第4話 カオスゼリー
「お前、隠しキャラだったんだな……どうりでなかなか捕まえられない訳だ」
カーバンクル・アルファは一度捕まえてしまうと、すっかりおとなしくなって、俺に懐いて顔を俺の脚に擦り寄せてきている。
「みゅ……」
な、なかなか可愛らしい声で鳴くなこのカーバンクル。
「みゅみゅみゅ」
カーバンクルは俺に懐いたみたいで、さっきから甘える様を出している。
「お前、俺についてきたいのか」
「みゅー!」
「わかった。好きにすれば良い」
「みゅみゅみゅみゅう」
カーバンクルは嬉しそうに俺の周りをぐるぐる回っている。
まあ良いか。連れて行こう。
たた、全身から放たれていた光は消えてしまい、普通の白い兎の様な見た目になってしまった。
ステータスを調べると【ペット・カーバンクル】と出てくる。
そういえば、俺が手に入れたスキル【ノートリアス・シーカー】について調べてみようと思ってステータス画面を開いてみた。
だが、ステータスのとこを見ても【ノートリアス・シーカー】の文字が見当たらない。
おかしいな、さっきは確かにレアスキルを手に入れたと表示されたのに。
まあ、いいか。
俺はあの後、速攻でガンダルダを倒してチュートリアルを終わらせた。
チュートリアルを終えたら、闘技場の外でレンが待っていてくれた。
「遅かったねミナト。随分と時間がかかったみたいだけど、チュートリアルはそんなに難しかった?」
レンは心配そうに聞いてきた。
「いや、チュートリアルそのものは大した事は無かったんだけど、こいつを捕まえてたら時間が掛かってしまって」
「ああ、カーバンクルだね……でもチュートリアルにカーバンクルなんていたっけ……」
「さあ?初めてやるからわからないな。あと、変なスキルを手に入れたみたいなんだが、ステータスに出て来ないんだ」
「そんな事があるのかな……因みにどんなスキル?」
「ノートリアス・シーカーだってさ」
「……聞いたことが無いな……ちょっと待って、ネットで調べてみる」
レンの前に半透明のスクリーンが現れた。
レンはジェスチャーと口述コマンドを駆使してスクリーンを操作している。
「うーん、ネットを調べても、チュートリアルに出てくるカーバンクルとか、ノートリアス・シーカーなんてスキルの事は書かれていないなぁ……」
「そうなのか……」
「もしかしたらまだ発見されていない裏技なのかもね。珍しいスキルだから、誰も知らないんだよ。きっとそのうち効果を発揮するからそれまでは気にしなくても良いんじゃないかな」
「そうだな」
「じゃ、約束通り、レベル上げに行こう」
「ああ、そうしよう」
俺とレンは連れ立って訓練場を後にした。訓練場は街の外れにあった。
街と外を隔てる門があり、門の両側には門番が見張りをしている。
俺たちは既に〝冒険者〟として登録されているらしく、門番に止められる事なく門を通ることができた。
いよいよフィールドに出る。
初めてちゃんとしたモンスターとの対戦か……楽しみだな。
「ミナト、最初は弱いモンスターを倒してレベルを上げることにしよう」
「ああ」
「この近くに草原があって、そこにはカオスゼリーがたくさん出るらしいんだ。そこに行こう」
カオスゼリーとは、全身がぷにぷにした大きなグミの様なモンスターだ。
動きが遅く、攻撃力も大して高く無いので初心者の練習相手にはちょうど良い。
俺たちはカオスゼリー狩りに行く事になった。
草原に向かう途中、俺たちと同じ様にチュートリアルを終えたばかりの
みな、俺たちと同じ様に草原に向かうか、逆に狩りを終えて草原から帰ってくる途中のどちらかだった。
「なあ、人が多いけど大丈夫かな」
「大丈夫さ。カオスゼリーは倒した側からまた出現するんだ。いくら倒しても大丈夫だよ」
「そうなのか」
「まあ、その代わり経験値も少ないんだけどね」
「なるほど」
草原に着くと、すでに何人かの
皆、一生懸命にカオスゼリーと戦っていた。
誰もが初心者だからカオスゼリー相手に苦戦している様だったが、カオスゼリーの攻撃もほとんど無害に近いから、カオスゼリーに倒されそうな人はいない。
と言うか、見ているとただ戯れているだけに見える。
なるほど、初心者向けのモンスターってわけだ。
よし、俺もやってみよう。
俺はカオスゼリーと戯れている様に見える初心者
ちょうど目の前に良い感じの青いぷにぷにが現れた。
ブルーカオスゼリーだ。
「よし、俺の相手はお前に決めた!」
因みにレンの方も手頃なカオスゼリーを相手に槍を振っている。
そしてカーバンクルは俺の側に着いてきている。
カーバンクルは逃げ足が早いからきっと、カオスゼリーの攻撃も上手く避けれるだろう。
とりあえず俺は目の前の敵に集中する事にしよう。
ブルーカオスゼリーに向き合う。
俺は早速、チュートリアルで覚えた(大半の時間ははカーバンクル捕獲に費やしていたけどちゃんと本来のチュートリアルもやっていたんだ)戦い方を試してみる事にした。
まず、腕を伸ばして指先に精神を集中する。
「武器召喚!」
俺の言葉に呼応する様に、俺の目の前の空間が歪み、杖が現れた。
異空間の
俺は目の前に現れた杖を掴み、大きく振り上げてマナを練る。
マナの練り方は感覚なので上手く説明出来ないけど、まあこれはゲームなので何となくでも良いかもしれない。
レイドバトルになると、おそらく瞬間的にマナの練度を高めるやり方をちゃんと覚える必要がありそうだけど、今目の前にいるカオスゼリー相手にそこまで考える必要はなさそうだ。
「
杖を振り下ろしながら叫ぶ。
杖の先から火炎放射器の様に炎が溢れる。
炎はあっという間に目の前のカオスゼリーを包み込んで、カオスゼリーの体はみるみる小さくなっていった。
ある程度小さくなると、カオスゼリーは細かい光の粒の様な物に変わって、蒸発する様に消えた。
「倒した……かな」
ステータスを開いて、メニューから討伐リストを確認する。
ブルーカオスゼリー×1
確かに、倒したようだ。
ただ、貰えた経験値は1だった。
確かに初心者向けのモンスターだ……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます