第22話 ジムバトル

 三日後。

 タクトはメモリア・ジムへとやってきた。


 サスケはともかく、リロイとプリンの能力を確認し、調整する必要があったため、タクトはジムに挑戦するまでの猶予時間をもらったのだ。それが、三日だった。


「きたな、タクト! 本来ならジムのテイマーの何人かとバトルしてもらうところなんだが……近くの【ダンジョン】で事故が起こったらしくてな。そっちの対処に行ってもらっているから、俺一人だ」

 とカイトは言った。

 ダンジョンで、事故。大丈夫なのだろうか。最近、ダンジョンで原因不明の“異変”が増えていると聞く。もし足を踏み入れることがあれば、十分に気をつけようとタクトは思った。


「公式戦に則って、3対3のモンスターバトルだ。相手の手持ちのモンスターをすべて戦闘不能にした方が勝者。いいな?」

 タクトはカイトの言葉に頷いた。


「それでは始めようか。モンスターバトル……レディー……ゴー!」


 カイトが最初に投入したモンスターは、緑色の肌の小鬼──ゴブリンだった。

 ゴブリンはスライムの次に弱いモンスターとされている。しかし、器用さは高く、ある程度の武器を扱うことができるため、高レベルになればスライムなど相手にならなくなる。本来なら群れで行動するゴブリンは、単独ではその能力を最大限に発揮することはできないので、ゴブリンを育てるテイマーは極めて少ない。

 カイトは手加減をするためにゴブリンを放ったわけではない。あくまで“最初の試練”としての役割を全うしようとしているだけなのだ。そうわかってはいるものの、少しだけモヤッとしてしまうタクトであった。


 そしてタクトが一番手に選んだのは、プリンだった。

「色違いスライムか。ピンクは……珍しいな。それじゃ……いけっ、ゴブ助! 【たたきつぶす】!」

 こん棒による一撃。スライムは打撃には強いものの、レベルの低いプリンにとっては驚異的な一撃になる。ここは回避するだろうなとカイトは思った。しかし。

「いまだ、プリン! 【フラッシュ】!」

 プリンの全身がまばゆく発光した。

 ゴブリンはぎゃっ、と小さな悲鳴を上げて目を手で覆った。


「プリン! 【はたけ】!」

『はいっ!』

 プリンの形状が、大きな手のひらのように変化する。プリンはそのまま飛び上がり、ゴブリンの右頬をはたいた。


『ゴブッ!?』

 平手打ちを受けたゴブリンは横に一回転し、地面へと倒れた。

 

 ──ゴブ助、戦闘不能。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る