第27話 バトルの後で

「……ありがとうございました」

 タクトは涙をこらえ、カイトに向かって深々とお辞儀をした。

「また、いつでも挑戦しに来い。待ってるぞ!」


 お互い、それ以上は何も言わなかった。

 カイトは肩を落とし、歩いていくタクトの背をじっと見つめていた。


 バトルの結果は、タクトの完敗だった。

 タクトに勝ち目はなかった。勝てるはずがなかった。それでも彼は、本気で、そして”勝つ”つもりで挑んできたのだ。

 スライムなんかでジムリーダーに本気マジバトルチャレンジするなんてふざけているのか? と馬鹿にするテイマーもいるかもしれない。嘲笑するものもいるだろう。

 しかし、カイトは笑わなかった。ただ真摯に向き合い、そして全力でタクトを破った。


「……これまた珍しいな。ずいぶんとご機嫌じゃないか、ローザ?」

 【黒騎士】ローザは微かに頷いた。

『久々に強者と戦えました。次に戦う時が楽しみです』

 強者。ローザが指しているのは、タクトの心の強さのこと──いや、それだけではない。彼は、彼らはローザにほんのわずかではあるもののダメージを与えたのだ。


 タクトの二番手のリロイは相手にならなかった。しかし三番手、彼の最初の『ともだち』であるというサスケは驚異的な力を発揮した。タクトもまた、かつてないほど魔力を高め、発揮した。ローザの鋭い攻撃を幾度も回避し、反撃に転じた。

 

 そして──最後の、あの一撃。あれは……。


「──強くなれよ、タクト」

 願わくば。次に会う時は好敵手として。


 しかしその『次に会う時』は意外にも、いや意外すぎるほど早く訪れることを、まだタクトとカイトは知らなかった。

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