第13話 リプレイ
ギルドの中は混乱していた。
「誰か説明してくれ!」
叫ぶ者がいた。
俺だって説明して欲しい。
「あ、あんたがミナトか」
誰かが俺に気がついた。
「あ、ああ。そうだけど……」
皆の視線が俺に集まる。
「どうやってあのレアモンを倒したんだ?いや、それより、そんなレベルでどうやってあそこまでたどり着いたんだ?」
一人の
周りの
「え、えーと……」
俺はこう言う時どう言えば良いのか分からなくて、いや、そもそも自分だってよくわかっていない事を説明のしようがない。
だから戸惑っていた。
この状況を作りだしたシアは、いつの間にか隅の方に移動してのんびりとお茶を飲みながら俺の方を眺めている。
しかも、ちゃっかりうーたんを膝に乗せている。
い、いつの間に……
「俺も、実はよく分かっていないんだ。たまたま知らないスキルを手に入れて、色々あって運良く退治できただけで……」
「運……だと?」
「ああ……」
「運なんかでどうにかなる相手じゃ無いだろう。今まで何組のレイド攻略パーティがアレに挑んで倒されたと……」
俺に質問してきた男はそこでふと何かに気がついた。
「いや、知らないスキル……って言ったか……今……」
「あ、ああ」
「まさか……シークレット・スキル……」
誰かがぼそっと呟いた言葉に、一度は静かになったギルドが再び騒ついた。
「シークレット・スキルだと?ホントにあるのか!」
「いや、確かに、そうでも無いとこの状況は説明がつかない!」
「誰か解説してくれ!」
そこからは、質問の嵐だった。
ギルド中の
俺は仕方なく、シークレット・スキルの事やシアとどう戦ってあのモンスターを倒したかを、何度も何度も説明する羽目になった。
お陰で結局、それから数時間はギルドの中で皆に説明することになってしまった。
誰かが俺の動画を録画して、動画にしといたからみんなそろそろミナトを解放してやりなと言った。
それでようやく、彼ら
ようやく解放された俺は、ぐったりしながら、隅の席で相変わらず涼しげにお茶してるシアとうーたんの所にふらふら歩いて行った。
「お疲れ様」
俺はシアと向かい合う席にどかっと腰掛けた。
シアは相変わらずの判りにくい表情で俺を眺める。
ギルド受付嬢がサービスですと言って果実のジュースを持って来てくれた。
一息に飲み干す。
ゲームの中だから実際に飲んだわけでは無いが、気分的には少し喉が潤った様な気がする。
俺はウインドウを開いてシステムコマンドを呼び出した。
さっきまでいた
「ミナト、すっかり有名人」
シアの顔が少し綻んだ様に見えた……きがした。
「参ったよ……ここまでとは……」
結局、俺の手に入れたシークレット・スキル、【ノートリアス・シーカー】については、ここにいた
誰もが、分からないと首を傾げるだけだった。
「て言うか、何で俺だけこんなに質問攻めに合うんだ。そもそも、倒せたのはシアのおかげなんだから、シアの方が凄いじゃ無いか」
「わたしの事はもう、ここのみんな知ってるから」
「そうなのか」
「うん。わたしがソロでノートリアス・モンスター追っていたのも、今まで何度もアレに倒されてたのもここの
「だとしても……」
「わたしの様な魔法系のアタッカーがソロで倒せるノートリアス・モンスターなんてまずいないの。だけどあのナインテイル・オルトロスだけはノートリアスのモンスターの中でも珍しく魔法耐性が弱いから、倒せるとしたらあいつしかいないの」
「そうだったのか」
「もちろん、あくまでも、現在その存在が判明しているレアモンスターの中では、だけど。この
シアはそう言って少し微笑んだ。
目の前のこの
何でソロなのかは知らないけど。
「だから、ここの
そうだった。
ああ、何でこんな事になってしまったんだ。
俺はただ、気楽にロールプレングゲームを遊ぼうと思っただけなのに。
「そうだぜ兄ちゃん!」
髭面でエール酒のジョッキを手にした
「兄ちゃんのレベルやシークレット・スキルも確かに凄い。そこにいるシアの魔法も、誰もが認める。だが、やはりそれだけでは、あのナインテイル・オルトロスは倒せる相手じゃないんだ」
髭面の
目の前に小さなスクリーンが浮かび上がる。
スクリーンに映像が映し出される。
映像では、俺とシアがナインテイル・オルトロスと戦っていた。
俺のプレイ動画のリプレイだった。
「兄ちゃんのこの動き、やっぱり凄えよ。昨日、今日に始めたばかりの
映像の中で俺はナインテイル・オルトロスの攻撃を避けていた。
あの時は、一撃でも喰らえば戦闘不能になってしまうから必死で避けていただけだった。
だが、今になって冷静に映像を見返したわかった。
俺はこの時、この一瞬、この戦闘を心から楽しんでいた。
兄さんとシューターをやっていた時を思い出していた。
兄さんと一緒に、どうやって敵の攻撃を避けて反撃するかを、練習を繰り返して、いろんな戦略を試していた。
あの、汗臭いシューターに勤しんでいた日々を思い出していた。
そうか、あの時の経験が俺の身体に染み付いていて、ナインテイル・オルトロス戦でモンスターの攻撃を避けるのに役に立っていたんだ。
「良いモン見せてもらったよ。これは俺の奢りだ」
髭面の
「そう、ミナト。あなたは自分で思っている以上に、すっとゲームが上手い。それを皆が認めたの。だから……そろそろ決めないとね」
シアは俺の目をしっかりの見据えていた。
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