第13話 会心の一撃!

 すでにサスケはドラゴンの懐へと潜り込んでいた。ドラゴンはサスケの姿を見失っていた。

 構わず、ドラゴンはブレスを放とうとする。この広間内、すべてを焼き払うつもりのようだ。


「させるか! ──【アップドラフト・アッパーカット】!!」


 サスケはタクトの指示なく、硬質化していた。そしてすべての力を込めた【ジャンプ】を放つ。タクトも全魔力を放ち、サスケを押し上げる。先ほどの大ジャンプよりも凄まじい勢いだ。まるで、弾丸。


 この技は、。ルーカスの記憶の中、とある人物とモンスターの姿とドラゴンに立ち向かう彼らの姿が重なった。

 それは、ルーカスにとって苦い思い出。敗北の、味。


 今、まさに、ブレスを吹き出そうとしたドラゴンの顎に、サスケが激突した。


 ──会 心 の 一 撃 !──


 ドラゴンの閉ざされた口から、そして鼻から炎が漏れる。ブレスは不発した。


 それでもドラゴンにはダメージはない。しかし、死角からの予期せぬ攻撃はドラゴンを少しだけ動揺させた。そしてその一撃は脳を揺さぶっていた。ドラゴンの巨体が、ぐらりと傾いた。


 。ルーカスはカッと目を見開いた。

「いけっ、ヘルメス! 【全力右ストレート】!」

『ゴウッ!』

 この瞬間を待っていた。ヘルメスの渾身の一撃が、ドラゴンの顔を打った。

 衝撃が、さらにドラゴンの脳を揺らした。


『グ……オ……オ』

 ドラゴンが、ずしんと大きな音を立てて倒れた。


 ヘルメスの拳は砕けていた。

 一方、脳を揺さぶられて倒れたドラゴンの顔には傷ひとつない。なんという頑丈さか。伝説の鉱石【アダマンタイト】並みの硬度があるとウワサされるだけのことはある。


「……逃げるぞ、少年!」

 ドラゴンはすぐに目を覚ますだろう。その前に、この遺跡から出なければ……。

 しかし。

「あ!? さ、サスケ……リロイ!? どこに行くんだ!」

「む!? オレのスライム……ジョニーまで……そっちは出口じゃないぞ!」

 スライムたちは広間の奥の通路へと走って行ってしまった。それをタクトも追いかける。

「少年まで……! ええぃ! 戻れ、ヘルメス!」

 ルーカスはクリスタルの中にヘルメスを戻し、彼らの後を追った。


 通路は徐々に狭くなっていく。

 背後でドラゴンの唸り声が聞こえた。もう、目覚めたのか。

 遺跡から出ようと、来た道を戻っていたら追いつかれていたかもしれない。

 通路はもう、ドラゴンが通れないほど狭くなっていた。遺跡を傷つけたくない……と思われるドラゴンは、この先まで追いかけてこないだろう。

 他に出口があればいいのだが……。


 そんなルーカスの想いとは裏腹に、続く道は閉ざされていた。行き止まりだ。

 ルーカスは脱力し、その場に座り込んでしまった──。

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