第19話

 ロンが表彰されるらしく、数日港町バラムに留まることになった。(タンヤオを除く)女性陣は洋服などのショッピングに。ライムも女体化して、一緒に楽しんでいるみたいだ。


「おい、ジン。一緒に来るだろ?」

「えっ」

「せっかくだから来いよ。褒章ほうしょう式の参考になるぜ」

「わかった、他に誰が行くの?」

「タンちゃんはやらかすから、それ以外。あっ、ミネルバも連れていこう」


 こうして、僕達はバラムにある石畳いしだたみが敷かれている広場に行き、表彰式に参加することになった。


「ジン。あれが町長っぽいな」


 ロンの指し示す方を見ると、横柄おうへいな感じがする髪の毛の薄い男がいた。


「おい! ロンとやらはいるか!」

「いるぜ。おっさん」

「おっ、いるのか。じゃあ帰ってよいぞ」

(町長、何のためにロンは滞在したんですか? 僕達も巻き込まれたし)


 多くのギャラリーの中、ロンは町長と噴水ふんすい前で対峙する。町長から表彰の言葉がかけられた。


「ひょう、しょう、じょう。ロン殿。以下同文」

(何と同文なんですか?)


 ロンが表彰状を貰い、記念に写真撮影が行われる。


「じゃあ。皆さん笑って――1938割る969は」

「「「に!」」」

(この世界の人達すごいな。インド式計算方法もびっくりだよ)


「はぁー、終わった。平民どもの相手は疲れるのう」

「おう、町長ありがとな。ジン国王、行こうぜ」

「国王! これはこれは国王様、この町はいかがだったでしょうか?」

(手もみしている町長さん。こびの売り方、いかにもって感じですよ)


 ちなみにロンへの記念品は貴重な羊皮紙ようひしだった。ロンが戻ってきて、僕はみんなに言う。


「じゃあみんな、王都に行こうか」


 バラムから王都へは馬車で1週間の旅だ。予定には無く遠回りになってしまうけれど、これも旅の醍醐味だいごみの1つであろう。馬車の中ではシャルとミネルバがたわむれていた。


「シャル姉!!」

「ミネルバ! そこはんじゃダメ!」

「だって~。セーラさん、揉みごたえないんですけど」

(ミネルバ。周りを見よう。注目されているぞ)


 セーラはミネルバに若干キレ気味だったが、ロンに八つ当たりしてスッキリしたみたいだ。

 馬車の旅は順調そのもので、うわさに聞いていた野盗などは出ず、僕達は無事に王都に着いた。


「ミネルバ。王都に着いたけど、目的は婚約者に会うことでいいんだよね?」

「はい。これから、王城に行くつもりです」

(王城? ひょっとして婚約者は王族関係?)


「ミネルバの婚約者って王子なの?」

「はい。第1王子です」

(なんてことだ!! 未来の王妃じゃん! シャロー王国の友好国となれるよう、シャルに協力を仰ごう)


「迎えに来る護衛っているのか?」

「いえ、いません」

「じゃあ、僕達も王城に向かうよ」

「本当ですか!! 助かります」


 こうして僕達はビスビオ王国の王城に行くことになった。馬車に乗り王城に行くと、王城では知らないヤツらは入れられんと門前払いされる。なのでロンに頼み、ホテルでミネルバのことを羊皮紙に書いてもらった。それから羊皮紙を王城に届けてもらい、その返答を待つ。

 その日の午後、僕は滞在日が増えると思い、ロビーで宿泊の延長手続きをしていると、ホテルの前に豪華な馬車が止まった。何だろうと思い、様子を伺うと、馬車の中からイケメンな青年と騎士が2人降りてきた。


「私は第1王子だ。ミネルバはいるか? 支配人、いたら呼んでくれ」


 僕はホテルの支配人と共に王子のもとへ行く。


「ビスビオ王国の王子様ですね。僕はシャロー王国の国王をしているジン・シャローと言います。今、ミネルバ公爵令嬢をお呼びいたしますので少々お待ちください」


 僕は支配人に頼みミネルバを呼んでもらう。ミネルバがロビーに現れると王子は大きな声をあげた。


「ミネルバ!!」


 ミネルバは第1王子の胸に飛び込み、王子はミネルバを抱きしめる。


「ミネルバ、大丈夫だったか? いなくなったと聞いてずっと不安だったんだ」

「大丈夫です。攫われて奴隷になりそうでしたけど、ジン国王の使い、ロン様に助けてもらったんです」

「奴隷?」

「はい。奴隷船が出港してしまったら、今の私はいないでしょう」

「そうか。ミネルバすまなかった。ジン国王、ロンというヤツにお礼が言いたいのだがいるか?」

(ロンと王子を会わせるとおかしなことになりそうだな)


「王子。ロンは今、ギルドで情報を集めてこいと使いにだしています」

「そうか。あとでそのものと一緒に王城へ来てくれないか?」

「もちろん大丈夫ですよ」

「ありがとう」


「ミネルバはあの馬車で王城に行くよね?」

「そうしてもいいですか?」

「もちろん。何のために僕達がここまで送ったのか、ね」

「ジン国王、ありがとうございます」


 ミネルバは王子と共に馬車に乗り、王城へと行く。僕は馬車が見えなくなるまで、彼女達を見送った。

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