第2話 ハカセ

「なんじゃなんじゃ、騒々しい。おや、タクトじゃないか。久しぶりじゃの」

 ハカセはにかっと笑った。


「ところで今、スライムしか仲間にならないって言っておったか?」

「うん、そうなんだよハカセ! おかしいよこんなの! 【鑑定眼】で僕の能力ステータスを確認してみてくれない!?」


 タクトにハカセ、と呼ばれたこの老人はジョセフという名がある。

 彼は元、モンスターテイマーであり、生物学者でもあった。モンスターの魅力に憑りつかれ、日々その生態を研究している。


「最後にステータスを確認したのは二年前じゃったか。ふむ、おまえさんがあれからどれくらい成長したのか、見てやるとするかの」

 ジョセフはカッと目を見開いた。数秒後、さらにその目は大きく開かれる。


「こ、これは……なんと!」

「な、何かわかったの!? ハカセ!」

「……2年前と全くステータスがおんなじじゃ……」

「スキルは!?」

「うむ? ちゃんと【スカウト】や【使役】、【調教】などのスキルは備わっておるぞ。こちらは相変わらず高いレベルじゃな。さすがはチャンピオンの息子」

「じゃあ、なんで……」


 モンスターテイマーはレベルアップによるステータスの成長は見込めない。だから能力値が上がっていなくても気にならない。それよりも問題は、モンスターテイマーとしてのスキルが備わっているにもかかわらず、スライムしか【使役】できないことだ。

 ハカセはそんなことがあるのだろうか、と考える。


 そもそもスキルという【神の恩恵】に関しては謎が多い。こちらに関しては完全に専門外である。ならば、それに詳しいものに話を聞くしかないだろう。


「タクトよ、ここより南の【メモリアシティ】に、かつて世界を災厄から救った【七賢者】のひとりがおる。そやつを訪ねろ。そやつはわしの友人でな……。わしの紹介状があれば、会ってくれるじゃろう」

 ジョセフがあの【七賢者】のひとりと友達だなんて。この研究所に閉じ篭ってばかりいるから、友達なんていないのだと勝手に思っていたタクトは驚いた。


 そんなわけで、タクトは相棒のスライムと共にメモリアシティに向かうことになったのだが……彼の前に立ちはだかる者がいた。


 それは──。

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