第28話 トーコⅡ
「レアスキル……【
トーコのレアスキル発動と共に、辺りの景色が一変した。
ここは……
俺の家だった。
布団の中で目が覚めた。
俺はベッドに寝ていた。
ベッドから起き上がり、考える。
夢?
俺はさっきまで夢を見ていたのか……?
さっきまでゲームの中で、教会にいた筈なのに……
いや、違う!
間違いなく、俺はさっきまでゲームの中にいた!
夢なのは、こっちの方だ
この世界の方こそ、夢の中だ。
トーコのレアスキルによって俺は、夢を見させられている。
「そう言う事……なんだろう?トーコ!」
俺は、誰もいない自分の部屋の中で叫んだ。
返事は無い……かと思いきや、なんと返事があった。
「さすがはミナトじゃな……よく見破った」
誰といない部屋の中で、トーコの声がどこからか聞こえてくる。
俺の頭の中に直接声が聞こえる感じだ。
「そう、お主はいま、夢を見ているのじゃ。レアスキル【
「全員……?」
「そうじゃ……勘が良いの。夢の中にいるのは、お主だけじゃ無い。我もなのじゃ」
お互いに夢の中にいるのか……
て言うか、そもそも現実ではなくVRゲームの中にいるのに、そこから更に夢の中って、仕組みは一体どうなってるんだ……
「この
なんだ……見つけるだけで良いのか……?
逆に、我の方はお主に見つからないように隠れておる。
この夢の中でお主に見つからずに一定時間経過すれば、我の方は先に目覚める事ができるからの。
「そうなれば、夢の中にいる俺は、先に目が覚めたトーコに一方的にある攻撃される……って訳か」
そう言う事じゃ。
ミナトよ。
お主は夢の中にいる我を早く探すのじゃ。
「だけど……トーコはこの夢の中のどこにいるんだ?当てもなく探すのか?」
「ふふ……そうじゃな。夢の中とは言え、目が覚めなければお主にはここが現実と変わらぬじゃろう。探すのは難かろう」
確かに、さっきから俺は自分の部屋で机やまるで壁に触ってみるが、まるで現実かのような感触だった。
言われなければ、本当はここが現実なのではないかと錯覚してしまうくらいだ。
「ヒントをやろう。我はお主と同じ階層にはおらんのじゃ」
階層……?
つまりこの夢の中を探してもトーコはいない?
「そうじゃ。我のいる階層を探すのじゃ。同じ階層に降りてくる事ができれば、探すのは難しくは無いじゃろう」
階層ってなんだ……
他の階層には、どうやっていけば良いんだ?
「お主が他の階層に行く方法は考えてみるが良い……現実でパストラル・クエストに入るにはどうしたかの?」
……そうか!
VRセンターだ!
俺は部屋を出て、駆け出した。
どこにいても、トーコの声は頭の中に直接聞こえて来た。
「気がついたらようじゃの。さて、我を見つけられるかの?」
俺は急いで、駅前のVRセンターに向かった。
現実と全く同じ景色だったけど、現実とは明らかに違う事があった。
この世界には、人がいない。
建物や街並みはまるで現実そのものなのに、さっきから全く、人を見かけない。
道路に車も見当たらなかった。
そして、人の暮らす生活音がしない。
道路を風が吹いて枯れ葉が舞う時の音とか、俺の靴音は聞こえるけど、他の音が全く聞こえてこない。
やはり、この世界は夢の中なんだ。
だけと、本当の夢の中とは少し違う。
俺が夢を見るときは、色が無い。
俺の夢はいつも、まるで古い映画のような、セピア色の世界だった。
だけど、今いるこの世界は、ちゃんと色があった。
それこそ、現実と変わらないくらいの解像度で、はっきりと。
ほんと、どうなってるんだろう。
俺は駅前のVRセンターに辿りついた。
VRセンターの中もやはり人はいなかった。
店長も他の店員はもちろん、他の客もいない。
カウンターを抜けて、いつも行くVRルームの個室に向かった。
個室の扉を開けると、部屋の中には見慣れたVR機器がある。
「ミナトよ。たどり着いたようじゃの。そこから更に奥の階層に向かうと良い」
ここから……?
このVR装置を使って、夢の更に奥の階層に向かえるのか。
俺は少し考えた。
今の俺は、現実の俺がVR装置を使って完全な仮想空間の中にフルダイブしている。
その状態で、トーコのレアスキルにより、夢の中にいるらしい。
その夢のから更にVR装置を使って仮想空間に潜るって、どんな状態なんだ?
トーコは〝階層〟と言っていた。
という事は、そこにトーコがいなければ、俺は、更に夢の奥に向かう必要があるって事だ。
そんなに何層も奥の深層世界に入り込んで、その後俺は無事に元のVR世界に
わからない。
何しろ、初めての経験だ。
それに、いくらレアスキルと言っても、こんなスキルは初めてだ。
VRシステムの基幹プログラムを制御するようなスキルなんじゃないだろうか。
こんなレアスキルを使うなんて、トーコは一体、何者なんだ。
少し考えてみたが、わからない。
わかるわけがない。
何しろ、俺はそもそも、このゲームを始めたばかりなんだ。
考えても分からないなら、やってみるしかない……か。
よし、決めた。
俺はVR装置に入って、パネルを操作した。
VR装置が起動。
ヴォンっと低い音がして、コンピュータが立ち上がる。
……
…………
…………⁉︎
目の前の空間にスクリーンが現れて、メニュー画面が表示された。
これは……
このゲームは……
パストラル・クエストじゃない。
これは……〝アストラル・アスター〟だ。
目の前に現れたゲームのメニュー画面、それは、俺が、兄さんと一緒に遊んでいた、あのシューターのゲームだった。
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