けてくれ」


 オレがそう呼びかけると扉が開き、シスターが現れた。


「シスターか? オレはロンって言うんだ」

「ええ、そうですけど。こんな朝早くどうしたのでしょうか?」

「あぁ、神様がここはヤバイって言っているんだ。何か心当たりはあるか?」


 シスターは俯いて考え、それからオレらに中に入るよう言った。そしてオレらはテーブルへと案内される。シスターはオレとタンヤオ、エル坊のために椅子を引いてくれた。


「どうぞ、おかけください」

「おう。で、何があったんだ?」

「脅されているんです。ここを明け渡さないと殺すって」

「ふぅー。そうか。ちなみに誰がそんなことを」

「エール商会の方です。ここを潰して関所を作り、関税と通行料で儲けようとしているのです」

「そうか。確かに敷地も広いしな。住んでいるヤツがいると邪魔なのか」

「ええ……そうです」

「わかった。オレらがそいつらを何とかするから、子供達を避難させてくれないか?」

「あなた達は、ここを奪いに来たわけではないですよね?」

「ん? そうだが」

「わかりました。子供達を――」


ドンドンドン! ドンドンドン!


「シスター、急いで子供達を起こすんだ! 裏から逃げろ!! エル坊、シスターを手伝え!」


 扉が乱暴に叩く音がしたのでオレはシスターに指示をし、シスターとエル坊は子供達を起こしにいった。


「タンちゃん。ここに来るヤツを水鉄砲ウォーターバレットで追っ払ってくれないか?」

「わかったぞよ」


 オレはタンヤオに指示をだす。すると扉が蹴り破られ数人の男たちが入ってこようとした。


水鉄砲ウォーターバレット!!」

「タンちゃん。気をつけてくれ。かわして中に入ってくるヤツがいるかもしれん」


 タンヤオの先制攻撃が上手くいったと思ったが、やはり躱してくるヤツがいた。


「なんなんだよ、てめえら。こんなヤツがいるなんて聞いてないぞ」


 男はナイフを見せてオレらを威嚇する。


『やめて! やめてください!!』


「タンちゃん。ここは任せた」

「ん? 好き勝手にやってもいいのか?」

「それでいい」

「わかった。お主ら魂を貰い受けるぞよ」


 タンヤオは正面から来たぞくの相手をする。オレはシスターの叫び声が聞こえた裏手に回ると、そこには子供達とシスター。それをかばうようにエル坊が刺されていた。


「っ! ライ! 急いでそいつの傷を治せ!!」


 オレは賊に近づき、持っているナイフを蹴り上げ、頭をぶん殴る。他に2人いたが雑魚ザコだった。


「エル坊!!」


 シスターは子供達を守っている。ライムがエル坊の傷を治していくが出血が酷く、ヤバイ。


「主。終わったぞよ」


 タンヤオが来たがそれどころではない。オレは着ている服を脱ぎ、袖を破り、エル坊の止血をしていく。


(神よ。この男を守りたまえ)


「エル坊! おい、聞こえるか! エル坊!」


 エル坊は少しだけうめいたので、安静にすれば何とかなると思い、シスターに聞いた。


「シスター!」

「は、はい!」

「こいつを寝かせるベッドはあるか?」

「あります。私のを使っていただければ」

「すまない。使わせてくれ」

「いえ。助けていただき、ありがとうございます」


 オレはエル坊を担ぎ、シスターに案内された部屋の中に入る。エル坊をベッドに寝かせて、シスターに事情を聴く。


「エル坊は子供達の盾になったのか?」

「はい……」

「そうか。子供達に怪我は?」

「彼が傷ついただけで、子供達は大丈夫です」

「なぁ。オレ、そのエール商会だっけ? 潰したいんだけど、どこにあるのかわかるか?」

「はい、シャラム帝国のビラリにあります」

「わかった。シスター、エル坊の看病を頼めるか?」

「はい! やります! やらせてください! 彼が子供達を助けてくれたので」


 オレはシスターからエール商会の詳しい場所を聞いた後、エル坊をシスターに任せて、ジンのいるホテルへと戻った。

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