第43話 シア
「それにしても、意外だった。
「俺だって、
俺たちは、電脳部の部室で話し込んでいた。
不思議と、俺とシアは
さっきまで他人同士みたいだったのが、嘘みたいだ。
薄雲高校一年A組、
それがシアの
リアルのシアは艶のある長い黒髪を後ろで結んでいて、小柄な顔に丸い眼鏡がチャーミングだった。
俺たちが談笑していると、電脳部の部室ドアが開いて、一人の女生徒が入ってきた。
「あら、今日は知らない殿方がいますのね。入部希望ですの?」
部室に入ってきたのは、一人の女子生徒だった。
背は高いのにやや童顔の整った顔立ち、長く伸ばしたロングの巻き髪。
告白された男子の数は数知れず、女子からは憧れと崇敬の念で崇められている校内のアイドル。
三年の
「
「そう。この人がマイカの中の人」
「そ、そうだったのかー」
「あら、もしかしてそちらの方は……」
「舞夏先輩、この人がミナト」
「そうでしたのね……思ったよりも男前ですわね。シアさん、なかなかやりますわね」
「な、何言って……違うから!ミナトと私は違うからっ!」
「ま、今日のところはこのくらいにしておきますわ……おほほ」
そしてなぜか楽しそうな舞夏先輩。
「では、湊さんとのお近づきの記念に、
「いや、やらないから」
「うん。やらない」
俺と
舞夏先輩は、息ぴったりですわね……と
そんな感じで俺たちは
学校が終わり、俺と
今日は
二人でパストラル・クエストをやるのだ。
俺のレベルがまだ全然低いから、
ゲームを始めて最初に会ったレンは、俺よりかなりレベルが上がっているらしい。
レンにも追いついて、一緒に冒険したいし、ネオンライツの皆や、シアと同じくらい強くなって、皆でレイドダンジョンに挑んだりもしたい。
だからさっさとレベル上げをしたいんだ。
「早く皆と一緒のレベルに上がりたいな」
「ミナトなら、すぐ上がると思う」
こうして並んで歩くと、
改めて、シアと出会えた事は幸福だった。
パストラル・クエストを始めて良かったと思う。
これからも一緒に遊べるだろうか。
できる事ならずっと一緒に
なんて事を考えながら歩いていたら、ふと
さっきから、前を向いて歩きながらも、俺の方をたまに見ている。
と言うか、俺の鞄を見ている気がする。
「
「あ……ごめん。なんでもない」
だが、少し歩いた所で立ち止まった。
「ごめん、やっぱり気になる」
「湊、そのキーホルダーって……」
ああ、その事だったのか。
「
俺の言葉に、
「それ、コズミック・アスターのマスコット」
「ああ。兄さんに貰ったんだ。なんかかわいいから付けてたんだけど、
コズミック・アスターと言うのは、俺や
俺が付けているキーホルダーは、そのドラマに出て来るマスコット的なキャラクターの形をした物だ。
俺はドラマ自体は全然見た事ない。
だが、深夜にやってた再放送を兄さんが見ていた事を、なんとなく覚えている。
そして、兄さんは一時期このドラマのキャラが出て来る
俺は兄さんがダブったのを貰ったりしていた。
このキーホルダーも、ダブったからと言って兄さんに貰った物だった。
他の同級生に話しても全然誰も知らないと言っていたのに、
「
「ううん。わたしもあまり詳しくは知らない」
「そっか」
「でも、お姉ちゃんが
「
「うん」
「そうなんだ。俺も兄さんが好きでこのドラマ見てたのは覚えてるけど、俺自身は全然見てないんだ」
「わたしも。ドラマはあまり覚えてない。だから聞いてもわからないかなって思って、聞きずらかった。でも聞いて良かった」
「
「うん。わたし、もともとゲームはお姉ちゃんに教えて貰った。パストラル・クエストも」
「そうだったのか」
「ミナト、わたしが〝漆黒の聖女〟って呼ばれてるの知ってる?」
「ああ」
「あれ、本当はわたしの事じゃない……」
「えっ……?」
「〝漆黒の聖女〟は、本当はお姉ちゃんの二つ名だった。わたしも一緒にいたから、わたしのこともだんだん、漆黒の聖女の片割れって呼ばれる様になった」
「そう……だったのか」
「今度、湊にもお姉ちゃん紹介するね」
「あ、ああ。因みにお姉さんは……
「2つ」
「そうか、じゃあ3年か」
「うん。進路決めなきゃって焦ってる」
「大変だな」
俺と
気がついたら俺たちは、駅前のVRセンターに辿り着いていた。
「じゃあ、行こうか」
「うん」
俺と
今の俺はもう一人じゃない。
俺の横には、
一人より、二人の方が心強いんだな。
今まで知らなかった。
これからは、
俺たちの戦いはこれから始まるんだ。
そう、俺と
俺たちは二人で、再びパストラル・クエストの世界に向かって行った。
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クラスで冴えない彼女がVRMMOでは漆黒の聖女と呼ばれる回復魔導師さんだった件。 海猫ほたる @ykohyama
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