第9話 クレリック
「キミ、見ない顔……」
黒いワンピースに黒いボレロを着た、腰まである
顔は可愛らしいんだけど、とにかく無表情なので可愛げがない感じがする。
「パーティの人はいないの?見た感じ、ソロみたいだけど」
女の子は不思議そうに俺を見つめていた。
「ああ。ソロだ。レベル上げをしてたら迷い込んでしまったみたいだ」
「えと……ここは【ノートリアス・モンスターの巣】。初心者
「実際そうだし……そうだ、レベルとステータス見てくれよ」
俺はステータス画面を開いて彼女に見せた。
彼女の顔色が明らかに変わって言った。
「ホントだ……信じられない……」
「俺だってよくわからないんだ。カオス・プルモーを狩っていただけなんだ。つい夢中になってたら道に迷ってしまって、気がついたらココに辿りついた」
「納得できない……確かにこの森は【はじまりのもり】が突入ポイントだったけど……そこからこのレイドバトルエリアに入るには、レベル50無いと来る事は出来ない……」
「そうなのか……?」
「でも、確かにキミはここにいる……なんでかは分からないけど……とにかく話はこのモンスターを倒してから」
「そ、そうだな」
そういえばそうだった。
一応、彼女が張ってくれたであろうバリアの膜に包まれているおかげで手を出してきていないものの、目の前には凶悪そうなモンスターがずっと俺と彼女を睨んでいたんだった。
……いや、ちょっと待て!
今この女の子は、さらっとなんかとんでもない事言ってなかったか。
確か『レベル50以下は本来このエリアには来る事すらできない』と言わなかったか?
じゃあ、完全に俺のレベルでは目の前のモンスターとは相手にならないじゃないか。
ちなみに今の俺のレベルは、ようやく3になったばかりだ。
そして、このゲームにはレベルキャップがあって、最大レベルがレベルキャップまで到達するとそれ以上は上がらないようになっている。
そのレベルが50。
つまり、現在のゲームで最大レベルに達していないと、このモンスターとは戦う事すらできないはず……なんだ。
「無理だ。今の俺にはこいつと戦えるレベルなんてない。すまない」
女の子は無表情のまま、モンスターの方を向き直った。
そして、俺に後ろを見せたまま言う。
「わかってる。【ノートリアス・モンスター】はボスの中でも、特に強い。上級
「だ……だったら……」
「だけど、あなたはなぜか、このエリアに来てしまった……来れてしまった。そして、ノートリアス・モンスターとの戦いを始めてしまった」
「勝手に向こうからかかってきたんだけどな」
「それでも、戦闘になっているってことは、ある。あなたに、権利が」
「……権利?」
「ノートリアス・モンスターは、普通のモンスターとは違う。この世界にそれぞれ1体ずつしか存在しない。だから、特別に強いし、特別に報酬も大きい。上級
「そ……そんな凄いやつなのか……」
「だから、倒した時の報酬のシステムもノートリアス・モンスターは他のモンスターとは違うシステムになっている。モンスターからもらえるドロップアイテムは、最初にモンスターと接触して戦闘状態になったパーティに優先的に与えられる」
「て事は……」
「他のパーティは、例え一緒に戦っていても、ドロップアイテムの権利はない。それでも通常の報酬も他のモンスターとは桁違いだし、ドロップアイテムの優先権があるパーティが全滅したら、他のパーティに優先権が移るから、他のパーティはそれを待ちながら共闘するのが普通」
「じゃあ……今の俺って……」
「うん。キミには今、ドロップアイテムの優先権がある。キミが戦闘不能になれば、次はわたし……」
「わ、わかった。その、なんとかアイテムの優先権は君にあげるよ。だから俺は逃げる」
「ノートリアス・モンスターと戦闘になって逃げるなんて、まず無理」
「じゃあ……どうすれば」
「パーティ申請……して」
「え?」
「パーティ申請。メニューにあるから」
……そうか。今彼女とパーティを組めば、俺と彼女は同じパーティになる。
そうすれば、彼女にもドロップアイテムの優先権は発生するんだ。
……まあ、目の前のもモンスターを倒せればって話だけど。
だけど、彼女は目の前のモンスターに恐れる気配はまるでない。
倒せるって自信があるみたいだ。
倒せる自信があるから、ここに来てるんだろう。
「それに、わたし一人ではこのナインテイル・オルトロスは倒せない。キミの協力がないと」
「いや、俺では多分役に立たないと思うんだけど……」
「大丈夫。さっきキミの魔法を見た」
「見た……って、俺は
だし、さっき使った時には、このモンスターに全然効いていなかった。
「
勝てる?
ど、どうやって……
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