過去を探して オーラン帝国
第24話
「アル、少し寄り道するぞ」
僕にとって5国目になるオーラン帝国での旅は、ロンの案内に従う形になった。ロンいわく、夢の中に出てきた神様のお告げに従っているらしい。真偽の方はわからないけれど、この旅にロンは不可欠な人物であることは変わりない。
「どこに向かっているの?」
「平たく言うとダンジョンだな」
「ダンジョン?」
「そうだ。ダンジョンの中で困っているヤツを助け出すんだ」
「そういうこと」
どうやら、オーラン帝国での1つ目の目的地はダンジョンみたいだ。
国境から2週間ほど移動し、とある町に着いた。
「ちょっとギルドに行ってくる」
「ロン。ギルドって何?」
「簡単に言うと、ダンジョンの情報をもらえる場所だ」
「わかった」
「アルはテスやパルと一緒にいてくれ、ライと行ってくる。ライ! 行くぞ!」
ロンは道端にいる通行人にギルドの場所を聞いていた。
(あっ、タンヤオはどうすればいいんだろう)
僕はロンに近寄り、話しかける。
「ロン、ごめん」
「ん? どうしたんだ」
「タンヤオはギルドに行かせるのかどうか知りたくて」
「タンちゃんはアルの方で面倒をみてくれ」
「わかった。そうだ、ここで別れてもはぐれる可能性が高いから、ギルドまで行って外で待機していい?」
「そうか、それもそうだな。じゃあ一緒に行こう」
「ふぉふぉふぉ。兄者、わらわのことを呼んだか?」
「そう。しばらく僕の手の届く範囲にいてくれ」
「わかったぞよ」
僕らはギルドに行く。ギルドについてロンから言われた。
「じゃ、ここで待っていてくれ。くれぐれもタンちゃんを中に入れないように」
「わかった」
僕らは外で待っている。ギルドの外では、人族、エルフ、獣人などいろいろな種族の人達がいた。
「おう、見ない顔だな。ねえちゃん達、俺らといいことしないか?」
いつの間にか人族2人と獣人2人に囲まれていた。
「男とガキはどうするよ」
「ま、いつも通りだろ」
「そうだな」
「あなた達はなんですか?」
「俺ら? 俺らはこの町のAランクパーティー「魔獣の館」だぜ。知らないのか?」
「ここに来たばかりだから、知らない」
「まあ、いいや。なあ、姉ちゃん達。あっちの建物が俺らの棲みかなんだ。一緒に来て遊ばないか?」
町の人達の声が聞こえる。「また、あいつら何もわからない女を酷い目に遭わせるつもりか」「注意しろよ」「馬鹿。返り討ちにされるわ」どうやら、こいつらはろくでもないヤツらなんだなと思った。
「タンヤオ。この4人、
「ふぉふぉふぉ。兄者、任せるのじゃ」
タンヤオは獣人に近づく、
「おう、やる気満々じゃないか」
獣人は手首を掴む。するとその獣人はどんどんミイラになっていった。
「な、なんだ、お前」
「ん? わらわか? わらわはタンヤオ。お前たちの魂を貰うぞよ」
「ひー」
タンヤオは逃げるヤツらを1人ずつミイラにしていく。通行人はタンヤオに怯えていた。
「兄者。終わったぞよ」
「アル、ただいまって、タンちゃん何してんの?」
「ふぉふぉふぉ。兄者がアイツらをミイラにしてよいと言ったぞよ」
「ホントか、アル」
「うん。あいつらこの町の人達を困らせていたみたいだから」
「ふぅ。わかった。そうだこれ」
「これは?」
「ダンジョンの
「わかった」
僕らはこの町から1時間ほど離れたダンジョンへ向かう。
「ロンさ。ずっと気になっていたんだけれど、本当に神様の導き?」
「ああ、そうだぞ」
ロンの表情と声はいつも通りだが、僕の勘は違うと言っていた。
ダンジョンに着くと、ロンから指示がでる。
「アルは殿でテスとパルの護衛。前衛は俺とタンちゃんでやる。ライは後ろから氷を打ってくれ」
「ロン、わかった」
「わかりました、ロンさん」
「ふぉふぉふぉ。わらわは前衛。前衛とは何ぞよ?」
「タンちゃん。先頭って意味だ。敵を倒すとドロップアイテム、そうだなお菓子がが出るかもしれん」
「主! それを早く言うのじゃ!」
ダンジョンの中に入る。はっきり言おう。タンヤオ無双だ。
「主。お菓子が出ないのじゃ」
「タンちゃん。レアアイテムだから頑張れ」
ロンはドロップアイテムを回収し、変形させたライムに持たせている。どのくらい潜っているのだろう。ダンジョンの中では時間経過がわからないことを知った。
「ロンさぁ。どこまで潜るの?」
「お姫さんを助けるまでだ」
ロンに問いかけていると前方で戦っている人達がいた。どのくらいだろう、かなりの人数が倒れている。
「アル、ライ、倒れているヤツらに片っ端らからヒールをかけてくれ」
「うん」
「わかりました」
「タンちゃん。あそこにいる敵がお菓子を持っているぞ」
「ふぉふぉふぉ。主よ、任せるのじゃ」
僕は倒れている人達に急いで駆け寄る。
「大丈夫ですか!」
僕とライムで倒れている人達を救助。タンヤオはドロップアイテムを探していた。
「主。お菓子が無いぞよ」
「ん? そうなのか? じゃあ、あとで甘いお菓子を買ってやる」
「ふぉふぉふぉ。主、ありがとなのじゃ!」
ロンは1人の女性に近づいて、声をかけた。
「おう、姫さん。喋ることできるか?」
「ううぅっ」
「ダメだな。アル、こいつらの意識がハッキリするまで、しばらくここで待っていいか?」
「うん。大丈夫」
「わるいな、すまない」
どのくらい経っただろう、姫さんと呼ばれていた女性が目を覚ました。
「ここは――」
「地獄じゃないぞ」
「誰ですか?」
「ロンっていうんだ。姫さん、ここにいるのは姫さんの家臣か?」
「あっ。みんな」
女性は仲間を1人ずつ見て回った。
「よかった」
力が抜けたのかその場に座り、お尻を着いた。
「アル、ライ、ありがとな」
「ロン、この人は?」
「わからん、どこかの姫さんだろう。それよりも他の連中だ」
ロンは1人1人の状態を確認している。
「死人はいないな。おう、姫さん。名前を教えてくれないか?」
女性はロンを見て、
「ロゼといいます」
「そうか。ロゼって言うんだ」
「はい」
「わかった。落ち着いたらダンジョンの入り口まで送ろう」
ロンとロゼの会話を聞いていた。何でも彼女はエリクサーを探しにここに来たそうだ。父親が重傷を負っており、エリクサーがあるかどうかわからなかったが、このダンジョンに潜ることを決意したと。
「姫さん。そこにいるアルロスってヤツとこのライムは回復魔法が使えるんだ。よかったら親父さんを診てもいいか?」
「是非、お願いします!」
彼女とその家臣達が動けるようになったので、僕らはダンジョンの入り口へと向かう。
「アル、入口に着いたら、姫さんを抱えて先に飛んでくれないか? 親父さんの容体がわからないから」
「わかった」
入り口に着き、ロゼに聞く。
「これから僕は空を飛んで、君のお父さんの所に行こうと思っているんだ。良かったら案内してくれないか?」
ロゼは了承してくれた。僕は彼女を抱え空を飛ぶ。
「あの、あなたがアルロスさんですか?」
「そう、ロゼでいいんだよね?」
「はい」
「どっちの方角?」
「あっちです」
彼女の指示に従い、飛んでいくと立派な屋敷が見えてきた。
「あそこです」
「わかった」
屋敷に着き、彼女を降ろす。
「ロゼ!」
「母上!」
ロゼと母親は抱きしめあっていた。
「無事で良かった。勝手にいなくなって、ダンジョンにでも行ったのかと」
「ごめんなさい。どうしても、父上のために」
「えっ、まさか本当にダンジョンに」
「ごめんなさい。あの人が助けてくれたの」
「どなたか存じませんが、娘を助けてくれてありがとうございました」
「いえ。それよりも父親の容態を診にきたのですが」
「えっ、診ていただけるんですか?」
「はい。僕の仲間がそう言っていたので」
「ありがとうございます」
僕はロゼ達の後についていく。2階に上がり、廊下の突き当りまできた。
「主人はこの部屋にいます」
僕は部屋の中に入る。すると部屋の中央に全身が焼けただれた人がいた。
「この人ですか?」
「はい」
僕はヒールを何回もかける。これで全快かなと考えていたら、父親は目を覚ました。
「あなた!」
「父上!」
「私はいったい」
「実験に失敗して、炎に飲み込まれたの」
「そうだ。そうだった」
「この人が助けてくれたの」
「ありがとう。君の名前は」
「アルロスって言います」
「わかった、何と礼を言ったらいいか」
「いえ、礼には及びません」
僕は部屋から出て1階に降り、ロンと合流するため屋敷の外に出た。
「アルロスさん。またいらしてください」
「わかった。近くに寄ったらそうするよ」
僕はロゼに見送られ、空を飛んだ。
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