第24話 最後の一戦、開始
最弱のモンスターとして知られるスライムが、ここまでの戦闘能力を発揮するとは。カイトは驚いた。彼は自分の考えを見直さねばならないと思った。
そしてタクト。彼は驚異的な魔力を持っている。今ここでは正確な数値は出せないものの、彼の同年代のテイマーたちの平均値を大幅に上回ることは明白だった。
このジムは新米モンスターテイマーにバトルの基本を教え、彼らに自信を持たせることを目的としている。しかし、タクトには既にその必要がないように思えた。彼の目には既に『チャレンジャー』としての輝きがある。それでもカイトは、自らの役割に忠実であることを選んだ。どんなに才能のある若いテイマーであっても、正しい道を歩んでいくための指導は必要だった。
「次は俺の最後のモンスターだ。行け──ポチ!」
『ウオン!!』
宙を舞い、黒い毛並みを持つ狼のようなモンスターが地面に降り立った。唸り声を上げ、口からは炎がちらついている。
「……ヘルハウンド!」
タクトは事前にカイトの手持ちモンスターに関する情報を得ていた。ジムが公開していたのだ。新米テイマーが事前に戦略を練れるようにするためだ。このジムでは『事前準備』の重要性を説いていた。そのため、タクトもこの三日間、入念に準備をしてこのバトルに挑んでいた。
予めわかっていたとはいえ、実物を目の当たりにすると、その圧倒的な存在感にタクトは驚いた。
「この辺りでは珍しいモンスターだろう? しかも、滅多に人に懐かないときた。こいつは赤ん坊の時から俺が育ててきたからどうにか使役できているんだ。まだ幼体だが……手強いぞ?」
スライムにとって炎は致命的な弱点だった。身体能力の差も大きい。勝ち目は薄い。だが、やれる。やれるはずだ。
「よし……サスケ! きみで決める!」
『ぴぃぃっ!』
サスケが素早く、ぴょんぴょんと飛び出した。
戦意は溢れているが、気迫だけでは勝てない。さて、どうする、タクト?
カイトは期待を抑えられず、少しだけ笑みをこぼした。
「勝負だ! タクト!」
「勝負だ! カイト兄ちゃん!」
両者の視線が、鋭く交錯した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます