第15話 プリン

『ふぅ。ありがとうございます、助かりました。アナタ、わたくしの声が聞こえるのですね?』

 しおしおだったスライムは、てかてかとした輝きを取り戻していた。

「う、うん。どういうわけか、聞こえるみたい。おまえ、どうしてこんなところにいるの? ここに住んでいるの?」

『ええと。それが……まっっったく思い出せないのです。気がついたら、ここに迷い込み、閉じ込められてしまったのです。そろそろアナタたちが来た通路も閉ざされると思います』

「え?」

 ゴゴゴゴゴ。

 通路は閉ざされ、彼らは広間に閉じ込められてしまった!


「な、なんということだ!」

 ルーカスは絶望した。一方のタクトはすぐに気づいた。


「……広間の四隅に、さっき見たようなくぼみがあります。サスケ、リロイ、ルーカスさんのジョニー、そしてこのピンクのスライムを乗せれば、たぶん……道が開けるんじゃないかと思います」

「む。冴えているな、少年。恐らくそのような仕掛けだろう。しかし……スライムを最低四匹連れてこないと詰みというわけか。えげつないな」

 守護者であるドラゴンに加えて、このトラップ。この遺跡を造ったものは、侵入者を生かして帰すつもりはないらしい。


『あの子たち、名前があるのですね』

 ピンクのスライムがまじまじとタクトを見た。

「ああ……僕たちモンスターテイマーは“ともだち”にしたモンスターに名前をつけるんだ」

『モンスターと……ともだち?』

『きゅい!』

『きゅいきゅい!』

 サスケとリロイがピンクのスライムに何か言っている。


『……アナタはこの子たちにとても好かれているようですね。わたくし、決めました! わたくしもアナタの“ともだち”になります!』

「ええっ!?」

ピンクのスライムが仲間になりたそうにこちらを見ている!


 タクトはとても困った。

 これ以上スライムを仲間にしても……。

『ダメでしょうか?』

 ピンクのスライムだけでなく、サスケやリロイまで訴えかけるような目でタクトを見ていた。

「……うぅ、わかった。わかったよ。今日からおまえも、僕のともだちだ! 名前は、ええと、どうしようかな──プリン、おまえの名前は、プリンだ」

 

 プリンと名付けられたピンク色のスライムは飛び上がった。そしてキュピンと音を立てて光った。


「え、なに、今の!?」

『さて……なんでしょう? 何か、不思議な力が湧きあがってきたような。あ、でも気のせいでした。名前をつけてもらって、テンションがあがりすぎたのかもしれません。ひゃっほーっていう感じです』

 なんだか妙なスライムだなぁ、とタクトは思った。



 ──これが運命の出会いだということに、今のタクトには知る由もないのであった。

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