第16話 ガルーダ

 思った通り、スライムを四隅のくぼみに配置することにより新たな通路は開かれた。

 そこは遺跡の外へと通じる道だった。

 こうして彼らは無事に遺跡を脱出することができたのだった。


「そういえば少年、名前を聞いていなかったな」

「あ。僕の名前は、タクトです」

「! そうか……キミが」

「え?」

「いや、なんでもない。ところでタクトくん。もしかしてキミはメモリアシティに向かう途中じゃないかな?」

「なんでそれを!?」

 ルーカスはにやっと笑った。

「さて、なんでだろうな。道中、冒険を楽しむのもモンスターテイマー……だが、さすがに疲れているだろう。メモリアシティまで連れて行ってやろう。──来い、カルラ!」

 ルーカスがぴぃっと指笛を鳴らした。


 突如タクトたちの周囲を黒い影が覆った。

 嵐のような風が巻き起こったかと思うと、目の前に巨大な鳥型のモンスターが現れた。

 遺跡の中で出会ったドラゴン並みの巨体。

 それは【神の使い】とも呼ばれる超激レアモンスター、ガルーダ種だった。


「ん? あれ? ガルーダ……ルーカス……ま、まさかあなたは……【四天王】のルーカスさん!?」

「はは。四天王……その呼び名は好きじゃないんだけどな」

 四天王。それはマスターリーグランキング上位四人を示す称号。

「うわー! 映像でも見たことあるのに、なんで気づかなかったんだろう!」

「まぁ、ルーカスという名前はこの地域では珍しくないし、リーグで身に着けているコスチュームとは違うからね。というか、オレのことを知っていてくれたんだな」

 モンスターテイマーであれば、四天王の存在を知らないものはいない。それくらいに彼らは有名だった。

 雲の上の存在に、こんなところで出会えるなんて。


「さぁ、カルラの背に乗って。メモリアシティまでひとっ飛びだ!」

「い、いいんですか?」

 ルーカスはにこりと笑った。

 タクトとスライムたちは恐る恐るカルラの背中に乗った。

 大きく、温かく、そして生命力に満ち溢れている。なんて素晴らしいモンスターなんだろう。いつかこんなモンスターと、ともだちになりたい。タクトはそう願った。


「飛べ、カルラ!」

 ルーカスが声をかけると、カルラは大きく羽ばたいた。

 

 そして彼らは、風になった。

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