第25話 真打
勝負は瞬く間に決まった。
ヘルハウンドの速攻。その鋭い爪が、サスケを切り裂いた──かに見えた。
しかし、それはサスケの『分身』だった。それは【風分身】とも【影分身】とも言われる魔法。東国で編み出された【忍術】だった。
サスケ、という名も実は東国にいたとされる【忍者】からつけたものだった。タクトは東国の『小説』や『漫画』のファンだった。
とにかくその手応えのなさに戸惑うヘルハウンドの隙をタクトとサスケはついた。
サスケは【忍者】の飛び道具である【手裏剣】の形に変化し、硬質化。タクトの魔力を乗せた高速の一撃は、鋭い刃の切れ味となった。
ヘルハウンドの毛は硬く、刃を通しにくい。しかしサスケはヘルハウンドの身体を見事に切った。
痛み慣れしていないヘルハウンド、ポチはこれにより戦意喪失。タクトとサスケの勝利だ。
「……見事だ。そのサスケというスライムはずいぶんと鍛えられているな」
「うん。僕の……最初の、ともだちだから!」
タクトはサスケを見て、にっ、と笑った。
「俺がここで教えることは、もうなさそうだな。このジムで身に着けるべきことは、すでにもっている。今の気持ちを忘れずに、努力しつづけるんだぞ」
「……うん!」
少し暗いタクトの表情を見て察したカイトは苦笑した。
「消化不良……って感じだな」
「え!? あ、いや……」
「俺と全力勝負、したいんだろ?」
「……うん」
カイトは考えた。
タクトはまだすべてを出し切っていない。
しかし、自分の『全力』を見せたら挫けるかもしれない。まず、勝負にならないからだ。
本来、モンスター同士のレベル差がありすぎる場合はバトルさせることはできない。しかしジムでは【安全装置】──致命的な一撃を受けると判定された場合、対象モンスターを場外に転移させる措置も施されている。
──やるか。
カイトは決心した。彼もまた、タクトの全力を見てみたいからだ。勝負にならなくとも、その可能性を、将来性を見てみたい。その気持ちに抗うことはできなかった。
「よし。俺のベストメンバーを見せてやろう。──こい、【騎士団】」
カイトが指を鳴らすと、そこには──。
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