第11話 ドロップアイテム
ノートリアス・モンスター、ナインテイル・オルトロスが消滅した場所に、いかにも宝箱って感じの箱が出現した。
あれが、ドロップアイテムか。
さすがにこれは、俺が手に入れるべきではないだろう。
「シアさん、これはシアさんが貰ってください」
「もちろんそうするけど……」
シアさんは少し考えこんで、やがて何かを決意したように頷いた。
「ねえ、ミナト」
「何ですか?シアさん」
「シアさんって呼ばないで。同じパーティ同士、仲間だから。シアって呼んで」
「え、でも」
「その代わり、わたしもミナトって呼ぶ」
「そ、そうすか……じゃあ、し……シア」
「うん、それで良い。じゃあミナト、このお宝は遠慮なく貰うね」
シアはそう言って宝箱を開けた。
中には光り輝く
シアはじっくりとお宝を観察した後、本の方を手に取った。
「この魔術書はわたしが貰う。レアなドロップアイテムだから、貴重な高位魔法が得られるものだから。でも……」
シアはもう一つ、
「こっちのはミナトにあげる。このオーブはノートリアス・モンスターじゃないと出ない程のレアアイテムではないけど、売れば高額のドーカと変えてもらえるはず。初級
「あ、ありがとう」
ちなみにドーカってのはこのゲームでの通過だ。
「それで、ミナト」
シアは真顔で俺に近づいてきた。
近い。
凄い近い。
シアの顔が間近に迫る。
さらにシアは両手でしっかりと俺の手を握ってきた。
なんだこの展開……俺って初対面の女の子にモテるタイプだったっけ……
「あ、あの?」
焦る俺と対照的に、シアは変わらず無表情で俺に迫っている。
「ミナト、聞かせて欲しい。なぜあなたがこんな、ノートリアス・モンスターの巣に迷い込んだのかを」
シアはじっとりと俺を見つめたまま、動かない。
ああ、なるほど。
シアが気になっているのはおそらく、俺自身のこと……というより、俺がノートリアス・モンスターと戦っていた原因の方なんだ。
早とちりする所だった。
まあ、そうだよな、うん。
俺、別に初対面の女の子にモテるタイプじゃないし。
とは言え、シアは納得するまで離してくれそうにない。
まあいいか。
確かに、俺のような初心者
今日は時間はたっぷりあるし、なにより初めて上級プレイヤーの人に会えて、パーティを組んでバトルできて、おまけに経験値も
それに、シアは悪い人ではなさそうだし、なにより可愛い。
まあ、愛想がないけど。
「わかった。ここにきた経緯を話す。なのでシアの知っている事も教えてもらえればありがたいんだが」
「うん。じゃあ、ちょっとここで話すのもなんだし、移動しよっか」
「移動?」
「そう。わたしに捕まって」
シアはそういって手を出してきた。
俺はシアの手を握った。ゲームの中だとわかっていても、あったかくてドキドキする。
シアは転送の魔法を使った。
目の前の景色が突然変わって、俺達は街の中に戻ってきていた。
便利な魔法だな。
俺も早く覚えたい。
俺達は町外れの人気の少ないカフェに行った。
俺たちは隅の方の人気のない席に座った。
俺たちは、そこで話をする事にした。
「……と言うわけで、俺自身もまだよく分からないんだ。分かっているのは【ノートリアス・シーカー】と言う名のよく分からないスキルを手に入れた事と、森で迷ってたら光る場所があって、そこに行ったらノートリアス・モンスターの巣だったって事くらいだ」
俺は、シアにこれまでの経緯を素直に話した。
「ミナトが手に入れたスキルが原因でノートリアス・モンスターに出会う事になったって考えるのが1番しっくりくるかも」
シアはそう言ったあと、フォークでケーキを一口サイズに切り分けると、口に運んだ。
そしてシアはオレンジジュースを飲む。
俺はカフェ・オ・レを飲む。
VRだけどちゃんと味覚が再現されていて、普通にうまい。
しかもあくまで脳内で味覚が再現されているだけなので、どれだけ食べたり飲んだりしても太らないのはVRゲームの良い所だ。
食べ物はゲームによって違うけど、このゲームは割と
兄さんとシューターやってた時は味気ないレーションとかぱさぱさした固形食を慌てて食べるくらいで、味わって食べてなかった。
こうしてゲームの中のカフェで落ち着いて食事をするのもわるくないとおもった。
シアは下を向いて少し何かを考えるかのように黙っていたが、何かを思いついたみたいで、ぱっと俺の方を見て言った。
「ミナト、おそらくミナトの手に入れたそれはシークレット・スキルの一つだと思う」
シークレット・スキル……
そんなの聞いた事無いんだが。
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