第14話 スライム(ピンク)が現れた!

『ぴゅい!』

「あ」

 サスケが行き止まりの前のくぼみにすぽっとハマった。

 すると──。


ゴゴゴゴと音を立て、通路が開かれた。

「か、隠し通路……。この遺跡の謎を解き明かすためには、やはりスライムがカギなのか……」

 この先に何が待ち受けているかわからない。慎重に進まなければ……。

「って、勝手にどんどん先に進まないでくれるかな、少年!?」

「あ、すみません。でも……何か、声が聞こえるんです。”助けて”って言ってるような……だから、はやく行かなきゃ」

「声?」

 ルーカスには何も聞こえなかった。

 スライムたちに先導され、タクトたちは進む。進む。進む。


 そして新たな広間にたどり着く。

 そこで彼らを待ち受けていたのは──。



『きゅい……』

 ス ラ イ ム が 現 れ た !


「ぴ、ピンク色の……スライム!?」

 これが俗にいう、【色違いモンスター】というやつか。タクトは少しだけ目を輝かせた。これがスライムでなければ感激モノだったのになぁ……とタクトは思った。

 モンスターの変異体とも言われ、激レアモンスター扱いされるものである。といっても、他の個体に比べて強いとか、成長しやすいとか、その能力に違いはほとんどない。稀に、特殊なスキルや魔法を習得するものもいるというが、その確率はかなり低い。

 ブリーダーやコレクターの中で高値で取り引きされるが、それでもやっぱりスライムに需要はなかった。

 スライムは個体数が多く、比較的【色違い】に遭遇しやすいとされていた。

 それにしても、どうしてこんなところにスライムが……。しかもなんだかしおしおになって弱々しい。


『み、水……』

「水!? 水が欲しいのか、おまえ。ってスライムが喋った!?」

 タクトは驚き、後ずさった。

「ど、どうした少年。スライムがしゃべるはずないだろう。そのスライムはきゅいきゅい鳴いているだけだぞ」

「そ、そうですよね……」

 人語を操るモンスター種もいるが、スライムにはそもそもの声帯がない。それにしゃべるスライムなんて前例はこれまでになかった。


『水を……ください。おねがいします』

「る、ルーカスさん! やっぱりこのスライム、しゃべってます!」

「……そんなバカな」

 この少年がくだらない冗談を言うだろうか。彼自身、信じられないといった表情だ。きっと、嘘ではないのだろう。根拠は何もないが、ルーカスは信じた。


「……かつての七賢者やモンスターテイマーたちの中にはモンスターの“声”を聞けたものもいるという。キミにはスライムの声が聞こえるのだろう」

「でも……サスケたちの声は聞こえません」

「ううむ……」

 ルーカスは腕を組んで頭を悩ませた。


 今、ここで考えてもわからないことだった。それこそ七賢者に会えばわかることかもしれない。現段階では、スライムしか仲間にできないことと何か関係がありそうだな、とタクトは思った。

 

 タクトはひとまず、この助けを求めているピンク色のスライムに、水筒の水を与えてみることにした。

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