第19話
僕が唖然としている中、ロンはパチンコ屋から出てきたフェニックスに声をかける。
「おう、フェニちゃん。何をしているんだ? 北へ行けって言っただろ」
「そうだな」
(フェニックスは人間に従う気は無いのね。やっぱり)
「まったく。フェニちゃんはオレの言っていることが理解できないんかな」
「ふぉふぉふぉ。わらわは主の言っていることを理解して行動できるのじゃ。主の言う通り行動できないオマエはバカなのじゃ!」
(タンヤオ、凄いなお前。フェニックスをバカ呼ばわりするなんて)
フェニックスはバカにされてムッとしている。
「貴様は誰だ?」
「ん? わらわか? わらわは上級魔族五天王の1人タンヤオだ」
「上級魔族? 五天王?」
「そうじゃ。自慢ではないが五天王は試験に受かったエリートしかなれないんじゃ!」
(エリートかぁ。五天王はボケのエリートなんだな)
「ほう。その試験とやらは難しいのか?」
「ふぉふぉふぉ。難しいのじゃ。10点を超えたら御の字じゃ。9点以下なら仕方あるまい」
(10点の壁。っていうかさ、10点の時のパターン言っていないんだけど。10点超えたらって11点以上のことだよね?)
フェニックスはタンヤオに向かって臨戦態勢。タンヤオは「ふぉふぉふぉ」と胸を張っている。
「おう。2人ともオレの為にケンカしないでくれ」
(ああ、これがあの「私の為に争わないで」っていうヤツか……)
「ん? 主、わらわはケンカなどしてないぞよ」
「タンちゃんはしていないつもりでも、フェニちゃんは戦う気でいるんだよ」
「ほう。主、わらわはこんなバカなやつには負けることは無いぞよ」
(バカにバカ呼ばわりされたフェニックスは怒っても当然だよね)
「タンちゃん。ケートス戦のことを覚えているか?」
「ふぉふぉふぉ。主、バカにするでない。覚えていないぞよ」
「あのな。フェニちゃんはケートスよりも強い。最強の部類に入るヤツなんだ」
(その最強を従えているお前が最強だ。ホント自覚無いな、ロンは)
通行人が多いここでケンカされては困る。パルは2人に怯えていた。
「アル兄。怖いです」
そう言ってパルは僕に引っ付く。
「にゃにをしているんだにゃ!」
テスがパルを引っぺがす。なんでテスがパルに突っかかっているのか僕にはわからなかった。
「フェニちゃん。お前最強なんだから、こんなザコを相手にするな」
「そうだな。我としたことがムキになってしまったな」
これでフェニックスはもうタンヤオに攻撃しないだろう。
「主、わらわはザコでは無いぞよ」
「まあ、固いことはいいじゃねぇか。後でシリアルやるから、牛乳をかけると美味いヤツだ」
「シリアル! ホテルで食べた以来じゃ! 主、絶対じゃぞ!」
「まったくぅ。じゃあ、フェニちゃんそろそろ北に行ってな。
「ふん! わかった。行ってくる」
「おう、頼むわ」
フェニックスは元の姿に戻り、大空へ飛び立つ。僕らの周りにいた人達ははビックリしていた。
「じゃ、アル行くか」
「うん。ん?」
(なんだあれ?)
ロンに促され出発しようとしたが、僕の視界には「金ミスリル銀専門店」という看板が目に入った。
「ロン。あれって?」
「ああ、金などの専門店だな。お金持ちが利用するんだ」
「へぇー」
店の近くに行き、中の様子を伺うと、老人が店主に何やら聞いていた。
「この金をアテネ像にし神具とすれば、金の相続税は取られないのか?」
「取られないかもしれない、としか言えないな。でもまあアテネ像にすることをオススメするぜ」
「加工賃はいくらだ?」
「ざっと、その金塊の半分の値段だな」
(金塊の50%の料金でしょ? どう考えても税金を払った方がいいな)
「うーん」
「おう、そこのジイさん」
腕を組んで悩んでいる老人にロンは声をかけた。
「加工しないで、税金を払った方が良いぜ」
「はっ! あなたは――お仲間はいらっしゃいますか?」
「いるぜ、そこに。ほら」
老人は僕らを見回し、驚いた表情でいた。
「あなた方にお話があります。是非とも家まで来ていただけますでしょうか」
(だいぶ丁寧だな)
「アルどうする?」
「行ってみてもいいと思う」
「おお、なんと有難い。では」
僕らは老人の後に続いて歩く。途中でロンは老人に話しかける。
「ジイさん。何でオレらに声をかけたんだ?」
「我が家に伝わる言い伝えがあるのです。アテネ様が金を掴むとき、その近くに男3人女3人の旅人が来る。その者達に伝えなさい。と」
(ん?)
僕はロンとライム、パルを見て、男女の人数がおかしいなと思った。
「お爺さん。男女3人ずつですよね。僕ら違いますよ」
「いえ。あなた達で間違いないです」
「兄貴」
「ん?」
「兄貴はパルのこと男だと思ってるのにゃ? 違うにゃ」
「えっ。どうみても――」
「匂いで女だとわかるにゃ!」
(うーんと、パルが女。そうか、だからテスはパルを引っぺがしたのか)
そんなこともありつつ、無事に家に到着。
「こちらです。どうぞ中にお入りください」
「大きな家だね」
「だろうな。あの店にいるんだから」
「ふーん」
僕らは家の中に入り、客間に通される。しばらく待つと、老人が何か持ってきた。
「こちらが我が家に200年も間受け継がれてきた品でございます」
老人はカプセルをロンに渡す。
「開けていいか?」
「はい」
ロンはカプセルを開けると、カプセルの中には何枚かの
「アル。これ魔王様からだ」
「魔王様?」
「ああ。魔王様はオレらに伝えたいことがあるらしい」
僕が覗きこむと、そこには――、
『タンヤオへ。ちゃんと勉強して、五天王に入るように。いい勉強だよ。 魔王より』
(すごいなぁ。魔族1人1人を見ているんだな)
「ん?」
「ロンどうしたの?」
「わりぃ。アルちょっとあっちに行ってくれないか?」
「いいけど」
僕は向かい側のソファーに座りなおす。ロンは眉をひそめながら羊皮紙に書かれたものを読んで、懐にしまった。
「ジイさん。これ貰うな」
「はい。あなた方に伝えることが我が家の使命ですので、是非」
「アル、そろそろお暇しよう」
僕は何だろうなと思いつつも、老人に見送られロン達と家の外に出た。
「次は総本山な。修業していたから、わからないことがあったらオレに聞け」
ロンが次の目的地を言い、僕らはこれからそこへ行く。そう、次は魔族にとって忌々しい総本山だ。
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